劇場版『鬼滅の刃』の興行収入が新たなフェーズに突入。立派な記録であることに変わりはないのだが、視点を少し変えてみると…。
28日、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の興行収入が、324億円を突破したと発表された。日本映画の歴史を塗り替えた偉業に驚きの声が上がっているが、「お金」という視点で考えると、年内に実施された「とある政策」の影が浮かび上がってくる。
■『鬼滅』の更新した記録
28日午後、『鬼滅』公式ツイッターは「公開73日間で観客動員 2,404万9,907人(興行収入324億7,889万5,850円)となりました」と、報告のツイートを投稿。
続けて「2020年、映画と共に、様々な形で本作に触れていただいたお一人お一人に心より御礼申し上げます。皆様のご健勝とご多幸をお祈りしております。良いお年をお迎えください」と、観客に向けて感謝と労いの言葉をつづっている。
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■『千と千尋』を抜いて歴代一位に
その爆発的ヒットを受け、公開当初より「興行収入300億円超え」を期待されていた『鬼滅』は、とうとう2001年公開の映画『千と千尋の神隠し』が19年に渡って維持してきた「国内上映作品」における興行収入1位の座を獲得。
これを受け、各界では『千と千尋』を引き合いに出しつつ、新たな記録を称賛する声が相次いでいる。事実上、国内の映画作品からは『鬼滅』が指標とするライバル作がなくなったワケだが、ツイッター上では「300億円」という金額をまた別の視点から見たツイートが注目を集めた。
■「アベノマスク」にかかった費用と比較
話題となっているのは、「アベノマスク」の通称でお馴染みの政策にかかった費用。こちらは新型コロナウイルスの流行に伴い、安倍晋三内閣によって実施された政策で、全世帯にガーゼ製の布マスクを配布する内容…であったが、マスクそのものの品質や対応の遅さ、実施に当たって発生した費用額の大きさから非難の声が非常に多い。
『鬼滅』の興行収入を受け、アメリカ文学者・髙村峰生氏は自身のツイッターより「これだけのヒットでも、まだまだ『鬼滅の刃の興行収入300億<アベノマスクにかかった費用500億』というのは、稼ぐのは本当に大変だが、使うのは一瞬であるという教訓を与えてくれるなあ」とつづった文章を投稿。
「めちゃくちゃ分かりやすい例え」「今年の政策のはずなのに、もうこの費用のこと忘れてました…」「鬼滅には500億円を突破してほしい」など大きな反響を呼んだ同ツイートは、1.3万件以上ものRTを記録している。
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■政策と費用
あくまで『鬼滅』はエンタメ作品で「アベノマスク」は政策であるため、比較の対象としては適切ではないかもしれない。しかし2つの異なる事象にはそれぞれ巨額の「お金」が動いており、世の中に与えた影響の大きさを考慮すると、「300億」と「500億」という数値から、これまでとは違う印象を受けてこないだろうか。
ちなみに政府が15日の臨時閣議で、コロナ禍への追加経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案を決定した際、事業期間を延長する「GoToトラベル」事業に1兆311億円、宿泊施設の改修などを支援する事業には550億円を計上している。
日常生活に馴染みがない巨大な金額をイメージすることはなかなか難しいが、政策にかかった費用や予算、人気商品の売り上げなどを比較することで、新たな発見があるかもしれない。
(取材・文/しらべぇ編集部・秋山 はじめ)