いつも、やさしく寄り添ってくれる、占い師、作家のしいたけ.さんが「2023年という年は…」をテーマにエッセイを執筆してくださいました。
こんにちは。しいたけ.です。またこのananさんでのカラー心理学でお会いできて嬉しいです。今、少しだけ状況が落ち着いて、「2020年から2022年のここまで続いてきたカオス」についてようやく振り返っていける人も多いんじゃないかと感じています。
少し個人的な話をしたいのですが、僕は毎日ずっと日記をつけているんです。自分で作ったご飯の献立とか、あの店で飲んだコーヒーは旨かったとか、いついつまでにこの仕事を終わらせるためのスケジュールなどを書いています。そこで最近気づいたことがあって、たとえば11月23日の日記を書く時に、いつからか頭に「2021年11月23日」とか、年数をつける習慣ができていたのです。年数を頭につけないと、「今の自分が何年の世界を生きているのか」がわからなくなってしまっていたから。今、ここ数年のそういう話を本当に皆様や、周りの人とすごくしたいです。自粛期間中の毎日の献立を決めるのは本当に大変だったとか、外に出られない間に何をしていたのかとか、ご飯はちゃんと食べられていたのかとか。ひとつひとつが地味にめちゃくちゃ大変だったじゃないですか。
占いをやっていてつくづく思うことがあります。それは、人が持っている目標とか、欲望とか、変化やモチベーションとか、決意や願い…。そういう「次に続いていく道を作る想い」は、直近の思い出をベースにしているのだということ。ほら、たとえばお正月、お雑煮とかおせち料理がお腹の中に残っている時に「今年はどういう年にしたいか」とか、考えたりすることがありますよね。もちろん、お正月に決めた目標をそのまま完遂する意志の強い人なんて全人口の2%ぐらいのものだろうから、新年の決意なんて、そんなたいした効力はないはずなんです。でも、新しい一年が始まって、栗きんとんとか黒豆とか、なんかすごい恰好をした昆布巻きとか食べ終えてからですね、まだ街も休んでいる状態の中で、神社の周りに残る焚き火の匂いがあったり、たまに晴れ着の方とすれ違ったりしながら、「今年はどうしようかなぁ」と考える時間はやっぱり神聖で素敵なものだと改めて考えてしまうのです。
その時に参考にしているのが、「去年はどういう生活をしてきたか」なんです。「去年はちょっと無理をして仕事をし過ぎてしまったから、今年はもうちょっと余力を残していきたい」など思い巡らせる。2020年からこれまでの約3年間、異様とも、異常とも言えるような「空白期間」があったと思います。この空白期間があったからこそ、「何をしていきたい?」などの、次を決める大事な基準が今皆、「0」なのです。「去年はこうだったから、今年はこうしたい」ができない。2022年の後半、そして、これから皆で大切に迎えていく2023年は一様に「空白からのスタート」になっていきます。だからまず「悪夢の空白期間がやっと終わろうとしていること」を、表に出てこないさまざまな努力や工夫や虚しさを越えて、「今がある」ことを、どうか誇りに思って欲しいです。色々と本当にお疲れ様でした。この空白が過ぎた後にやっていくべきこと。それは、不安も、心配も、虚無も、予想し落胆し過ぎないことです。「これをやってもどうせ」とならないこと。旅行に出かける疲れ、友達に会う疲れ、お店に行ってご飯を食べる疲れ。そういうのも全部「0からの楽しさ」としてひとつひとつを大切に積み上げていくことから始めていきましょう。
では、2022年後半から2023年にかけての運勢はどうなっていくのでしょうか。カラー心理学で見ても、2022年の10月がひとつの区切りになってくるのですが、「これを機会に色々なことを見直して、私(たち)の未来を築いていこう。色々と見直す機会になってラッキー」と、前に進んでいく人たちが多く出てくるのです。その代わり、2022年の8月や9月は「仕切り直しに伴う整理」の運勢がかなり強かったので、この期間に色々なトラブルがあった方も多い気がします。
2022年はやはり「シルバー」という色が強く社会に定着化していきました。シルバーの人の口癖は「正解ってないわ」なんです。また、「誰かがやってくれるのをいつまでも待つよりも、自分で仕組みやルールを作って動いていっちゃった方が早いわ。足りないところはまた勉強していくし」もよく口にします。シルバーは改革や変革の申し子であり、「面子」や「自分がどう見られているか」に興味はなく、徹底的に「ユーザー目線」を優先していきます。「どうすれば、私に接する人たちやこの世界がもっと面白くなっていくか。その仕組みってまだまだ未完成だし、やること多いよね」と、子どもがずっとワクワクしているようなシルバーの良さが存分に発揮されていく世界に移り変わっていく。
そして、2022年から2023年へ。「変革」を表すシルバーに対して、新しいカラーも加わっていきます。それが、黄色です。
何かですね、実際に占いでお客さんを見ていった時に、黄色は「チャンスの色」として出る色なのです。でも、実際のチャンスって「よーし、これからバシバシ行くぞー」という時に出るものじゃなくて、どちらかというと、「不謹慎なタイミング」で出てくることの方が多かった。たとえば、失恋直後の人とか、あと、初めて入った会社がどうやらブラックっぽいとか。そういう人にチャンスを表す黄色が出てることがすごく多い。そんな時に、「チャンス到来です」なんて言えないじゃないですか。でもですね、僕は占いを通じて「人のしぶとさとか面白さ」をどうしたって感じてしまうのですが、人って本当に「自分のこれまでのやり方とか慣れ親しんできた環境」を変えたくないんです。偉そうに書いている僕自身が実際にそうです。もちろん、順調な時に乗れるチャンスもたくさんあります。でも、本当のチャンスは「一回0に戻ること」で得られるものだし、そこからの「やり方の見直しや、新しい習慣などへの取り組み」の中から出てくるものなんじゃないか。「どうせなら、色々と見直していっちゃって、新しいことを始めちゃおうぜ」が、2022年から2023年にかけて、たとえハッタリであったとしても、口にした方が良い言葉になる気がしています。
しいたけ.さん 占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強する。近著に『しいたけ.のやさしいお守りBOOK』『しいたけ.の小さな開運BOOK』(共に小社刊)。公式サイトhttps://shiitakeofficial.com/
※『anan』2022年11月30日号より。イラスト・100%ORANGE
(by anan編集部)