“元年”だからこそ、心に留めておきたい、これからのこと。しいたけ.さんの「令和論」です。
恋愛のありかた
ここ最近、僕の周りで、同性愛カップルのほのぼのとした日常を描いたドラマ『きのう何食べた?』を見るとすごく癒される、という声をよく聞きます。確かにこの作品って、今の時代の恋愛観をすごく象徴しているような気がするんですよね。これまでの恋愛ドラマって、すれ違いがあって別れて、それでも忘れられなくて結婚式に殴り込んだり、誤解があってもそれを乗り越えてお互い成長していくみたいな展開が王道だったと思うんですけど、この作品ではそういったエネルギーの消費量が多いことが起こりません。
その他にも、今うけているコンテンツって、そこに成長や目標といった要素をはらまないものが多い気がしていて。今の時代、人はもう何かを乗り越えることがだるくなってきている気がするし、ある種、幸せって目標がないことだとも思うんです。だからこれからは、もう少し恋愛における“成長予算”を減らしてみてもいい気がします。例えば、一緒にいる理由を追求しないとか、ゴールを明らかにしないとか。ただ、なんとなく気が合うから一緒にいるみたいな、もっと感覚的なものを大事にしてみてください。何か大きな目標に向かって頑張ることって、仕事や社会に十分求められすぎているから、恋愛ではもうそこまで頑張れないし、もう少しゆるくなっても大丈夫。その時、“引退したらこうしたいね”みたいな価値観が一致する人と一緒にいるとうまくいく気がします。それに向かって頑張ることって、二人にとって何よりも健全な指針になっていくと思うから。
仕事との向き合いかた
仕事との向き合いかたを時代の流れで説明すると、まず昭和のキーワードは戦争。幸せになるためには犠牲がつきまとうものみたいな感覚があって、どれだけ残業をするかとか、どれだけ自分が犠牲になるかみたいなところが重要視されていました。続く平成は、誰かのために自分が犠牲になるのではなく、ようやく自分のために仕事を楽しめるようになってきた時代。アスリートやオリンピック選手が大きな大会に出て、インタビューで“楽しみたい”と発言していたのが、まさに平成の働き方の象徴だったように思います。そして令和は、人生をより楽しみたいという感覚がもっと加速して、週4で会社勤めをして週3で農業をやるみたいな、“インターン気分”がキーワードになってきます。
これまで、何を仕事として選んでいくかとか、どこの会社に入るかとか、1人1つの選択を迫られていたものが、ネットワークや通信の発達によって、誰でも2つ以上の選択肢を持っていくことが可能な時代になって。それこそ、先ほども少しお話ししたように、個人のフリーランス化が進んで、何かの組織に属さない人も増えてくるでしょうし、趣味が仕事になって、本業の他に副業を持つようになったり。あるいは、30代まで商社でバリバリ働いていた人が、40代で農業に転向して、50代になったらまた商社に戻ってくるというようなことも可能になっていくかもしれません。一つの場所で一生働くという今までの常識を超え、人生の中で2つ以上の選択も可能になっていく時代になりそうです。
しいたけ.さん 占い師。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究するかたわら占いを学問として勉強。『anan特別編集 しいたけ.カラー心理学2019春・夏編』(小社刊)が発売中。
※『anan』2019年6月19日号より。監修・しいたけ. イラスト・100%ORANGE 取材、文・菅野綾子
(by anan編集部)