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第5回|風邪には葛根湯は間違い? 風邪に効く漢方の正しい選びかた

日本では知らない人がいないかもしれない「カゼには葛根湯」。カゼを引いたらとりあえず飲んでいるという人も多いのではないでしょうか。でも実は、葛根湯は決してカゼの万能薬ではありません。

2018年1月
ライフスタイル

カゼには葛根湯は迷信?

「カゼ」と言っても症状はさまざま。近頃は総合感冒薬でも「私に合ったかぜ薬」というようなCMを見るようになりましたが、中医学では何千年も前から体質・症状に合わせて適切なかぜ薬を選んできました。漢方薬は、症状と体質に合ったお薬を選んでこそ効き目があります。ということで今回は『タイプ別 カゼの対処法』について解説します。

中医学的に考える4つの「カゼ」

 中医学ではカゼを「感冒(かんぼう)」と呼び、熱性のカゼ、乾燥性のカゼ、寒さや冷えが原因のカゼ、湿気のカゼなどがあると考えています。それぞれ「風熱感冒」、「風燥感冒」、「風寒感冒」、「風湿感冒」という言い方をします。カゼの様々な症状は、自然現象である風が、悪さをする邪気と代わり風邪(ふうじゃ)となって身体に入り込んだことが原因と考えられています。さらに風邪(ふうじゃ)は単独ではなく、他の邪気、「熱」、「燥」、「寒」、「湿」などを引き連れて体内に侵入することで、それぞれが特徴的な症状発症させると考えます。

発熱やのどの痛みがある「風熱感冒」(熱のカゼ)

発熱やのどの痛みが特徴
この「熱」のカゼでは、急な発熱、身体が熱っぽい、のどが痛い、鼻水や痰が黄色く粘りがあるといった症状が見られます。風熱感冒では、まず余分な熱を冷まして炎症を鎮めることが大切です。

〈主な症状〉
発熱 ・顔が赤い ・口の渇き ・喉の痛み ・鼻水や痰が黄色く粘りがあるなど。

〈食養生〉
余分な熱を冷ます涼性の食材を。
ミントティー ・菊花茶 ・ごぼう ・蓮根 ・大根・グレープフルーツ・キュウリ・冬瓜・トマトなどがおすすめ。

〈よく使われる漢方薬〉
銀翹散(ぎんぎょうさん)、天津感冒片(てんしんかんぼうへん)、涼解楽(りょうかいらく)、板藍根(ばんらんこん)など

咳や痰が出る「風燥感冒」(燥のカゼ)

・長引く咳は「乾燥」のサイン
口や喉が乾燥して、なかなか咳が止まらない、痰が絡むといった症状は、乾燥の邪気、「燥邪(そうじゃ)」が体に入り込んで呼吸器系や粘膜を乾燥させてしまったと考えられます。カゼが長引いたときによく見られ、潤すことで対処します。マスクや加湿器などを使い、乾燥を防ぐ工夫も心がけましょう。

〈主な症状〉
空咳 ・少量の痰が絡んで出にくい ・口が渇く ・皮膚の乾燥 ・便秘など。

〈食養生〉
・潤いを与える食材を
・梨 ・枇杷 ・はちみつ ・杏仁豆腐 ・銀杏 ・大根 ・百合根などがおすすめ。

〈よく使われる漢方薬〉
養陰清肺湯(よういんせいはいとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)など。

悪寒や頭痛、関節が痛む「風寒感冒」(寒のカゼ)

・ぞくぞくと悪寒がするカゼ
カゼの初期で、ぞくぞくとする悪寒や頭痛、節々の痛み、ダラダラ出る水っぽい鼻水といった症状が特徴です。風寒感冒では、身体をしっかり温めることが大切です。暖かい服装を心がけることはもちろん、食事(熱いおかゆなど)や入浴で身体を芯から温め、発汗してない場合は少し発汗させるのが早く治すコツです。

〈主な症状〉
・悪寒 ・頭痛 ・節々の痛み ・鼻づまり ・鼻水が水っぽい ・顔が青白いなど。

〈食養生〉
・身体を温める温性の食材を
・生姜 ・ネギ ・ニンニク ・シナモン ・紅茶 ・三つ葉などがおすすめ。

〈よく使われる漢方薬〉
麻黄湯(まおうとう)、葛根湯、桂枝湯(けいしとう)、桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)など。

胃のむかつきや吐き気がある「風湿感冒」(湿のカゼ)

・吐き気や食欲不振などの胃腸障害が特徴
「湿邪」というジメジメした湿気が身体に入り込んだカゼで、胃の痛みやむかつき、食欲不振、下痢といった胃腸トラブルや痰や鼻水が特徴です。体内の「湿(余分な水分)」を取り除きながら、胃腸の働きを整えて対策します。

〈主な症状〉 
・胃のむかつき ・胃の痛み ・食欲不振 ・嘔吐 ・腹痛 ・下痢・鼻水・多い痰など。

〈食養生〉 
香りのよい食材で消化系の症状を緩和しましょう。
・しそ ・生姜 ・みょうが ・陳皮(ちんぴ/みかんの皮を干したもの)・せり・パクチー・梅干しなどがおすすめです。

〈よく使われる漢方薬〉 
藿香正気散(かっこうしょうきさん)、香蘇散(こうそさん)など。

症状に合わせて漢方薬を選ぼう!

初期のカゼと長引くカゼでも処方は違う

 カゼを漢方薬で対処する場合、タイミングと症状の見極めがとても大切です。ごく初期に漢方を適切に服用すると、そのまま悪化せずに治ります。しかしほとんどの人は、カゼをひいて数日経ってから薬を飲み始めているようです。そうなると邪気は体の奥深くに侵入してしまっているので、漢方や養生だけで症状を軽減するのが難しくなります。上記の漢方はいずれもカゼの初期に使うもので、こじれたカゼには違う対策と漢方が必要です。また、体質、体調、その他症状や症状が出始めてからの日数などによっても必要な漢方薬は変わります。間違った漢方薬を使うと長引くこともあります。

葛根湯は万能薬じゃない!間違うと悪化することも

目覚めの一本

昨日これ飲んだからか喉が超回復している!!!げんき!!
instagram.com

 誰もが知っている「カゼには葛根湯」ですが、決してカゼの万能薬ではありません。たとえば、熱っぽくて喉が痛い「風熱感冒(熱のカゼ)」の初期に、温める葛根湯を使っても治らないどころか悪化することすらあります。葛根湯は汗をかかせて冷えの邪気を散らすものです。本来は「カゼの極初期(ゾクゾクと寒気を感じた時)で、悪寒があって喉の痛みはなく、汗が出ておらず、首筋から肩にかけてこわばりがあるとき」に使われ、使える期間はとても短いです。さらに、飲んで汗をかきはじめたらもう症状は変わっているため、違う漢方が必要になります。
 また、最近はカゼ以外でも、「葛根湯は体を温めるから冷え性によい」とか「免疫が高まってカゼの予防になるから毎日飲んだらよい」といった、中医学から考えると間違った使い方をされている人もよく見かけます。間違った漢方薬の使い方は、健康に良いどころか健康を害することも十分に考えられますので、服用の際は必ず漢方・中医学のことをしっかり学んだ専門家に相談してください。

カゼにかからないようにするのが大事

 カゼはとにかくかからないようにすることがとても大事です。中医学では体は衛気(えき)というエネルギーによって外敵から守られていると考えます。その衛気を強化する漢方薬には、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)もしくは、衛益顆粒(えいえきかりゅう)という漢方があり、日本でも手に入ります。衛気はカゼなどのウィルスからだけでなく、花粉や、気温の変化などあらゆるものから体を守っているので、気温の変化や天候の変化、そして花粉やウィルスなどから身を守るために、日頃からこれら漢方を飲んでおくのもおすすめです。そしてちょっとでも「怪しい」と感じたらすぐに、カゼの漢方を症状に合わせて使ってくださいね。

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