120年の歴史を紡ぐ重要文化財「旧三笠ホテル」が、約5年半に渡る大規模保存修理工事を終え、2025年10月1日にリニューアルオープン。カフェやミュージアムショップなどが新設され、誰もが憩い、歴史に親しめる文化交流拠点へと生まれ変わりました。明治や大正期にタイムスリップしたような気分が楽しめる、レンタルドレスサービスもスタート。レトロな衣装に身を包み、本物の洋館を巡ってみませんか?
文化人や財界人が滞在した、由緒正しき純西洋式建物
大正末期〜昭和初期の外観を復元。幾何学模様のガラス窓が美しい
明治39年(1906)、実業家・山本直良によって創業された「三笠ホテル」は、設計から施工まですべて日本人が手がけた木造純西洋式の建物。ガス灯のシャンデリアや英国製カーペットなど、当時の最先端・最高級の設備が整えられ、渋沢栄一や正田美智子妃など文化人や財界人に愛されてきました。その優雅な雰囲気から、「軽井沢の鹿鳴館」とよばれていたほどです。
その後、外務省軽井沢事務所や米軍接収などを経て、昭和45年(1970)にホテル営業を終了。昭和55年(1980)、軽井沢町に寄贈された建物は、日本の近代を代表する純西洋式建物として国の重要文化財に指定されました。昭和58年(1983)からは一般公開され、軽井沢を代表する観光名所として親しまれています。
5年半ぶりに再公開された「旧三笠ホテル」は、建物の歴史的価値を損なわないよう、当時の資料をもとに細部まで丁寧に復元され、主に明治から大正期の姿がよみがえったといいます。
重厚感のあるホテル看板
三角屋根にエメラルドグリーンの看板が掲げられた右側のエントランスから、早速館内に入ってみましょう。
かつてダイニングだったロビー
最初に迎えてくれるのは、重厚なロビー。かつてはダイニングルームとして使われていた場所で、当時からある優美なシャンデリアや、「三笠マーク」が施されたカーテンボックス、やさしい風合いの卵漆喰の壁や暖炉など、クラシックな雰囲気に包まれます。展示されている写真には、ここで近衛文麿が晩餐会を開いた様子も残されています。
クラシカルなアーチ壁。館内の天井には皮付き丸太があしらわれている
重要文化財である旧三笠ホテルの建築にはみどころがたっぷり。館内をゆったり巡り、明治期における最先端の様式やデザイン、手の込んだ装飾の数々を眺めましょう。
展示室では、実際に使われていたカラフルな荷札などをディスプレイ
スイートルームを再現した部屋も公開。優美なしつらえに心ときめく
三笠マークが彫られた貴重なライティングビューロー
客室を改装した展示室も必見です。当時の調度品や食器、新聞広告などの展示物を通して、ホテルの歴史を深く知ることができます。
客室の面影を残す空間で、花に彩られたカフェ時間を
「軽井沢ハーブティー」1210円、「旧三笠ホテルオリジナルブレンド珈琲」800円など
カフェは30席。カフェのみの利用でも入館料(高校生以上1000円、小・中学生500円)が必要
趣のある吹き抜け階段を上がると、新設されたカフェがあります。照明は当時から使われていたものを利用するなど、旧三笠ホテルの客室だった4つの部屋の雰囲気をそのまま活かした、クラシックな空間が広がっています。
「軽井沢アップルパイ」1210円
追加の「Moreエディブルフラワー」880円で可憐な一皿を演出