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インテリア好きの逆転発想。家具に合わせたリノベーション

インテリア

使っていた家具が新居に合わなくて買い替えたという話はよく聞きますが、ご夫婦ともにアクタスの社員という生粋のインテリア好きが完成させたリノベーションは、家具に家を合わせるという逆転の発想によって生まれた住まい。家具を主役にするための空間作りの秘訣を教えていただきました。

横浜市の高台に位置するSさん邸は、築34年の低層マンション。こちらのリノベーションを手掛けたのが、インテリアショップとしておなじみの「ACTUS(アクタス)」。実はSさんご夫婦は共にアクタスの社員。なかでもご主人は、このリノベーション事業部の責任者でもあります。「仕事柄もあって、僕たち夫婦の趣味は物件探しと引っ越し。僕個人では17軒、夫婦では10年間で今の家が8軒目です(笑)。いろいろな物件に住みたかったのでずっと賃貸派でしたが、お客さまの物件の近くでたまたま見つけたのがこの家。中央に階段付きの廊下がある間取りの面白さと、バルコニーからの景色が気に入り、ちょうど子供ができたこともあって夫婦で購入を決断しました」(Sさんご主人・以下同)

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〈左〉斜面に建っているため、家の中央廊下には階段がついているという珍しい間取りの物件。〈右〉横浜の街を一望できるバルコニーはSさん夫婦のお気に入り。

ダイニングは、ポール・ケアホルムや
アルネ・ヤコブセンの家具を生かして
天然木を基調にシンプルに

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手前の籐のチェアは『ポール・ケアホルム』のイージーチェア「PK22」。奥のダイニングテーブルとチェアは『アルネ・ヤコブセン』。

アクタスのリノベーションコンセプトは、“空間と家具の調和”。“家具に家を合わせる”という逆転発想の住まい作りを、Sさん自ら体験したいという思いもあったそうです。そのため、ほぼ全ての家具は以前の家から愛用し続けてきたもの。持ち合わせていた家具が映える空間を目指すため、基調となる床材や窓枠などの素材選びには特にこだわりました。「『ポール・ケアホルム』のイージーチェアは籐で、『アルネ・ヤコブセン』のダイニングテーブルはブラック塗装+金属という異素材の組み合わせ。どちらもデザインが際立つものなので、LDKはアクセントを抑え、アイボリーに塗装した壁と無垢のオーク材を基調にシンプルにまとめました。特に床材選びは重要なポイント。木目が美しい幅広のヘリンボーンのフローリングは、家具にもなじんでモダンな印象に見せてくれます。ダイニングの窓枠には珍しい木製の二重サッシを採用し、キッチンの天井は板張りして温もりを加えました。どれもアクタスリノベーションのオリジナルパーツで、開発から自分も関わって作った愛着のあるものです」

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ダイニングテーブル上のランプは、北欧デザイン好きにはおなじみ『ルイスポールセン』のスノーボール。こちらも以前の家からの愛用品。

「『ルイスポールセン』のスノーボールも存在感があるため、ダイニングにはフロアライトなどデザイン性のある照明は他に置いていません。また、子供の成長に合わせて将来的にテーブルを変える可能性があるため、ペンダントの位置を変更できるようダクトレールを設置したのもこだわり」

大きなカウチソファが配置できるよう
もともと和室だった部屋は
奥行きのあるリビングに変更

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大きなカウチ付きソファはイタリア製のもので、その上を照らすのは『セルジュ・ムーユ』のブラケットライト。左のガラス張りのスペースはマンションでも設置可能なバイオエタノール暖炉。

6畳の和室だった部屋を撤去してダイニングとつなげ、約14畳の広々としたLDKに変更。リビングには愛着のあるカウチソファを配置するための工夫が。「ソファがリビングの広さに対して大きかったので、左側へ続く寝室への動線や暖炉との距離が確保できるかを考慮しながら、設計や配置を考えました。圧迫感がなく広く見えるよう、壁や天井の色はソファに合わせた明るいアイボリーに。『セルジュ・ムーユ』のブラケットライトは、以前からリノベーションするならソファの近くに置きたいと思っていたもの。今回の家で新しく購入した数少ないアイテムのひとつです。ソファの向かいに和室の壁を残したことで、ヴィンテージシェルフもうまく収まりました」

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出窓とソファのアームがちょうど同じ高さになったことで、より奥行きが出たのだそう。向かいの壁とライトによって、広々としたなかにもちょっとしたおこもり感が。

玄関の『P.F.S.』のキャビネットは
ダークグレーの壁と間接照明で
日本の“お宿”風の雰囲気に一新

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キャビネットは『パシフィックファニチャーサービス』で、印象的なデザインのミラーをアート的に配置。どちらも以前の家から愛用していたもの。

北欧家具と木の温もりが印象的なSさん邸ですが、リノベーションのテーマは“お宿”。インダストリアルなイメージの『パシフィックファニチャーサービス』のヴィンテージのキャビネットも、あえて薄暗い空間に仕上げた玄関に配置すると、和のたたずまいを感じさせます。「僕たち夫婦のもうひとつの趣味が旅行。なかでも日本の宿が大好きで、旅行のプランは泊まりたい宿から決めるほどです。玄関の壁はグリーンがかったダークグレーに塗装し、照明はミラーや生けた草木から関節的にあてて最小限にとどめることで日本の宿独特の暗さを表現。大谷石をイメージしたカーペットの色も夫婦のこだわりです。もともと持っていたキャビネットが、和の空間にうまく調和してくれました」

LDKへ抜ける廊下もあえて薄暗い雰囲気に

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〈左〉間取り中央にある階段付きの廊下から覗く明るいLDK。 〈右〉廊下の壁やカーペットも、玄関と同じくあえてダークカラーに。

「家の中央にあった階段付きの廊下も、お宿風の空間に。壁式構造のため幅はどうしても広げられなかったので、ならばあえて狭く感じるようにと壁を暗めの色で塗装し、照明も最小限に。隠れ家っぽいお宿の雰囲気が表現でき、その先にあるLDKが実際よりも広く感じられました。空間が切り替わることで、家に帰ったときのテンションも上がります」

バイオエタノール暖炉で“たき火”を楽しむ

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リビングに採用した暖炉。薪ではなくバイオエタノールを燃料とするため、煙突もいらずマンションでも設置可能なのだそう。

リビングのバイオエタノール暖炉も、お宿感を演出するための要素。「以前泊まった宿がデッキでたき火ができて、直火の雰囲気ってすごくいいなと思ったんです。ちょうどバイオエタノール暖炉を導入したお客さまがいたので、これはいいぞと後日ショールームまで足を運び、我が家にも採用しました」。冬は暖房としても活躍し、目にも癒やしを与えてくれるそう。

壁式構造のため間取りはほぼ変更なし

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リビングダイニングと和室をつなげ、キッチンを表に出して約14畳の広々としたLDKに。階段付きの廊下とLDKの間のドアは撤去し、LDKと寝室と廊下を回遊できる仕様に。大幅な間取り変更はないものの、開放感のある空間が完成。

Sさんが購入したマンションは69.09㎡の壁式構造。3LDKを2LDK+WICへとリノベーションしました。壁式構造は一般的に共有部である壁を壊すことができず、ほとんど間取りの変更ができないというデメリットが。これまで多くの物件を見てきたSさんは、その経験を生かし、壁式構造でもどの程度なら壁が解体できるかを内見の際に判断しました。「我が家は小さな子供もいてそこまで広い空間を作る必要はありませんでしたが、オープンキッチンにするのが絶対条件だったので、内見の際はレンジフードの排気ダクトのルートを確認し、キッチンが移動できるかどうかを事前に確認しておきました。大きく変えた部分はキッチンの位置とリビングダイニングの広さ程度。壁式構造という制限下でも、自分たちに合った間取りが手に入りそうでした。最初から置きたい家具も明確だったため、設計から工事までスムーズに取り掛かれましたね」。壁式構造は間取りに制限がある反面、設計のプランが早いというメリットもあるのだそうです。

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