集中して考えているつもりでも、モヤモヤして思考がクリアにならないことも。そんなときに役立つのが、描きながら考える「デザイン発想法」。久しぶりに、色鉛筆を手にしてみませんか。
最後に絵を描いたのは、何年前だろう? ほとんどの大人は遠ざかっていそうだが、なんと、自由に絵を描くことが思考をまとめるトレーニングになるというのだ。
「考える=言語化することと決めつけがちですが、人間は何万年も前から自然を絵に描いて認識してきました。象形文字も、絵を簡略化して生まれたもの。人の思考はもともと、ビジュアルと深く結びついているのだと思います」 と話すのは、九州大学大学院教授の井上滋樹さん。井上さんは絵や図を描きながら考える「デザイン発想法」を提案している。
「言葉や既成概念を取り払って絵に描くことで、自分の考えがクリアに浮かび上がってくるのです」
例に挙げた4つのワークは、自分が好きなものを知って、なりたい自分をイメージし、未来に向けてのアクションにつなげるもの。
「人に見せるのではなく、自分で考えを可視化するもの。下手でも気にせず描いてみましょう」
モヤモヤしたとき手を動かしてみると…。
【誰かとイメージを共有できる!】
たくさんの言葉を費やして説明するよりも、イラストを見せるほうがずっと伝わりやすいケースがある。「たとえば、人の顔。丸顔で、目がわりと大きくて…と言っても、各自が思い浮かべる顔はぼんやりしているうえにバラバラなはず。あまり上手ではなくても、絵ならば確実に特徴やイメージを共有できます」
【思いがけないアイデアが生まれる!】
「二言三言で説明できてしまうものも、絵に描くとなるとより詳細に、具体的に詰めざるを得ません。そこがミソです」。細部を描き込んだり、一つの絵からその周りにまで広げて描き進めていくと、最初の狙いとは違う方向のアイデアに行き着くことも。自分の奥底にある、意識していなかった考えが引き出される。
【自分の考えをすっきり整理できる!】
頭の中でいくら考えても、パソコンで書き連ねても、モヤモヤとして考えが散らかっているときには手描きが有効。「完成形を決めず、思いの向くままに手を動かしながら考えます。きれいに描かなくていいし、何度も消したり描いたりしてもいいので、描きながら思考がクリアになる感覚を掴むのがポイントです」
【発想のプロセスを効率化できる!】
描きながら考える方法が身についたら、トレーニングを積むほどに、アイデアが生まれてまとまるまでの時間を短縮できるはず。「アイデアを練るときや打ち合わせをするときには、必ず白い紙を手元に置いておくといいでしょう。これは、デザイナーやクリエイティブな職種の人が取り入れている方法でもあります」
井上滋樹さん 九州大学大学院芸術工学研究院教授、アートディレクター。著書に『いい考えがやってくる!』(日本経済新聞出版社)など。http://inoueshigeki.com/
※『anan』2018年2月14日号より。イラスト・鬼頭 祈 取材、文・黒澤 彩
(by anan編集部)