冷えやむくみの原因は毛細血管だった!? 簡単バスマッサージで血管ケアを!
ガブ飲みと夜更かしは血流がフリーズする第一歩!?
「靴下のゴムの痕がしばらく残る、疲れやすくてダルさが取れない、といった症状は血流が低下していることが原因です。言い換えると血管のゴースト化が進んでいますね」
ゴースト血管の名付け親で20年もの間、血管の研究を続ける大阪大学微生物病研究所の髙倉伸幸さんは、冷えの根本には毛細血管の機能不全があると言う。
「人が住まなくなった街をゴーストタウンと呼ぶように、形はあっても機能していない血管を“ゴースト血管”と名付けました。心臓から送り出された血液は動脈を通じて毛細血管へと渡ります。毛細血管は全身にある37兆個の細胞に酸素や栄養素を運び、CO2や老廃物を回収します。さらにはホルモンを届けて、体温を一定に保つ役割も担っています。毛細血管の直径はわずか100分の1mm。髪の毛のおよそ10分の1です。とても繊細ゆえに習慣や加齢によってダメージを受けるのですが、破壊されても、毛細血管には神経は届いていないので痛みは感じない。冷えなどの自覚症状が出た頃にはすでに血管は空洞化しています。ちなみに心身への負担が大きい生活を続けていると20代でもゴースト化は起こるんですよ」
ただ、壊れてもリカバーは可能。
「半身浴でカラダを芯から温めて、血流を促しましょう。そうすると、毛細血管はよみがえりますよ」
冷えの原因はゴースト血管だった!
ゴースト血管
毛細血管の一本が停止すると熱の伝達も遮断され、冷えていく。
健康な血管
矢印が示す範囲に酸素や栄養素を運搬し、老廃物も回収する。
毛細血管に良くない生活習慣
NG:一気飲み・一気食い
ビールをグビッと一杯。砂糖入りのスポーツドリンクやフルーツジュースを勢いよく飲み干す。なにげない行為がダメージをもたらす。「胃から小腸を経て急に糖分が毛細血管へと入ってくるため、一過性高血糖の状態になります。血糖値が急上昇するため血管を傷付けてしまうのです。さらには余分に摂取したブドウ糖は体内のタンパク質と結びついて、細胞を劣化させます。血管がうまく機能しない要因にもなるので注意が必要です」
NG:睡眠不足
少しぐらい寝なくても大丈夫と思い込んでいるのは気持ちだけで、カラダは悲鳴を上げている。「眠っている間に分泌する成長ホルモンが毛細血管の修復と再生をし、新陳代謝を活性化します。リカバリーの機会を失ったまま翌日を迎えてしまうと、血管自体も疲弊しやすくなるので、必ず6時間以上は眠りましょう。ぐっすり眠るためには、生体リズムを司る体内時計を整えることも大事。規則正しい生活を心がけましょう」
毛細血管に効果的な入浴方法
ココロとカラダをゆるめるためにじっくりとバスタブに浸かろう。
気軽に取り組める「温活」の代表格である入浴には、血管力を高めるポイントがあった。
「リラックスすることが重要なので、少し長めに浸かって休息モードへと切り替える半身浴がおすすめ。全身浴は水圧がかかるため、心臓への負荷が大きいといわれています。湯船で過ごす時間をゆっくりとりたい場合は、お湯は少なめにしたほうがいいんです」
のんびり過ごすことで得られる効果は多い。
「毛細血管をはじめ、血管は自律神経の影響も受けています。ココロを穏やかにする副交感神経が優位になると、体内では毛細血管とその上流にあたる細動脈の境にある前毛細血管括約筋がゆるみます。すると、毛細血管にも血液が流れ始める。全身の巡りが整うことで、ゴースト血管も復活します。人によってほぐれる時間に差はありますが、10分以上でよいでしょう。20分以上浸かる場合は水分補給を忘れずに。脱水症状に陥ると、血液成分が濃くなり、流れが滞ってしまいます」
湯の温度も重要である、と髙倉さん。
「40°C前後のぬるめのお湯がいいですね。温度が高いと交感神経を刺激されて、アクティブモードのスイッチが入る可能性もあります」
これってどうなの!? 毛細血管Q&A
Q.サウナには血管を広げるイメージがあります。実際のところは?
Answer:緩急のバランスをとりながら整えていくと毛細血管力もアップ。
「室温が80~100°Cという高温のサウナに入ると、必然的に体温は上がります。そのため毛細血管も拡張されます。ただ、知らぬ間に交感神経が高まりやすいので、自身がリラックスモードになれる状態を意識しながら過ごしましょう。少しでも巡りを良くしようと、熱いのを我慢してまでこもるのは控えて。血管を傷付ける可能性もあります」
Q.お風呂上がりや入浴中の飲みものは冷たいお水でもいい?
Answer:温めた内臓を冷やさないために常温水か白湯がベター。
「入浴によってじんわりと汗をかいた体内では、100~200mlの水分が失われています。入浴前後で同量の常温水もしくは白湯を飲みましょう。ただ、もしキンと冷えているほうが癒されるのであれば、そちらを優先してください。けれど糖質を含むものはNG。素早く吸収してしまうので、一過性高血糖を招きかねません」
Q.入浴剤やしょうが風呂、ゆず風呂って血流に影響はありますか?
Answer:心が落ち着くアロマは緊張をほぐす作用が高い。
「森林やラベンダーといったボタニカルな香りは癒し効果が高いです。お風呂の中でもお休みスイッチをオンにするきっかけとして、有効だとされています。古くから伝わるジンジャーは内臓を温めることで巡りを整えて、ゆず風呂はリモネンやシトラールの香りによって血流を促すといわれていますよ」。また、炭酸には血管を広げる効果あり。
髙倉伸幸さん 大阪大学微生物病研究所情報伝達分野教授。組織再生やがん組織における血管研究が専門。著書は『ゴースト血管をつくらない33 のメソッド』(毎日新聞出版)ほか。
※『anan』2021年12月22日号より。イラスト・かざまりさ 取材、文・松岡真子