「恋と哀れは種ひとつ」は、江戸時代を代表する劇作家・近松門左衛門の言葉。彼の時代であれば、「確実に幸せにできるかどうか、なるかどうかは定かではないけれど、心からそうなることを乞い願う」というのが恋でした。
何かはっきりと言い切れないようなものがそこにあって、それでも自分の大切なものを相手に与えてあげたいと思うからこそ、それが人生を左右するほどのトキメキやトワイライトとなって、その人をすっかり変えてしまうなんてことも起きる訳です。
今週のあなたもまた、いかに何も打つ手がなく、おろおろするしかないというところに留まっていられるかということを、もう少し大切にしてみるといいでしょう。
今週のやぎ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
暗い予感を研ぎ澄ます
今週のやぎ座は、思いつく限り最悪の想定をして、現実に備えておこうとするような星回り。
「春風や鼠のなめる角田川(すみだがわ)」(小林一茶)は文化10年、作者が51歳のときの句。すっかり景色が春に変わって、すべてが移ろいゆくかのように見えたなかで、ただ鼠だけが人生の悲惨を、この世の本質がどこにあるのかを示唆するかのようにそこにいるように感じられたのかもしれません。
実際、翌年結婚しやっと身を固めて落ち着いたかのように見えたのもつかの間、生まれてきた幼い子供をつぎつぎと失い、もうなめつくしたと思った辛酸をこれ以上ないというほどに舐めさせられたのです。
今週のあなたもまた、ここで改めてもう自分には不幸など訪れるはずがないという慢心やゆるみを引き締めておくといいでしょう。
今週のみずがめ座の運勢
illustration by ニシイズミユカ
手垢のついた現実からの離陸
今週のみずがめ座は、何をするにもどこに行くにも絡みついてくる既存の文脈から、自身のつむぐ物語を切り離していこうとするような星回り。
かつて村上春樹は、29歳になったときに「ある日突然」「小説が書きたくなった」そうです。自分の表現したいことを表現するために、それまで自分が触れてきた小説と「まったく違った形のもの」を「自分の文体」として作りあげなければならなかった。そのためには、いったん「日本の小説の文体」から離れ、その痕跡をこなごなに砕いて、少しずつ消し去っていく作業を行わなければならなかったと。
そうした創作への態度の根底にある衝動について、村上は「ものすごく個人になりたい」とか、「社会とかグループとか団体とか」から「逃げて逃げて逃げまくりたい」、すなわち“世間”から距離をおきたい、離れていたかったという言い方でも言及していましたが、これは今週のみずがめ座にもどこか通底するように思います。