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脱ぎたてのパンツを貸す!? 『文豪たちの友情』が面白い~

実在の日本の文豪や彼らの作品を、キャラクター化したマンガやゲームが巷で人気。そんな文豪たちの人となりや、作品の魅力を、友情というフィルターを介して浮かび上がらせた『文豪たちの友情』の著者が、石井千湖さんだ。

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取り上げた文豪たちの個人全集を、索引や月報にまで目を通し、自伝、随筆、書簡、日記、評伝などあまたの関連書籍も参考に。そこから掘り起こした文豪たちの友情のまぶしいこと。わくわくするような文学エッセイであり、日本の近代文学へのよきガイドにもなっている。

「文豪たちの生涯について、あるいは、文学史的には有名な、谷崎潤一郎と佐藤春夫の細君譲渡事件、太宰治が芥川賞に執着した話など、入門書に載っているくらいの情報は知っていましたが、もとになった文献に当たると、実はもっと複雑で…。一行情報ではわからないことがあるなと、あらためて思いましたね」

芥川龍之介と菊池寛、太宰治と坂口安吾など、13組の文豪たちの出会いから別れまでがまとめられている。

「彼らの関係を履歴書的に整理しつつ、バカバカしくも人間味がある小さなエピソードが好きなので、それは入れるように意識しました」

たとえば、文豪の中でも抜きんでて交友関係の広かった佐藤春夫が、芥川龍之介に脱ぎたての猿又(パンツ)を貸した話や、借金魔の石川啄木が、世話を焼いてくれた金田一京助の毛生え薬の秘密を小説に書いてしまい、ケンカした話。微笑ましい、文豪たちの知られざる一面だ。

「書いていると、ダメ人間と思っていた作家も、みな好きになりましたね(笑)。とにかく一生懸命生きていたんだなとわかりました」

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それにしても、文豪たちの友情はなぜこんなに面白いのか。

「距離感がおかしいんですよ。ライバルでもあるから互いに意識もするけれど、スポーツのライバル関係とも違う。一般的な友人関係よりずっとぶっちゃけ合っている。仲良くなるきっかけが、だいたい、“互いの作品を認め合った”ことなんですね。自分が好きで書いたものに共感して、『いいね!』と言ってくれた人はやっぱり特別なんだな、と。互いの文学の趣味も似ていることが多く、彼らにとって友と語り合うことはとても幸せだったでしょうね」

いしい・ちこ 1973年、佐賀県生まれ。早稲田大学卒業後、書店員を経て、書評家、ライターとして活躍。共著に『世界の8大文学賞』『きっとあなたは、あの本が好き。』(共に立東舎)がある。

文豪たちの仲睦まじい姿をイラストにしたのは鈴木次郎さんとミキワカコさん。各章に付いているミニ人物相関図も関係性を理解する一助に。立東舎 1500円

※『anan』2018年6月6日号より。写真・土佐麻理子(石井さん) 大嶋千尋(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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