不眠、風邪気味、手足が冷たい…。お悩みのシチュエーション別に、冷えによく効くツボを厳選。一日の終わりにもおすすめです。
冷えを感じたらひと押し! 手のひらで覆ってもOK。
養生や薬膳と同じく中医学をもとに日本で発展し、長い歴史があるのがツボ押し療法。
「中医学では、気、つまりエネルギーの通り道である経絡が全身を走っていると考え、ツボはその気の出入り口に当たります。気や血、水が溜まりやすい場所でもあるので、そこを刺激することで巡りを良くし、不調を防ぎます」
とは、鍼灸師・田中友也さん。全身の循環を良くするツボ押しは、温活にはぴったりのメソッドだという。無数にあるツボの中から、とくに知っておくとよいものを教わった。
「全身の冷えに効くのは体幹部にある関元(かんげん)や命門(めいもん)。風邪には首の裏の、大椎(だいつい)などのツボが有効です。末端の冷えや、冷えによる不眠には、八邪(はちじゃ)や八風(はっぷう)、三陰交(さんいんこう)など、手足のツボを利用しましょう」
それぞれのツボの位置は一応細かく決められているけれど、
「押して冷たく感じるところは、そこが冷えていたり弱っていたりすることが多いんです。難しく考えず、紹介したツボの周辺を中心に、あちこち触れて効きそうなところを探してみてください」
ツボの周辺を手のひらで覆うだけでも、温め効果があるそう。
「息を吸い、その2倍の時間をかけながらゆっくりと息を吐く呼吸法もあわせて行うとさらに巡りが良くなり、効果的です。指や道具で押すだけと簡単で、誰でもできるのがツボ押しのいいところ、ぜひ日々の習慣にしてください」
全身をすぐ温めたい
冷えが強い人がまず温めるべきは、おへその下にある“関元”。
「ここは“丹田”とも呼ばれる場所で、体の中でもとくにエネルギーの多くが集まるところです。さらに、この関元とセットで刺激したいのが、おへその裏側にある“腎兪(じんゆ)”と“命門”。腎兪は、熱を生み出す源である腎を養うツボで、命門は寒さが入り込みやすい場所です。指先で押し、さらに両手でお腹をサンドイッチするように3つのツボを温めて、熱を全身に巡らせましょう」
腎兪は骨盤のすぐ上、背骨から指2本分外側の、ウエストライン上にあるツボ。命門はおへそのちょうど裏側の、背骨の真ん中にある。
おへそから指4本分下がったところの、いわゆる丹田に当たる場所。両手の4本の指先を重ねて当てて押すとよい。寝ながら刺激しても。
POINT 下腹部と腰に手のひらを当てて、お腹をサンドイッチ。3つのツボを効率よく温めることで、全身ぽかぽかに。お腹と背中にカイロを貼ってももちろんOK。
なんだか風邪っぽい
「ぞくぞくと寒けがする時は、風邪の邪気、風邪(ふうじゃ)が体に入り込もうとしているサイン。侵入口である、肩甲骨の間にある“風門(ふうもん)”と、首の付け根にあって風邪を分散させる働きのある“大椎”を刺激し、風邪を追い出します。指で押すのが難しい場所なので、道具を使うか、ドライヤーで温めるのがおすすめ。風邪が入り込まないよう、普段からマフラーやタートルネックのニットなどで首まわりを守り、大椎と風門のツボを冷やさないことも大事です」
大椎は、首を前に倒した時に飛び出る骨のすぐ下。風門は肩甲骨の間、大椎から骨の山2個分下がったところから、親指1本半分外側の左右にある。
POINT 手が届きにくい首と背中のツボには、ドライヤーの風を当てるのが簡単。やけどに気をつけながら、じんわりと温めて。入浴時に熱めのシャワーを当てても。
冷えて眠れない
「ストレスが原因で、頭に気血が集まってしまった状態と考えられます。下半身に気血を巡らせ、温めるツボを使いましょう。足の裏にある“湧泉(ゆうせん)”は、全身の気の循環を良くするツボ。かかとの、気持ちを静めるツボ“失眠(しつみん)”と一緒に刺激します。ゴルフボールや青竹などを使うと手軽です。さらに、冷えや月経前のイライラなど、女性特有のあらゆる悩みに対応する“三陰交”もぜひ。どのツボも、深呼吸しながら押すと効果的です」
湧泉は、足の指を折り曲げた時に最も凹むところ。腎の経絡が始まる場所で、エネルギーが湧き出すことからこの名が。失眠はかかとのちょうど真ん中。
内くるぶしの上から指4本分上がったところ。腎と、血や情緒と関係する肝、胃腸を司る脾の、3つの経絡が交わる。非常に大事な場所なので、常に冷やさずに。
POINT 湧泉や失眠は、ゴルフボールを足裏でゴロゴロして刺激するほか、青竹があれば使うと簡単。3つのツボをまとめて温められる、足湯もおすすめ。