【第1回】から読む。
年金制度がなくなることは考えにくい。でも……?
――年金制度は少子高齢化に伴って破綻する! という話を聞いたりもします。本当でしょうか?
中野晴啓さん(以下、中野さん):私は日本の年金制度が破綻することはないと考えています。というのも年金などの公的制度が破綻してしまったら、国の信頼に関わるからです。公的制度さえも維持できない国と思われては、日本の価値は大きく下がってしまいます。それは絶対に防がなければなりませんから、国はどんなことがあっても年金制度を守るでしょう。
――年金制度はなくならないとしても、もらえる金額が減る可能性はありますか?
中野さん:その可能性はおおいにありますね。現在年金をもらっている人たちと同じ額を、将来私たちがもらうのは難しいかもしれません。今の年金制度を維持するためには、現役世代の負担を増やすこと、年金をもらう側の年齢を上げること、この2つが鍵になります。後者については、令和2年の年金制度改革で年金をもらい始める時期の選択肢が増え、仮に75歳からもらうとしたら、65歳でもらうよりも84%増額となりました。
日本は長い間、60歳で定年退職し年金生活が始まることが前提にありました。それは人生80年と考えられていたからです。しかし今は、人生100年時代。60歳はまだまだ現役ですし、70歳まで働くのが当たり前の社会になってきています。そのように社会が変化しているのですから、制度もそれに合わせて変わっていくのは当然でしょう。
年金は自分の子どものためと考えよう
――年金制度が変わるのは仕方ないとしても、もらえる金額が減ったり、もらえる年齢が上がったりすることには不満を感じる人も少なくないのでは? 「それなら納めたくない」と考える人もいそうです。
中野さん:年金は今もらっている人の分を自分たちが払っていると考えると、納めたくないと思ったり投げやりになったりするかもしれません。でもここは考え方を変えて、将来の子どもたちのために納めていると考えてほしいのです。納めない人が多くなればなるほど、その皺寄せは子どもたちにいってしまうわけです。子どもたちの負担が大きくなって、生活が大変になってしまうかもしれない。それを防ぐためにも、年金を納めるのはとても重要なことなんです。
(編集後記)
中野さんから「年金制度は破綻しない」とうかがい、正直ほっとしました。納める金額が増えるのでは? 年金受給開始が遅くなるのでは? と不安に感じることもありますが、将来の子どもたちのためと考えると、制度を維持することの大切さもわかる気がします。
次回は、国民が負担している税金に関してのお話をうかがいます。
※本記事は2023年10月に取材を行いました。記事の内容は取材時時点のものです。
文・川崎さちえ 編集・すずらん イラスト・加藤みちか