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寂しかった自分に気づく本? 臨床心理士が綴る、こころの問題との向き合い方

ライフスタイル

臨床心理士として相談者のこころの問題と長年向き合い、またその経験をもとにした著作が話題となるなど文筆業でも注目をされている東畑開人さん。新刊『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』で焦点となっているのは、“自助”の時代の中で、いかに人と繋がるかということ。本書が3月に発売となって以来、東畑さんがさまざまな感想を目にする中で抱いたのは、「これは寂しかった自分に気づく本なのかもしれない」という思いだった。

「人は日頃、友達や組織などいろんなものに支えられ、あまり寂しさを感じないように生きているわけですが、ふと寂しくなることがある。その背景に隠されているのは、過去に受けた何らかのこころの傷。どうせ誰もわかってくれないだろうと、普段はその傷が見えないようにきちんとマネージメントしていながらも、やっぱり誰かにわかってもらいたい自分もいる。そういう寂しさとか孤独感が、この本を読んでいると露わになるんじゃないでしょうか」

本書は、東畑さんがこれまで行ってきた相談者とのカウンセリングが事例となり、今の時代に生じやすいこころの問題との向き合い方が「7つの補助線」として綴られている。自分をコントロールする方法や人との距離感などのテーマがあるが、いずれも共通しているのは、こころは簡単に白黒つけられないということ。

「例えば何か失敗した時に、ストレスを発散してスッキリするのはいいのですが、一方でモヤモヤすることも大切だと思うんです。失敗をモヤモヤ考えることで、それが教訓となり、成長に繋がることもありますから。現代にはどちらか一方に決めようという風潮がありますが、“も”という考え方は、複雑な今の時代を生き抜くために必要だと思います」

自分のこころと向き合う営みは人間にとって大切で、その際に役立つ本であってほしいと東畑さんは言う。

「同時に、こころの傷は他者との関わり合いの中で癒されるという側面もあって。恋人など信頼できる人と自分の傷をシェアすることで、だんだん修復されていく。そういう相手を見つけるのが難しいという人もいるかもしれませんが、自分に置き換えてみると、誰かに頼られるって案外嬉しくないですか? 他者は思うほど恐れる存在ではないんです」

『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』 SNSなどで広く人と繋がっているように思える今の時代。でも、カウンセリングに訪れる人たちは孤独を抱えていて…。迷子になったこころの見つけ方とは? 新潮社 1760円

とうはた・かいと 1983年、東京都生まれ。専門は臨床心理学、精神分析、医療人類学。著書『居るのはつらいよ』(医学書院)で第19回大佛次郎論壇賞受賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020受賞。

※『anan』2022年5月18日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・保手濱奈美

(by anan編集部)

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