自分の意見に賛同してもらえない、物事が思うように進まなくて不満…。それ、実はあなたの一方的な思い込みのせいかも? 軽やかに視点を変えれば、打開するヒントが見つかります!
「今後、決められたことをやるだけの仕事はAIが担うでしょう。自分らしさを発揮するためにも思考力が大切です」と話すのは、ビジネスコンサルタントの細谷功さん。
「接客業ならお客さんを覚えて個別の対応をするなど、一見、定型的な仕事ほど個性が出ます。知識量や効率はAIに敵わなくても、状況に応じてアウトプットを変えるのは人間だけがなせる業です」
そのためには、どんな思考力を身につければいいのだろう?
「一つが、“見方を変える柔軟さ”です。誰しも無意識のうちに一方的、部分的な見方をしてしまっているのではないでしょうか」
“私は正しい”などと、自分の見ているものが全てだと思い込んでいる人は危険かも!?
次に紹介する3つの視点からのアプローチを実践して、柔軟なものの考え方を身につけよう。
相手の視点から考える
相手が間違っていると感じたとき、否定する前に見方を変えてみよう。なぜなら相手には、まったく違う世界が見えているかもしれないから。「相手の視点から考える」とは、その世界を知ろうとすることなのだ。
「すると、自ずと質問が出てくるはず。反対に『あの人が言っていることはおかしい』と決めつけてしまえば、出てくるのは怒りのみ。それではコミュニケーションが成立しませんよね」
立場を変えると、相手が何を求めているのかも分かってくる。
「立ち話をしていて『あの映画どうだった?』と聞かれたとき、長々と感想を語る前に、相手の質問意図を考えます。その映画を観ようか迷っているようなら『けっこう面白かったよ』などと、まず結論を答えればいい。『70点くらいかな』と点数で伝えるのも手っ取り早い方法です」
全体を俯瞰して考える
「木を見て森を見ず」と諺にもあるように、一部しか見ていないのに全てが見えていると勘違いしてしまうことがある。
「そもそも全体とは何か、定かでないことも多いはず。全体が見えたと思う=一部分しか見ていない、というわけです」
全体を俯瞰して考えるための方法は2つ。まず、自分を客観視すること。幽体離脱したようなイメージで自分を眺めてみると、どの部分にとらわれていたのか気づくことも。もう一つは「私が言う全体は、ここからここまでです」と範囲を示すこと。
「これは面接などでも応用できます。経歴を聞かれたら、時系列にダラダラと話すのではなく、『私はA社とB社に3年ずつ在籍したのですが、B社での○○の仕事について話します』などと最初に全体を示すと、聞く側も関心を持ちやすくなります」
目的から逆算して考える
言われたことを正確にやるだけなら、人間よりもAIやコンピューターのほうが得意。
「人間が考えるべきは、その先。言われていないことまで推し量って行動できれば、それが個性になるのではないでしょうか」
そのためには、“目的”を考えるのが近道。例えば、「これからミーティングをするからAさんとBさんとCさんに声をかけて」と頼まれたとき、それが何のための会議なのかを考えると、それならDさんにも声をかけたほうがいいかな? などと気を利かせることができる。
「もしくは、今の時点で会議をしても意味がないと気がついて、無駄を省けるかもしれません。ただ言われた通りのことをするよりも、何のためにやるのか? 工夫する余地はないか? と考えて行動するほうが楽しく、やりがいにも繋がります」
細谷 功さん ビジネスコンサルタント、著述家。『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)など著書多数。
※『anan』2018年2月14日号より。イラスト・原田桃子 取材、文・黒澤 彩
(by anan編集部)