スッキリしない日が続いています。気温もぐっと低くなり、疲労やむくみ、だるさを感じている人も多いのではないでしょうか。そこで、漢方薬剤師の大久保愛先生が、この時期気になる「むくみやだるさ」を取る簡単な方法を教えてくれます。カラダを動かすのが面倒な人は特に必見、ラクして水分代謝を高めましょう!
最近、むくみやだるさを感じていませんか?
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 124
暑い日が続いたと思ったら、秋雨前線が訪れ急に冷え込みはじめましたよね。こうやって今年も暑い日と涼しい日を繰り返しながら、夏は徐々に終盤にむかっていきます。
さて突然ですが、最近むくみを感じませんか? 体が重力に負けている感じでダルさを感じたり、足首がちょっと太くなったりと、いつのまにかむくんでいることがあるかもしれません。
停滞前線の影響でお天気が崩れ、私たちの体はむくみやすくなります。体は気候の影響を受けるものなので仕方のないことですが、特に夏に不摂生を積み上げてきた人は、顕著に表れてしまいます。
むくみのほかにも低気圧のたびに、頭痛、めまい、関節の痛み、鼻炎ぎみになるなどの変化を感じる人も増えているかもしれません。漢方でいうと余分にお水が体に滞っている状態の人に多い傾向があります。ということで、今週は低気圧によるむくみを解消する食薬習慣を紹介します。
今週は、むくみ対策のための食薬習慣
気候がスッキリとしなくなる、毎年恒例の秋雨前線がやってきています。すると体に起こるのは、自律神経の乱れです。これにより心も体もちょっとスッキリしないと感じる方も増えてくるのではないでしょうか。
実は、このスッキリしない気分や体のむくみは体に老廃物をため込んでいる人が感じ易いとされています。漢方ではこの状態を『痰湿困脾』といいます。夏の間、冷たいものを食べ過ぎたり、飲みすぎたり、体を冷やしすぎたり、体を動かさなくなってしまったりと代謝を低下させてしまっていた人は、そろそろ夏の疲れが溜まり始めます。
おそらく、体がむくみダルさを感じている人は、運動はしたくないと思うので、まずは食薬をとりいれていくことから始めるのがおすすめです。体の中の老廃物を排泄する方法のひとつとして、腸内細菌にその仕事をアウトソースする方法があります。
善玉菌の働きにより短鎖脂肪酸を増やしてもらうと、それによって腸が動き、老廃物の排泄が促されたり、肝臓や腎臓、筋肉などのエネルギー源となったり、免疫の強化にも働きます。ですから、むくんでダルいときには、自分に気合いをいれるのではなく、腸内細菌に頑張ってもらうように食事を変化させると楽をすることができます。
そこで、今週は『痰湿』を取り除く食材を取り入れることがおすすめです。食べるとよい食材・メニューは、【カブとワカメの味噌汁】です。
食薬ごはん【今週食べるとよい食材・メニュー:カブとワカメの味噌汁】
カブとワカメの味噌汁を飲んでみましょう。作り方は、ご家庭のお味噌汁の具材をカブとワカメにするだけです。発酵調味料のお味噌とともにお腹の中から温めて水分代謝をあげていきたいですね。
【ワカメ】
水溶性食物繊維を多く含むワカメは、大腸で善玉菌の働きにより短鎖脂肪酸を増やします。これにより、夏にため込んだ老廃物の排泄がスムーズになります。特に発酵食品であるお味噌と合わせて食べることは腸にとってベストなので、この季節のお味噌汁にはワカメを頻繁に使うのがおすすめです。
【カブ】
カブには、消化を助けるジアスターゼが含まれています。とくにカブの皮に多く含まれているので、なるべく皮をむかずにまるごと食べましょう。 また、カブの葉も栄養価が高い食材です。抗酸化作用のあるβカロテンは、根の部分に比べると2800倍も含まれています。さらに、このβカロテンは茹でることで1・2倍にアップするので、スープや味噌汁に入れて食べるのがおすすめです。ほかにも余分な水分を排泄するカリウムや、ビタミンB群、ビタミンCなどの栄養が含まれています。
ちょっとした不調を感じたときには、いつも食べるお味噌汁に食薬となる具材をいれてしまうのが簡単ですね。腸の働きを整えることは、不調の改善としてマストなので、発酵調味料を使ったお味噌汁の活用をしていきましょう。体力がないときには豚汁、便秘がひどい時には切り干し大根、冷える時には生姜のように具材を工夫して体調管理にお役立てくださいね。ほかにも疲労回復のレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方がぜひご覧ください。
※食薬とは…
漢方医学で人は自然の一部であり、自然の変化は体調に影響を与えると考えられています。気温や湿度、気圧の変化だけではなく、太陽や月の動きまでもが体に影響を与えています。学生の頃、太陽暦や太陰暦を学んだことを覚えていませんか? 一月の日数や季節などは太陽や月の動きから決められていたことはご存知のかたは多いと思います。
月や太陽は、地球との位置により引力が変わり、地球では潮の満ち引きが起こります。地球の約七割が水分と言われていますが、同様に人の体も約七割が水分と言われています。そう考えると、人間も月や太陽の影響を受けることは想像しやすいことだと思います。中国最古の医学書である皇帝内経(こうていだいけい)にも、月が体調に影響を与えることは記されています。
つまり、気温、湿度、気圧、太陽、月の変化とさまざまなものを指標にすることにより、より正確に体調管理をすることができます。この体調管理に食事内容を役立てることを『食薬』と呼びます。
Information
大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典(KADOKAWA)』、近著に「不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖(世界文化社)」がある。
公式LINEアカウント@aika
『1週間に一つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー)。