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〈中川政七商店〉初の商業施設が奈良にオープン。未来へと日本の工芸をつなぐ、〈鹿猿狐ビルヂング〉の挑戦。

旅行・おでかけ

例えば、日本全国にいる工芸の作り手や農作物の生産者、当たり前にあるものを知ると見えてくる知恵がある。「ずっとそこにあるもの」からエシカルな生き方を学ぶ。今回訪れたのは、〈中川政七商店 〉がコーヒーショップや飲食店を誘致した複合商業施設〈鹿猿狐ビルヂング〉について聞きました。日本の工芸が大切にしている、ものを慈しむ心。実は身近にあった、そのサステナブルな魅力をもっと知ってもらうために、できることとは。5月28日(金)発売 Hanako1197号「気持ちいい生活の選びかた。」よりお届け。

奈良に行きたくなるお店。それを増やす手助けをしたい。

日本全国の産地で人の手によって生み出される「工芸」が100年後も人々の暮らしと共にあるように、と「日本の工芸を元気にする!」を大きなビジョンとして掲げ、衣食住にまつわる暮らしまわりのものづくりをしてきた〈中川政七商店〉。そんな彼らが「奈良に注力する」と決め、コーヒーショップや飲食店を誘致した複合商業施設〈鹿猿狐(しかさるきつね)ビルヂング〉を今年4月にオープン。
奈良は創業し、本社を置く原点の場所。そこに今、改めて立ち返った理由とは何か、現在の〈中川政七商店〉の形を作り、今は会長として奈良で「N.PARK PROJECT」を進める十三代中川政七さんに話を聞いた。
「日本の工芸を元気にするために全力でやってきましたが、僕たちが考えている以上に工芸業界の衰退のスピードが速かったんです。コンサルティングをして、各産地を率いる〝一番星〞の作り手を生み出すことを目標にやってきましたが、それではとても追いつかない。産業革命を起こすような何か新しいモデルを生み出さないといけない、と。そこで思い至ったのが『産業観光』というコンセプト。ただ工場化して出荷量を増やすとかではなく、もっとお客さんに産地を見える化する。そこで観光や買い物もしてもらい、工芸が生まれる背景や作り手のことを知ってもらう。そうやって産地全体に付加価値をつけていきたい。で、こんなことを言い出した以上、まずは地元でやらないと、と思ったんです」
そんな中川さんが、まず奈良ではじめたのがスモールビジネスをたくさん作ること、というのも面白い。「金沢や京都もそうですが、寺社が多いため、それにまつわる町場の工芸が奈良には多種あり受け継がれています。ひと産地ひと産品でない分、街ごと盛り上げないと意味がない。では、いい街って何かと考えた時に、多様な楽しいお店がある街じゃないかと思いました。僕らのお店ばかり20軒あっても楽しくはないんです(笑)。小さいけれど行ってみたいと思う店、街のコミュニティになってくれる店ができたら活気が生まれる。そういうものを作るお手伝いができたら、とこの場所を作りました」
中川さんが奈良に持ち込んだのは、この土地で何か生まれるかもしれないという新しい空気、機運だ。「続いてきたものを僕らの時代で失わず、100年先まで残す。そのために何ができるのかと考えることはSDGsで語られることとも通じるものがある。僕たちが企業としてやっていることも一人一人ができることも一緒。結局、積み重ねでしかない。微力ではあるが、無力ではない。それを信じて進んでいきます」

【知る・学ぶ】

スモールビジネスの鍵となるコワーキングスペースと、中川政七商店の300年の歴史の重みを知る、展示や体験。

1.本店に残る実際の蔵を使い歴史を伝える〈時蔵〉と〈布蔵〉。

2.初の試み、学びの場となる、 3階の〈JIRIN(ジリン)〉。

興福寺の五重塔を望みながら仕事や勉強ができるコワーキングスペース。同じフロアに中川さんのオフィスもあり、声をかけられそのまま相談を受ける…なんてことも多々。開かれた環境から新しいビジネスが続々と誕生中。ドロップイン1日利用1,650円。9:00~21:00(ドロップインは10:00受付開始、19:00最終受付)無休(イベント時・年末年始除く)

【味わう】

茶道の新しい形を提案する町家のお座敷でいただく選りすぐりのお茶とお菓子。気軽なテイクアウトも新登場。

1.町家の座敷で一服を愉しむ、特別な時間〈茶論 奈良町店〉。

茶道の新しい形を提案する〈茶論〉もリニューアル。茶道体験(自点て1,980円ほか)が気軽にできるほか喫茶もゆっくりと。季節のお菓子と飲物のセットは飲物代(薄茶1,100円~)+550円。主菓子は奈良の老舗〈樫舎(かしや)〉のもの。テイクアウトメニューも一杯ずつ点ててくれる。

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