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調味料はあくまで脇役。『俺の割烹』料理長に教わる「料理でもっとも大切なこと」

レシピ

和食の世界で注目を浴びる料理家や料理人に、家庭でもすぐに実践できそうな味付術を教えてもらうこの企画。今回は、あの「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」の系列店「俺の割烹」へお邪魔して、多くのゲストを喜ばせている味付けの秘けつをききました。

macaroni編集部

「俺の割烹」の味付術は○○が主役!

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Photo by macaroni

和食、上手につくれてますか?「なかなか思うようには……」というあなたのために、名のある料理家、有名和食店の料理長に和食の基本から一歩進んだ味付術を教えてもらうこの企画。

今回足を運んだのは、「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」などで知られる俺の株式会社の系列店「俺の割烹 銀座本店」。ミシュランの星付き店で活躍した料理人たちの料理をお手頃価格で楽しめると人気のこちらで、家庭でもすぐに実践できる味付術をききました!

滋味を生かして調味料で補完する

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駒板邦明さん1976年神奈川県生まれ。武蔵野調理師専門学校卒業後、「築地 吉兆」、「銀座 うち山」他で修業を積み、現在は「俺の割烹 銀座本店」の料理長として腕を振るう。

——「俺の割烹 銀座本店」といえば、数ある割烹料理店の中でも格別に注目度の高いお店ですよね。そんなお店で料理長を務める駒板さんが、料理の味付けをする上で大切にしていることってなんでしょう。

滋味、という言葉がありますね。僕の場合、それを生かすことを意識して作業しているんです。

——滋味ですか。「旨み」であったり「滋養のある食べ物」であったりという意味の言葉ですね。

ええ。滋味を生かした料理とはつまり、素材の味をふくよかに感じられる料理のこと。素材がもっている旨みを余さず引き出して、そこに足りないものだけを調味料で補完する。そういう味付けを心がけています。

当店がお客様にお出しするような料理では、調味料はあくまでも脇役。砂糖や塩、醤油の味が滋味に勝つことがないよう注意しながら調理していますね。

——調味料が勝ってはいけないんですね。

調味料なしじゃ料理は成立しませんが、もっと大事なものがあるということ。たとえば野菜で煮物をつくるとして、食材の旨みをちゃんと引き出せば調味料で甘みを加える必要なんてないんです。

お出汁ににんじんを加えて炊いたとします。お塩とお醤油をちょっと入れるだけで、みりんやお砂糖を入れたんじゃないかと思うくらいの甘みが出ますよ。

——食材ごとの風味をより強く感じられる料理になりそうです。

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クエの旨みを引き出す作業。2時間以上の時間をかけてその旨みを引き出している。

野菜以外の食材にも同じことがいえます。最近(2018年1月現在)当店ではクエ鍋を提供しているんですが、かつおだしにクエの骨やアラ、昆布、お酒などを入れ、2時間以上かけてクエの味を引き出しているんです。鍋料理というと具材がメインだと思われがちですが、私たちとしてはお出汁こそが主役と言いたい。ひと口すするだけで、言葉にできないくらいおいしい味が口の中に広がりますよ。

クエの身自体高級で、このお値段(1,980円!)でお出しできるお店というのはなかなかないと思うんですけど、とにかくスープが絶品なので、それこそを味わってほしい。そして、その上で具材を楽しんでほしいんですね。

ちなみにこれ、本当に採算度外視のメニューなので、たくさん頼まれてしまうと冗談でなくお店がつぶれてしまいます(苦笑)。

調味料は足りないものを補う脇役

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——調味料で味を補完するとは具体的にどういうことですか?

たとえば出汁を取ったとして、にんじんだったら甘みが出るし、昆布だったら旨みが出ます。また、魚ならほんのりとした塩味や脂が出てきます。素材によって風味が違いますし、その味ごとに足すべき調味料が違うんですよ。食材自体にしっかりとした塩気があるなら、塩や醤油を足す必要はないでしょう?

もっといえば、その料理を食べる前に何を口にしていたかで味の感じ方は変わります。味の濃いものを食べた直後に薄味の料理を食べたなら、味がしないと思うはず。そうしたことも考慮して、どの調味料をどの程度入れるべきかを考えながら調理する。味の補完とはそういう意味です。

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——なんだか難易度の高そうな作業ですね……。適切な味付けをするにはそれなりの経験が必要でしょうか。

経験はあった方がいいですが、それよりも手間ひまをかけるべきです。私なんて、お出汁を取るために1時間半とか2時間とか昆布を煮て、旨みを引き出します。

——しっかり出汁を取ろうと思うとそんなにも時間がかかるんですね。

かかる時間は長いですが、最中にやるべき作業は時々アクをすくうくらいですから。ご家庭であれば、テレビを観たりお掃除したりしながらでいいんですよ。火を使うので注意は必要ですけどね。それだけ気をつけてよい出汁を取れば、ご家庭の料理は格段においしくなると思います。

お出汁で食卓にサプライズを

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——駒板さんが実践している滋味を生かす味付け。家庭で手軽に真似る方法はありますか?

おウチで魚を食べる機会がありましたら、その骨を軽く焼くか霜降りして、お出汁をひいてみましょう。カニやエビもいいですね。お正月に食べた方も多いと思うんですが、あれの殻を使ってだしを取ると、料理の雰囲気がガラッと変わる。すごくおいしくなります。

当店ではフカヒレとカニを使った茶碗蒸しをやっているんですけど、その上にかけるあんはカニで出汁をとっています。見た目はかつおだしでつくったものと大差ありませんが、食べると甲殻類の旨みが口いっぱいに広がる。そういうふうにいつもと違うお出汁を取って使ってみると、食卓に好ましいサプライズを演出できるんじゃないかと。

——カニやエビの殻でとった出汁、茶碗蒸し以外におすすめのお料理ってありますか?

なんでもいけますよ。鍋ものやお味噌汁、お吸い物に使ってもいい。和食ではありませんが、カレーもいいですね。シーフードカレーにカニで取った出汁を使う。きっと良い味に仕上がります。

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