巡りをよくして、カラダの基礎力をアップ! 免疫力を上げる“温活”に注目します。
日本人のカラダは冷えているって本当!?
婦人科医である松村圭子さんによると、女性の平熱は低下傾向。冷えによる不調を訴える人が増えているそう。
「約60年前の日本人の平熱は、36.9°Cあったといいます。それが今は36.4°C程度。患者さんの中には、低温期の基礎体温が35°C台という人もザラです。そもそも女性は、男性に比べて熱を作る筋肉の量が少ない。しかもコロナ禍による運動不足で筋肉量がさらに減り、冷える人が増えているのです」
一方、体温や温度感覚について研究をしている早稲田大学人間科学学術院教授・永島計さんによると、人間の体温は脳や内臓温度である深部体温と、その外側の被殻温度に分けて考えるべきで、下がっているのは被殻温度だそう。
「深部体温にはリズムがあり、一日の中で少しずつ変化します。一方、被殻温度は環境の温度や基礎代謝の影響を受けます。腋の下で測る平熱は主に深部体温を反映しますが、同時に被殻温度の影響も受けます。基礎代謝が下がっている人は被殻温度が下がり、平熱低下の原因になります。また、被殻温度の低下は冷えを感じさせて、ストレスにつながります。長期的な冷えは、うつなどの精神的な病気の一因になったりもします」
温活を心がけることで、カラダも心も温まる、ヘルシーな冬を目指そう!
冷えが美と健康を脅かすメカニズム
女性の間で増えているという冷え問題。冷えることのデメリットをおさらいして、温活へのモチベーションを高めよう。
1、カラダが冷えると肌も髪もクタクタに。
カラダが冷えるとまず影響を受けるのが血の巡り。熱を逃がすまいと毛細血管が収縮するので、肌や髪など末端への血流が滞る。
「血流が滞ると、水分や酸素、栄養素が、肌や髪を作る細胞に十分届かなくなります。すると、肌荒れしやすくなったり髪が薄くなるなど美容面で大ダメージが。秋冬になると、抜け毛が増えたと訴える人が増えますが、それはズバリ寒いからです。あと、巡りが悪いと血液から血管の外に水分がしみ出し、むくみが起こります。冬の朝、起きると顔がパンパンという人はこのケースかも。さらに、冷えると脂肪がつきやすくなるという説もあるんです。冷えは肌や髪、ボディラインのケアにとって大敵と心得て」(松村さん)
2、特に注意したい女子特有のお悩みも。
女性はカラダを冷やしちゃいけないという先人の教えには、きちんとした理由がある。
「女性の下半身は脂肪が多め。脂肪は内側の熱を守る断熱材ですが、内側が冷えたとき外から温めようとすると、断熱効果が邪魔になって温まりにくい。しかも、骨盤の内側にある子宮や腸が冷えると、婦人科系をはじめとする不調が発生しやすくなる。だから、カラダを冷やさないようにしていたんです。女性は月経周期によって体温が変化します。特に、月経中は冷えやすいので要注意。毎朝基礎体温を測って、体温の変化を把握しましょう。最近は、睡眠中自動的に基礎体温を測ってくれる便利なデバイスもあるので、ぜひ役立ててくださいね」(松村さん)
3、冷えれば免疫力にも危機到来!?
ウイルスや病原菌と戦う免疫細胞にとっても、冷えは大敵。
「免疫細胞は、血管やリンパ管を通って全身をパトロールしているので、冷えて血管が収縮するのは避けたいところ。また、毛細血管には老廃物を回収する働きもあります。ところが血管が収縮すると回収もうまくいかず、リンパ管がその役割を背負い負担が増します。すると今度はリンパ管が渋滞して、ここでも免疫細胞のパトロールがうまくいかなくなるのです」(医師、医学博士・根来秀行さん)
「体温と免疫の関係は謎な部分が多く、発熱が免疫力を高めるのかどうかも検証中です。ただ、体温が37°Cくらいになると全身の細胞が元気になるので、当然、免疫細胞も活性化されます」(永島さん)
4、温まれば自律神経も元気になる。
温活をするにあたってぜひ味方にしておきたいのが、自律神経。
「体温の中でも深部体温は、体内時計に従って変動します。そのコントロールをしているのが、自律神経と毛細血管。ところがストレスフルな現代人は、自律神経のバランスが乱れがち。すると体温の調整がうまくいかず睡眠の質が下がるため、さらに自律神経が疲れる悪循環に陥ってしまいます」(根来さん)
疲れた自律神経は、温活を通じて整えることができるそう。
「ゆっくり入浴する、のんびり散歩するなどの温活には、心とカラダをリラックスさせて副交感神経を優位にする効果があります。温活は、自律神経のバランスを整えるためにも有効ですよ」(根来さん)
松村圭子さん 婦人科医、成城松村クリニック院長。著書に『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店)ほか。
永島 計さん 早稲田大学人間科学学術院教授。『体温の「なぜ?」がわかる生理学―からだで感じる・考える・理解する―』(杏林書院)など著書多数。
根来秀行さん 医師、医学博士。ハーバード大学&ソルボンヌ大学医学部客員教授。近著に『負けないからだをつくる 新しい免疫力の教科書』(朝日新聞出版)。
ニット¥26,400 パンツ¥33,000(共にne Quittez pas/パサンド バイ ヌキテパ TEL:03・6427・9945) ソックス¥3,850(LABOUR AND WAIT TOKYO TEL:03・6804・6448) ストール¥62,700(Joshua Ellis/グリニッジ ショールーム TEL:03・5774・1662) シューズ¥13,200(UGG(R)/Deckers Japan TEL:0120・710・844)
※『anan』2021年12月22日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・白男川清美 ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ) モデル・宗馬さよ(NMT inc.) 取材、文・風間裕美子 撮影協力・AWABEES UTUWA
(by anan編集部)