【第1回】から読む。
パソコンなんていらない。スマホがあれば十分
――今、専業主婦で、子育てが一段落したらパソコンを使って在宅でできる仕事をしたいと思っているママも多いと思います。とくにIT企業が少ない地域だとパソコンは触ったことがないという人もいるのですが、何から始めたらいいですか?
堀江貴文さん:パソコンなんて必要ないんじゃないですか? 僕だってここパソコンはあまり触ってないですよ。今、パソコンよりも高機能なスマホが出ているから、スマホで十分ですよ。
地方の人材っていうのは、けっこう二極化していて、ひとつは「超ダメで全然行動しない人」。もうひとつは主婦とかに多いんですけど「家庭の方針で東京などに行かせてもらえず、地元に残って結婚して子育てをしてますという人」。でも実は地頭がいいみたいな人が、意外といるんです。地頭のいい人が店長になると、めちゃくちゃ売り上げ伸びるんですよ。
専業主婦から企業の社長へ
――専業主婦から働き出して大出世した人はいますか?
堀江さん:以前、僕が対談した人で元々は専業主婦で社長になった人がいます。短大を出てすぐに旦那と結婚。専業主婦として子育てをしていたものの旦那が体を壊して自分が働きに出ることに。お友だちのお母さんが経営しているアパレルショップで働き始めたのが30歳後半のときだったそうです。
その後、子どもの大学費用を稼ぐために40歳半ばのときに居酒屋を立ち上げて、たまたまそこにお客さんとして来ていたある企業のサービスの人に声をかけられ商品開発に携わるようになった。50歳を超えて社長に就任して経営再建にあたり黒字化させました。
結婚して専業主婦になった人でも、地頭が良かったり、行動力が合ったりすると成長スピードが速い。社会に出たときにどんどん行動して活躍の場が広がっていくんですよ。だから別にITにこだわる必要はないんですよ。むしろ「ITの専門家です」みたいなやつはいっぱいいるから。
――ITが人気だからといって、無理にやろうとしなくてもいいんですね。
堀江さん:それよりも「今どんな課題があって、それを解決するために何をするか。その最適な手段は何だろう」ということを考えられる力の方が重要です。
たとえば家事をするときに、より効率的にやるようにしようと思うかどうか。家事は、基本的には同じことをやるわけじゃないですか。毎日やるようなことに関しては、そできるだけ省力化をした方が、時間が短く済むわけですよね。これって仕事でも同じことが言えます。
実は彼女だけでなく、地方にもたくさん能力のある女性はたくさんいます。その人たちの特徴のひとつとして、コミュニケーションスキルが非常に高いんですよね。やっていくうちに技術は身についてくるんですよ。それよりも大切なのは、お客さんとコミュニケーションをとれること。変な話、それだけで成立するんです。
高単価な仕事を調べてみる。アイデア次第で仕事の幅は広げられる
――ほかに、どんな仕事ができそうですか?
堀江さん:たとえば、ピアノ教室もこれまでは直接習いに行くものだと思っているかもしれないけど、今はオンラインでレッスンができるし、非常に人気になっています。生徒さんに電子ピアノを用意してもらい、オンラインでレッスンをする。電子ピアノだから周囲に音が漏れることを気にする必要もないし、家事の合間に時間を作って教えれば、1日2、3時間でも教えた分だけの料金が稼げるわけですよね。
――アイデア次第でなんでもできそうですね。
堀江さん:僕はよく出張のタイ式マッサージを頼んでいます。その人は、ヨガのインストラクターもやっていて、それもあってタイ式マッサージの方は1日1人しか予約を受けてない。でも1時間か2時間やれば1万2,000円から2万2,400円もらえるわけじゃないですか。月半分ぐらい働いたら、それだけでも相当な収入になりますよね。それでヨガの先生もやれば50、60万円くらい稼げる。
手芸の上手な人だったらハンドメイドサイトに出品すれば、ハンドメイド好きな人が集まるから売りやすいでしょうね。ほかにも、フライフィッシングといって渓谷釣りで使う「浮き針」を作っている人もいます。フライフィッシングは上手な人が作ったものだと魚がよくかかるんですよ。在宅ワークをやるなら、まずはなにが高単価な仕事なのかを調べてみるといいと思います。
専業主婦でこれから輝ける人はたくさんいる
――堀江さんのところに面接に来た主婦の人で、一緒に働きたいと思う人はどんな人ですか?
堀江さん:頭の柔軟さとか行動力とかの方が大事で、まあ、ぶっちゃけバカでもいいんですよ。スキルよりも頭の良さよりも、行動力があったりコミュニケーション能力が高い方がすごく大事。ちょっとくらい足りないところがあるほうが逆に「この人支えてあげなきゃいけないんじゃないか」と勝手に思って、人がついてきてくれるんですよね。「親に言われて結婚して、子育て終わって今45歳」というような人で、これから輝ける人っていっぱいいますよ。
編集後記
ブランクが長くなるほど「自分には何のスキルもない」と思ってしまうママは多いものです。だからこそ就職や転職の際、新しいスキルや資格を手にすることに注目してしまうのかもしれません。しかし、家事や育児をするなかで培ってきた家事力やコミュニケーション能力が、働くうえで武器にもなることもある。また働く場所や時間が限られていても、アイデア次第で活躍の場は広げられます。持っていないものにばかり意識が向いてしまいがちですが、「すでに持っているものは何なのか」「今ここでできることは何なのか」そういった視点で、自分を棚卸ししてみるのもいいのではないでしょうか。
取材・北川麻耶 文・間野由利子 編集・Natsu イラスト・よし田