©倉本ゴリ<Pygmy company>
子育てを通して、今まで以上にお金の大事さを実感するようになったけど、お金の使い方や貯め方なんて学校では教えてくれなかったし、みんなはどうしているの……? そんなママたちの悩みにこたえるべく、元外資系金融会社勤務、現在は企業の取締役をされているVERYモデル・申真衣(しんまい)さんに、毎月読者から寄せられたお金に関する質問に答えてもらうコラム連載。第10回は「値上げ」がテーマです。(過去の連載は
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【第10回】今月の質問
スーパーでレシートの合計額にびっくり。ランチやウーバーも「こんな値段だっけ?」と思うことも。じわじわと値上げが続いていて不安です。
ここ最近、「久々に大物買いしようと思ったら、思ったより高くて驚いた」という話をよく聞くようになりました。これまで日本では20年もデフレの時代が続いていましたが、ここへきてじわりとインフレが進んでいます。ブランド品だけでなく、光熱費や食料品など、さまざまなものが値上がりしました。これは日本が海外の生産に頼って生活してきたことが露呈している状況です。輸入物価はもっと上がっていますが、企業努力で値上げはゆっくり進みます。生活必需品の値上げはまだ始まったばかりだと感じています。
でも「値上げが不安」と思ってしまう前に、その裏にはどんな事情があるのか、またそれを受けてどんなことを見直せるかを考えてみるといいかもしれません。
電気、ガス、ガソリンの値上がりにはウクライナ情勢ももちろん影響しています。もともとコロナショックからの回復で原油価格が高騰していましたが、原油や天然ガスの大輸出国であるロシアがウクライナに侵攻したことで、事態はさらに悪化しました。欧米に続き、日本もロシア産石油、石炭の原則輸入禁止を発表。今後は天然ガスなども輸入禁止となる可能性が高そうです。
光熱費のように大幅に値上がりしているものが出てきている中で、消費者物価指数自体の上昇が限定的なのは、通信費がここ数年で大幅に下がっているからです。数年、プランを見直してない方はこの機会に見直してみるといいかもしれません。
撮影/福本和洋
電化製品の買い替えは早めの決断を
中国のロックダウンも、私たちの生活に影響しています。中国政府はコロナ対策の強化として、2022年3月末から上海をはじめとした複数の都市でのロックダウンを始めました(※取材は5月中旬)。工場での生産が止まってしまったので部品の調達ができず、電化製品が品薄になっています。そのため、今後は値上がりも予想されます。もし近いうちに洗濯機などの大型の家電を買い替える予定があるのなら、早めに買うことをおすすめします。
物価と同じように給与も上がればいいですが、そう簡単にはいかなそうです。価格転嫁が難しいので、今後は企業の収益が厳しくなる可能性があります。そうなると従業員に還元することはできません。個人でできる値上げへの自衛として、輸入品をたくさん消費している人は資産の一部を外貨建てにしておくという手もあります。私も資産の一部はドルで持つようにしています。
ブランド品に関しては、もしほしいものがあって悩んでいるのであれば、そのブランドの株を買ってみても面白いかもしれません。ラグジュアリーブランドの一部は上場しています。今100万円のバッグが数年後に120万円に値上がりしていたとしても、その場合は自分が持っている株も一緒に上がっていて、値上がりの痛みを感じずにじっくり考えて買うことができた、ということが起きるかもしれません。
「食品ロス」を減らせば家計や環境改善につながる
撮影/倉本ゴリ〈Pygmy company〉
エネルギーや家電、ブランド品に比べれば値上げ幅は少ないかもしれませんが、家族がいると食料品の値上げも打撃になりますよね。できればこの機会に「本当に食べるのかどうか」を考えてから買うようにしてみるのはいかがでしょうか。
というのも、実は日本は食品の廃棄率がとても高いのです。まだ食べられる食材を廃棄することを「食品ロス」と言いますが、その量はなんと1年間に東京ドーム5個分。1日に一人あたりお茶わん1杯分のご飯をそのまま捨てているという計算になるそうです。輸入に頼っている日本がこれだけの量を捨てているのは、世界の食糧不足の一因にもなっているということ。さらに残飯を燃やすことで二酸化炭素も排出され、環境にも負荷がかかっています。
気づけば食べきれない量の食材を買って腐らせてしまったり、レストランで注文しすぎて残しているようなことはないでしょうか? こうしたことから見直していけば、家計も改善する上に地球環境にもいい影響を及ぼすかもしれません。
スーパーマーケットは子どもがモノの価格を学ぶ絶好の場所でもあります。玉ねぎが値上がりしているというニュースもありましたが、なぜ高くなったのかを親子で話し合っても勉強になると思います。また、じわじわと値上げが進んでいても、野菜や果物はやはり旬になると少し安く出回るようになります。わが家も「イチゴはもう少し経つと旬だから、ちょっと安くなるよ」などと教えながら買い物をしています。買い物の中身を見直しながら、子どもが価格について考える機会につなげられるといいですね。
取材・文/樋口可奈子