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罪悪感がないから不倫できる?苦い恋に溺れる「不倫小説」3選

エンタメ

社会人として経験を積み、自分の仕事はもちろん、後輩のサポートも行う中堅社員として活躍しているマイナビウーマン世代の女性たち。慌ただしい毎日の中で、情報収集はほとんどスマホ経由という人も多いはず。たまには肩の力を抜いて、読書してみるのはいかがでしょうか。「読書の秋」と言われるこの季節に、本だからこそ出会える「恋のお話」として、第3回は「不倫」をテーマにした作品を紹介します。

こんにちは。Instagramを中心に「私らしく生きていくための読書案内」を発信している、読書研究家のきりんです。

外を歩くと木枯らしが頬をなでる冷たさに、秋も終わりの気配を感じる今日この頃ですが、みなさんはどんな秋をお過ごしですか?

連載「本が教える恋のお話」のラストは、ちょっぴりビターな大人の「不倫」にまつわる小説をお届けします。

なぜ駄目だとわかっているのに、人は危ない恋に走ってしまうのでしょうか。誰にも言えない「不倫」の恋にハマる理由を、ご紹介する3冊から探っていきます。

第3回のテーマは「不倫」

恋は、時に冷静になれないものです。あなたにも、少なからず感情に流されて溺れてしまった経験があるのではないでしょうか。

今回紹介する小説の中の女性たちは、結婚している男性を愛してしまいます。自分の人生を危うくしてしまうかもしれない「不倫」の恋なのに、どうして止めることができないのでしょうか。

秘密めいた恋を続ける理由や行く末を、作品を通して感じてみてください。

『隣人の愛を知れ』尾形真理子(幻冬舎/幻冬舎文庫)

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好きな人への愛を貫くことが罪になる、「不倫」の恋。タブーの中に、果たして真実の愛は見出せるのでしょうか?

この作品には、専業主婦のひかり、ひかりの姉の知歌、有名女優の青子と夫である映画監督の関戸、ひかりと知歌の母親・美智子などが登場しますが、ここでは知歌の生き方に焦点を当てていきたいと思います。

水戸知歌は35歳、独身。弁護士の父親の影響でパラリーガルとして働き、実家で母親の美智子と暮らしています。

かつては父親と妹のひかりも暮らす四人家族でしたが、父親は知歌が10歳の時に家族を捨て、好きな人と一緒になるために出ていってしまいました。

別居して25年経っても母親の美智子は離婚に踏み切れず、夫に不倫された立場のままです。

そんな家庭で育ったにも関わらず、知歌は何の因果か、映画監督であり女優・青子の夫である関戸と熱烈な不倫の恋に溺れています。

もちろん母親に関戸との関係を話すことなどできませんが、心の内では「浮気する妻になるくらいなら、愛人の方がいい」などと不遜なことを考えています。

「不倫」という関係から始まった恋は、秘められているからこそ美しく輝くのかもしれません。渦中にいる2人の目には、お互いの良いところしか映らないのですから。

さらに驚くべきことに、知歌は関戸の妻であり女優の青子を、憧れの存在として認知していました。

不倫をすれば、男を妻から奪いたいと苦悩するのが常であるはずだ。
それなのに知歌は、彼女が自分と同じ世界に存在しているとは思えなかった。
そのリアリティのなさが不貞にドライブをかけ、罪悪感を麻痺させている。(P.159)

しかし、公になってしまえば一転、人生の歯車が狂ってしまうのが「不倫」の代償です。

2人の関係がついに週刊誌によって暴露されてしまい、知歌は続けてきた仕事を休職に追い込まれます。さらに、関戸からの連絡は途絶え、知歌を避けるようになります。

愛していた人から距離を置かれた知歌は、母親に「人様から奪ったもので自分を満たして、それで知歌は恥ずかしくないのか」と叱責されて、ようやく我に返ります。

熱に浮かされたような恋は、雪みたいに溶けてしまったのかもしれない。(P.239)

物語の後半で知歌の体に起きる異変が、その後の人生に大きな変化をもたらしたのが印象的でした。

「不倫」というつながりで結ばれた登場人物たちの、真実の愛や幸せはどこにあるのか? 不倫だけではなく、愛の多様性についても描かれる本作は、さまざまな愛の形について考えさせられる作品となりました。

『男ともだち』千早茜(文藝春秋/文春文庫)

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29歳の神名葵(かんなあおい)は、恋人の彰人と同棲しながら、イラストレーターや絵本作家として活動しています。

自分が進みたい道で少しずつ成功をしていく神名。しかし、そんな彼女を近くで見ている彰人は、次第に神名と距離を置くようになります。

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