気温差が激しかったり、新生活での慣れないことに戸惑っていたり…。この時期、睡眠の質の低下から疲労を強く感じている人が多いよう。中医学士で漢方薬剤師の大久保愛先生が、疲労が取れないNG習慣と対策を教えてくれます。
最近、特に疲れていませんか?
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 214
ここ最近、暑い日が続いたり、雨の日が続いたり、今は何月なのか分からなくなるような気温変化の多い気候が続いていますね。暑さに慣れない中、外にでると紫外線にやられぐったりしたり、寝苦しく睡眠の質が落ち日中の眠気を感じたりと、疲労感からいつもの自分の本領を発揮できないといった毎日を過ごしているのではないでしょうか。
また、良かれと思って目覚ましのスイーツを食べたら血糖値の乱高下によって逆に猛烈な眠気を感じたり、目覚ましで夕方に飲んだコーヒーによって夜中目が冴えてしまったり、休日の寝だめで疲労を解消しようとしたら逆に生活リズムが乱れてしまったり、寝酒を飲んだら睡眠の質が落ちしまったりと、元気を出そうと即効性を期待をした結果、ずるずると疲れがとれないという負のスパイラルを作り出してしまっている人も多いのではないでしょうか。
ということで、今週はため込んだ疲れを癒す食薬習慣を紹介していきます。
今週は、疲れをため込んだときの食薬習慣
朝からだるいな、カラダが重い、疲れが取れない、横になっていたい、むくむ、やる気が出ないなどシャッキリしない日はないでしょうか。例年、梅雨入り後にこのような不調を感じる方が多いと思いますが、湿度が高かったり、気温が異常に高かったり、低気圧がやってきたりすることで、本来穏やかな気候が特徴の5月にもだるさや疲労感を感じる方も多いようです。
漢方医学では、栄養不足の『気血』が不足している状態や水分代謝が悪い『痰湿』がたまっている状態、自律神経が乱れている『気』の巡りが滞っている状態であるときに、気候の変化や低気圧にダウンしやすいとされています。そのため、今週は、『気血』を補い、『痰湿』を取り除き、『気』の巡りを促す食薬がおすすめです。また、疲労感がひどい時には、健康の基本である食事・運動・睡眠・呼吸などの見直しも同時に行うことが大切です。
1年のなかでもバテバテになる時期といえば、これから夏に向けてだと思います。今の時期の気候の変動にダウンしていたのであれば、これから先が大変です。だるさ・疲労感を感じた日から生活習慣の見直しを強化していきましょう。ということで今週食べるとよい食薬は【ホタテとバジルのイタリアンオムレツ】です。そして、逆にNG行動は疲れたときにしたくなる休日の【寝だめ】です。
食薬ごはん【今週食べるとよい食薬:ホタテとバジルのイタリアンオムレツ】
ホタテにはグリシンという良質な睡眠を得るために役立つアミノ酸が豊富に含まれています。また、ビタミンB群や脳疲労を和らげるプラズマローゲン、タンパク質、ミネラルが豊富に含まれていて『気血』を補います。そのため、睡眠不足と感じた時に食べたい代表的な食薬の1つとも言えます。また、香り高い食材は『気』の巡りを整え自律神経を整えるために役立つとされているため、たっぷりとバジルを入れてみましょう。そうすることで『痰湿』の除去にもつながります。また、アミノ酸スコア100の玉子で食材をまとめて、美味しく睡眠から疲労を軽減していきたいですね。
<材料>
玉子 2個
ホタテ 4個
バジル 1つかみ
みりん・醤油 各小さじ2
<作り方>
材料をよく混ぜ、クッキングシートを引いたフライパンで焼いて形を整えたら完成。
NG行動【寝だめ】
休日など自由に寝ても良い日には、いつもより2時間以上多く寝てしまうということはないでしょうか。そんな人には、睡眠負債があるといわれています。睡眠負債は、自分にとって適切な睡眠時間が確保できていない日が続くことによって、睡眠不足が慢性化した状態を表します。睡眠負債は、日中のパフォーマンスを下げてしまったり、あらゆる不調の原因となってしまうことがあります。
睡眠は、貯金することができず、たまった負債は一度の寝だめで解消することはできません。例えば、40分の睡眠負債があった場合には、その返済に3週間もの時間がかかるともいわれています。寝だめで昼まで寝ていることは、その日の夜の睡眠の質の低下にもつながり、睡眠のリズムをさらに乱してしまいます。これを社会的時差ボケといいます。
ですから、疲れていてもリズムを乱さないように、なるべく睡眠時間が通常に比べて2時間を超えないようにコントロールし、日ごろの睡眠のタイミングを見直していくことが根本的な疲れ対策となります。
現代人にとって、睡眠の質の向上は永遠の課題といってもいいほど、睡眠の質を落としてしまうような出来事が身近にたくさん存在します。忙しいときには、時間を作るために睡眠時間を削る人がほとんどだと思いますが、実際は睡眠の質を上げ、日中のパフォーマンスを高めた方がタスク処理の効率的にも体にとってもプラスとなります。頭ではわかっていても、すぐに行動を改めることは難しい問題ですが、慢性的な疲れに悩む人は、日々の習慣から整えていきましょう。ほかにも心とカラダを強くするレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
※食薬とは…
『食薬』は、『漢方×腸活×栄養学×遺伝子』という古代と近代の予防医学が融合して出来た古くて新しい理論。経験則から成り立つ漢方医学は、現代の大きく変わる環境や学術レベルの向上など現代の経験も融合し進化し続ける必要があります。
近年急成長する予防医学の分野は漢方医学と非常に親和性が高く、漢方医学の発展に大きく寄与します。漢方医学の良いところは、効果的だけどエビデンスに欠ける部分の可能性も完全否定せずに受け継がれているところです。
ですが、古代とは違い現代ではさまざまな研究が進み明らかになっていることが増えています。『点』としてわかってきていることを『線』とするのが漢方医学だと考えることができます。そうすることで、より具体的な健康管理のためのアドバイスができるようになります。とくに日々選択肢が生じる食事としてアウトプットすることに特化したのが『食薬』です。
Information
大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田で薬草を採りながら育ち、漢方や薬膳に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・美容を学び、日本人初の国際中医美容師を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、未病を治す専門家として活躍。年間2000人以上の漢方相談に応えてきた実績をもとにAIを活用したオンライン漢方・食薬相談システム『クラウドサロン®』の開発運営や『食薬アドバイザー®』資格養成、食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち®」シリーズの展開などを行う。著書『心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破のベストセラーに。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『食薬事典(KADOKAWA)』、「食薬ごはん便利帖(世界文化社)」、「組み合わせ食薬(WAVE出版)」、「食薬スープ(PHP)」など著書多数。
公式LINEアカウント@aika
『1週間に一つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー)。