日本ポップス界の女王、ユーミンこと松任谷由実さん。10代で荒井由実としてデビューして以来、音楽シーンを牽引し、新しいユーミンを見せ続けてくれる。その変わらぬ道の拓き方とは。
「楽せず、苦労せず。適度な負荷を自分にかけ続けることかな」
順風満帆に見えていたユーミンにも、実はスランプがあった。
「22歳で結婚して活動休止。その後、レコード売り上げがどーんと落ち、コンサート会場にお客さんが半分、という時代がありました。自分でも信じられなかった。でもそこで下を見ず、会場をいっぱいにする努力をしないと、この先のキャリアがないなと思いました」
この時のブレイクスルーには、いわく「自分史上最大のカロリーを消費した」そう。
「他人へ楽曲を提供したり、かなりたくさんの仕事をしました。しかもクオリティを落とさないためにと、かける意気込みも相当で。今思えばそこは人生のプラットフォーム。次に伸びるために力を溜め、その先を信じて力を抜かない、諦めない時期だったと思います」
その一方で、意識せず道を切り拓く、天性の性分的なところも。
「小さい頃からあった好奇心こそが、新しいものを見つける原動力かな。あそこに面白そうなお店がある。面白そうな人がいる。飛び込んでみたら居心地がいい。試してみたら美味しい、面白いと人に言いたくなる。それが業界に噂としてヒタヒタと広がり、ブームになる。そんな感じでした(笑)」
常に流行の発信者だったユーミン。さまざまな出会いをきっかけに、波に乗るように自分を高めてもいたようだ。
そんなユーミンがデビュー45周年を記念して発売する3枚組のベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』では、自身が今の時代に聴いてほしい45曲を、伝えたい3つのテーマに分け選曲。
「そのうちのひとつが、〈旅を、やめない。〉。これは自分をバージョンアップさせるのにぴったりな言葉だと思う」
ユーミンの旅好きは有名。そこで得たインスピレーションを基に、数々の名曲を生み出している。
「旅に出て、今まで知らなかったことに出合うと、私は3日目ぐらいに知恵熱が出るんです。原因不明の高熱が。とくに僻地に行くと、そうなりがち。熱が下がった後はその土地のモードになって、また旅が楽しめる。そして都会に戻ってくると、まるでデトックスされたように頭がクリアに、いい人になって、旅で得た情報や吸収したものを着々と整理して、前に進めるんです。熱で漂白されるような時間が、純粋な自分を連れ戻してくれるのかな。これがもうひとつのテーマ〈純粋さを、捨てない。〉という気持ちにつながりますね」
そして最後のキーワード〈“私”で、生きてゆく。〉。
「最近は旅より人に会って“気付かされる”ことが多いんです。先日、嵐の番組に出て清水ミチコさんに会ったんだけど、昔の私は清水さんがする私の真似を『なぜ彼女は私の気に入らない部分をデフォルメするのかなあ』と思っていたんです。それがいつの頃か『清水さんの真似、すごい』に変わり、尊敬し、彼女が真似している私のことも好きになっていた。それって好きな自分も嫌いな自分も、私自身が受け入れたってこと。自分のことを好きになれば、きっと他人のことも好きになる。誰もが嫌いな人っていると思うけど、それは自分の嫌いな部分を投影して見えるから、なんですよ」
自分の気持ちひとつで幸せがつかめる。これぞ、ユーミン流の究極の道の拓き方。
まつとうや・ゆみ 45周年記念ベストアルバム『ユーミンからの、恋のうた。』(ユニバーサルミュージック)が好評発売中。9月より、全国アリーナにてタイムマシンツアーを開催する。http://yuming.co.jp/
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※『anan』2018年4月25日号より。写真・下村一喜 スタイリスト・槇原亜加音 ヘア&メイク・遠山直樹(イリス) 取材、文・今井 恵
(by anan編集部)
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