最近、"今ここにいる"という瞬間を感じられたのは、一体いつだろう。体の声、心の声に耳を澄ませるのにぴったりな場所、山梨の0siteを訪ねて。
最近、"今ここにいる"という瞬間を感じられたのは、一体いつだろう。
体の声、心の声に耳を澄ませるのにぴったりな場所、山梨の0siteを訪ねて。
今ここにいるという実感を感じられたら、それでいい。
0site(ゼロサイト)ってどんな場所?
古山 憲正
福島県いわき市出身。
高校生の頃に東南アジア、南米をバックパッカーとして旅し、その後はイスラエル、デンマーク、イギリス各国の共同体、エコヴィレッジでの暮らしを体験。
海外旅を通して、日本の暮らしでは味わえない世界に魅せられ、自然と共にある暮らしを目指し「農」と「住」の技術を磨く。
2021年に「0site」の場所を開く。 夫婦で「空◯蝉」の屋号を構え、生きるような仕事と、暮らしを実践。現在は一児の父親。山羊二頭と生活。
0siteを立ち上げた古山憲正さんは過去に俳優を目指していたり、バックパックで世界を旅した、さまざまな経験の持ち主。0siteは2021年の1月に移住先の山梨でオープンした。普段は1日1組限定のプライベートキャンプ場として貸し出しており、月に一回は四季折々の宿泊型ワークショップを行なっている。
「今の社会って、いろんなことをたくさん吸収しすぎちゃって自分を見失いがちな人があふれてると思う。僕は10代の頃から俳優活動をしていて芸能の仕事をしていたのですが、事務所に所属してから自分ってなんだろうとか、周りの人と比べて苦しくなったり、生きている意味がよくわかんなくなってしまう時期がありました。学び続けたり、成長を目指すことだけが人生なのか、とか」
そのころ、俳優業を目指すかたわらバックパックで世界を旅した経験が、今の場所を作るきっかけになっているという。
「実は世界には、0siteのように宿泊しながら農作業の体験や大工仕事の体験ができる場所がたくさんあって。僕も10代〜20代前半の苦しんでたときに、そういう環境で過ごして、自分を取り戻せた感覚がありました。だから自分も同じように息苦しさを感じている人たちのために居場所を作りたいと思ったんです。もちろん一泊二日で完全な0に立ち返ることは、難しいとは思うんですけど、自然に囲まれた環境で、五感を研ぎ澄ますことで、この瞬間は自分だなっていう心地よい時間は見つけられると思うんです」
今後もさらに0siteをパワーアップすべく、五右衛門風の設置や、畑で育てた野菜の販売、粘土土でのピザ窯作り、展示スペースなども始めたいと語る古山さん。これからも、ゲストみんなで育てていく、そんなオープンでのびやかな場所になる予定だ。
「梅採りと種まき」の一泊二日のワークショップに参加した、鈴木 駿さんに聞く。
鈴木 駿
編集者
すずき・しゅん/1998年福島県いわき市生まれ、東京都在住。
大学時代は京都に進学し、社会学、文化人類学を専攻。
現在は編集系の会社で働く傍ら、「旅と編集」をテーマにインディペンデントな生き方を模索中。
今回は2022年の6月に行われた0siteの「梅採りと種まき」のワークショップに参加した、鈴木駿さんにイベントの様子を振り返ってもらった。
鈴木さんは東京で編集者として働いていており、普段から街を散策したり、知らない場所に出かけることが好きだそう。0siteを立ち上げた古山さんとは昔から幼馴染だという彼に、この場所の魅力を伺った。
<1泊目>のんびりワークショップスタート!
【昼~夕方】
「まずは山梨の0siteにお昼くらいに集合しました。いつもスケジュール通りというより、その時の流れで全てが進んでいく緩い空気感があります」この日は急遽「女将と梅取り+ペンキ塗り」のイベントから「梅採りと種まき」に予定が変更。
「まずはみんなで梅シロップの仕込みから。初めまして同士なので自己紹介がてら、淡々と梅を洗ってヘタをとって、下準備をしました」この仕込み方法も、0siteの古山さんからゲストに伝授されるそう。
のんびりとした空気から始まるワークショップ。実際参加する人はどのような人が多いのだろう。
「この時は全員初対面で、6人くらいだったかな。みんなそれぞれ出身地もバラバラで全国各地から来ていました。インスタを見てきたという人や、友達の紹介で来たという人、きっかけもさまざまで、基本的には20代の人が多かったです」
参加者はみんな初対面。
出来上がった梅シロップは、一年間漬けて出来上がる。「これをまた、来年みんなでここに戻った時に開けましょうということになって。各自家で作れるようにと、一キロの梅もお土産にもらいました」
そしてこの日は梅シロップ作りが早く終わったということで、古山さんこだわりの畑をみんなで見にいくことに。「この畑には、古山さんが不耕起栽培で育てたという野菜があって。農地を耕さないで人間の手を加えずに、植物たちの力を存分に生かして育てるという方法だそう。そういった話を聞きながら、みんなで実際に野菜を収穫しました。その後、今夜の夜ご飯のお皿にしようということで、フキの葉も持ち帰ることに」
新鮮な水で洗う。
梅の塾し具合によって色もさまざま。
氷砂糖と一緒に漬ける。
【夜】
あたりが真っ暗になり静けさに包まれる頃、古川さんお手製のライトに照らされて、いよいよお待ちかねの晩御飯タイム。0siteの晩御飯は古山さんのパートナー、古山美左紀さんが振る舞う。
「この日の夜ご飯は、かまどで炊いたご飯に、猪のお肉のサラダなどが出ました。鹿肉は村の方からのお裾分けされたものらしく、その土地のものをいただけます。開放的な野外でお酒も飲みながら、古山さんチョイスの雰囲気のいい音楽も流れます」
ライトは古山さんお手製。
夜ごはんには、その土地の恵みをいただく。
大自然の中、囲む食卓は格別。
地元の豊かな食に満たされたあとは、焚き火が用意される。
「お腹いっぱいになったあとは、みんなで火を囲んで一休み。ギターを弾く人がいたり、おしゃべりをしたり。みんな初めまして同士なのに、結構プライベートな話もするんです。もちろん、参加したくない人はしなくてもいい。自由な雰囲気です」
焚き火を囲んでリラックスした後は、各自食卓の片付けなどをして、明かりが消される。そこに現れるのは...満天の星空。
「0siteは山奥にあるので、街灯もなければ、音も聞こえない。ちょっと怖いくらいの静けさ。その分、星がめちゃくちゃ(本当に)綺麗で圧倒される。あまりに綺麗なので、みんなで近くの田んぼのような場所で寝そべって、そのまま20分ぐらいじっと星空を眺めました」
都会では味わえない満天の星空を全身で感じた後は、就寝時間。0siteのリノベーションされた廃校はひとつの大きな1個のスペースなので、みんなで布団を並べて眠る。外でテント張って野宿も可能だ。
0siteにはお風呂の設備がないので、入りたいという人は近くの温泉に行くそう。「歩いて10~15分ぐらいの近所に、『増富の湯』という温泉があるのでそこにいきました。免疫力や自然治癒力が高まるというラジウム温泉で、信じられないほど効くんです」
0site名物の焚き火時間。