高見綾(心理カウンセラー)
何かにつけて他人に容赦のない言葉をぶつけたり、威圧的な態度を取ったりなど「攻撃的な人」っていますよね。ではそうした攻撃的な人は、なぜそのような態度を取るのでしょうか? 攻撃的な人の特徴と心理。また上手に付き合う方法について、心理カウンセラーの高見綾さんに聞きました。
■原因はある? 攻撃的な人の特徴と心理
はじめに攻撃的な人の特徴や心理について説明します。なぜ攻撃的になるのかを理解しておけば、攻撃的な人の対処法が取り入れやすくなるでしょう。
◇攻撃的な人の特徴
攻撃的な人は、勝ち負けにこだわり、常に自分が優位に立ちたい、自分の立場を守りたいという願望を持っています。そのため、あいさつをしてもあからさまに無視をする、わざと聞こえるように嫌味を言ってくる、仕事でしつこくダメ出しをするなど、相手を落とすような行動を取るのが特徴。たとえば自分の後輩が実力をつけたと感じたなら、途端に攻撃して足を引っ張ろうとします。プライベートや仕事でストレスがたまっている場合に、誰か自信のなさそうな人をターゲットにして攻撃し、ストレスを発散させるケースもありますね。
また、こちらに思い当たる節はなくとも、陰で悪いうわさを流したりもします。これは「被害者意識」の強いタイプに多く、こちらが何気なく言ったことでも「私のことをばかにした」と捉え、その仕返しとして陰で悪口を言いふらすのです。こうした人は「ばかにされたくない」と強く思いすぎており、心休まることなく常にファイティングポーズを取っています。その結果、他者の言動の受け取り方や認識が歪んでおり、自分に発せられた言葉を悪く捉える癖があるのです。
◇攻撃的な人の心理
攻撃的な人は、総じて自信がなく不安でいっぱいです。「弱い自分」「ダメな自分」を嫌っており、受け入れることができません。自分が人に受け入れてもらえるという発想も湧かず、「あなたはダメだ」「あなたは仕事ができない」と批判されることを極端に恐れているのです。そのため、批判から自分を守るために他人を先制攻撃します。他人を攻撃している間は、自分が批判されることはないからです。誰かを批判して蹴落とすことができれば、自分の居場所が確保でき、他人より優位なポジションに立てると思い込んでいるのです。
◇攻撃的になる原因とは
子どものころ、両親からダメ出しばかりをされていて、ありのままの自分を受け入れてもらえる環境ではなかった場合が考えられます。その場合は健全な自信が育たず、自分自身を認めることができなくなってしまうのです。
また、親が攻撃的な人だったり、プロセスよりも結果や勝ち負けですべてを判断したりする人だったケースでも攻撃的な性格になることがあります。心休まる環境がないために、「戦わないと攻撃される」と思い込んでしまうからです。
家庭環境は大きな要因ではありますが、すべてではありません。後天的な環境や本人の性質も関係しています。自信が持てなくても、「自分を認めよう」と自分を受け入れることができればいいのですが、それができない場合は攻撃的な人になってしまうのです。
■攻撃的な人との上手な付き合い方とは
それでは、他者に非常に厳しい攻撃的な人とうまく付き合うには、どんなことを意識すればいいのでしょうか。その対処法を説明します。また、もし自分が攻撃的であるという認識があるならどうすればいいのかも、あわせて紹介しますので、気になる人は参考にしてみてくださいね。
◇攻撃的な人とどう付き合っていけばいいの?
攻撃的な人に対しては「かかわらないこと」が一番です。ただし、仕事上付き合わないといけない人など、どうしてもかかわらないといけない場合はそう簡単ではないですよね。
攻撃的な人は、誰かれかまわず攻撃するのではなく、実は攻撃する相手を選んでいます。自分より弱いと思う人や、仕返ししてこないような人、攻撃することで自信や自己価値が揺らぎそうな人がターゲットにされやすくなります。そのため、攻撃された際に感情的に反応すると、余計に攻撃されてしまうので注意が必要です。攻撃してくる人にはなるべく堂々と接し、過剰に反応しないようにしましょう。
しかし、理不尽なことがあれば、「それはおかしいと思う」と論理的に反論してみるのもいいでしょう。あとは周囲との人間関係を良好に保つことも大切です。まわりに味方がいない人はターゲットになりやすいので、日ごろからまわりの人と仲よくしておき、「この人を攻撃すると私の立場が危なくなるな」と思わせることが有効です。
◇【番外編】自分の攻撃的な性格を直すには
「攻撃的な性格を直したい」と、本人が強く意識することができれば、変えることは可能です。そのためには、自分自身と向き合うことが必要です。まず「攻撃的な性格になっているのは自分を守るため」だと自覚することが必要です
過去にたくさん傷ついたことがあったかもしれませんし、人から理解してもらえないと苦しんだことがあるのかもしれません。「これ以上傷つくくらいなら、他人を攻撃して遠ざけてしまったほうがいい」と考えていないか疑ってみましょう。他人を攻撃するときは、その前に自分のことをたくさん攻撃しているものです。他人を攻撃している間は、自分のことに目を向けなくてすみますから、その分だけ少し楽になるのです。
もし攻撃的な心境になってしまったら、「自分は何を恐れているんだろう?」と振り返って、心の中を整理してみましょう。自分の弱い部分もダメな部分も、すべてひっくるめて受け入れようと思ってみてください。「他人から批判されるのでは?」と恐れているときは、自らも自分を批判しています。その気持ちに気づくことができると、少しずつ攻撃的な性格は変わってくるでしょう。
■攻撃的な人の心理を理解して上手に付き合おう
攻撃的な人は、自信のなさや不安な感情から、そのような言動をしてしまいます。家庭環境や後天的なことが原因で、他者の言動の受け取り方や認識が歪んでいるため、そうした人と付き合っていくのは簡単ではありません。もしまわりに攻撃的な人がいるのならば、できるだけ「かかわらないこと」が重要。もしどうしても付き合わないといけないのなら、相手の心理を理解して、ターゲットにされないような振る舞いを心がけましょう。
(文:高見綾、構成:中田ボンベ/dcp)
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