「うちの子、声をかけないと学校からの手紙を出さないんです」、「洗濯物は部屋にいつも置きっぱなしで……」と悩みながらも、結局お子さんに手をかけていませんか? 『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』の著者で現役の小学校の先生である庄子寛之先生は、かけるべきことは手ではなく、「目」と「愛」といいます。そして親が子どものためよりも、自分のためを意識して行動したほうがいいとのこと。庄子先生に詳しくお話を伺ってみましょう。
お話を伺ったのは……庄子寛之先生
東京都公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学科を修了。学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。また、元女子ラクロス日本代表監督でもある。『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』 (青春出版社)など著書も多数。
『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』
著者:庄子寛之
価格:1,628円(税込)
最近多い保護者の悩みは「叱りすぎてしまう」
――まずは公立小学校の担任もされている先生が感じる親子関係の悩みについてお伺いしたいと思います。最近はどんなことで悩んでいる親御さんが多いのでしょうか?
庄子寛之先生(以下、庄子先生):圧倒的に多いのは「叱りすぎてしまう」という悩みですね。そして、叱りすぎてしまう自分が嫌になる、わが子のことなのに理解することができないという方が多いように思います。親として自分が未熟だから……とご自身を責めてしまう方もいるので心配です。また少数派ではありますが、叱り方がわからないという方もいます。
――「叱りすぎてしまう」、「叱り方がわからない」という方には、どのようなアドバイスをされるのでしょうか?
庄子先生:まずは「叱りすぎてしまう」と悩んでいる場合、その時点で振り返りができているのでまったく問題ないです。むしろ叱りすぎてしまう自分を自己否定しないことです。「叱り方がわからない」場合は、子どもに「嫌われたくない」という感情があるのではないでしょうか。その場合は“子どもに嫌われたくない”と考えることはやめたほうがいいとお伝えします。叱ったとしても、この先も親子であることには変わりないです。それよりも「これはいけない」という感情を抱いたら、その時点でしっかり子どもに注意するよう伝えています。
「子どものためよりも自分のため」という意識を持つこと
――書籍のタイトルに「待ち上手」という言葉がありますが、どうしても「待つ」前にあれこれ「先回り」してしまう親もいるかと思います。待ち上手になるにはどうしたらいいのでしょうか。
庄子先生:まずは前提として「先回り」することがいけないということではないです。忙しい中、子どものために明日の準備をしたり、忘れ物がないかの確認をしたりすることは、素晴らしいことです。続けることができるのならば、私はそのままでいいと思います。
ただし、「私は子どものためにこんなにやってあげているのに!」という感情や、「子どもが自分でできないのは私の育て方が悪いから?」とご自分を責めてしまうような場合は「先回り」することをやめた方がいいと思います。
――「先回り」することが辛いと感じ、やめたい場合、どんな風に気持ちを切り替えたらいいのでしょうか。
庄子先生:まずは自分を甘やかしてもいいという意識を持ってください。「先回り」している親御さんの中にはこんなことはしてはいけないという自分ルールがあり、それに縛られている人もいるかもしれません。
たとえば、子どもを置いて飲みに行ってはいけない、食事はきちんと手作りをするなど、“良い親像”があるのではないでしょうか。しかし、親だってたまには飲みに行きたいと思いますし、疲れた日はお惣菜を買ってきたっていいと思います。
――目の前にいる子どもよりも、自分のためにどうしても行動できないという方もいるかもしれません。
庄子先生:たしかに目の前にいる子どもを優先してしまうことが多いとは思います。しかし、わが子のことを優先していると思っている感情が、その子のためになっていないことが多いです。それよりも「自分のため」に時間を使うと余裕が生まれます。親御さんのその余裕は、子どもの細かい変化に気づくことにつながります。そして「まっいいか」とあきらめの気持ちを持つことも大事です。自分を赦せるようになれば、子どもの見え方にも変化がでてきますよ。
時間のつかい方を習慣化させて自分を整える
――実際、自分のために行動するにはどうしたらいいのでしょうか?
庄子先生:まずはやるべきことを効率化させ、自分の時間を作ることを習慣化しましょう。そのときに小さな目標からスタートさせることが大事です。たとえば、毎晩〇時には布団に入ると決めて行動すると決めたならば、夕飯の時間を少し前倒しにします。そのためにはおかずを1品、買ったもので済ませてもいいと思います。上手に手を抜くことが大事です。
――あくまでも「自分のため」に行動することを徹底するのですね。習慣ができるとどんな変化が期待できますか?
庄子先生:どうしても親御さんは頑張ってしまいがちですが、「これはやらなくてもいい」と、自分に許可を出してあげることです。子どもにかけるべきは手ではなく、「目」と「愛」です。睡眠を削って子どものために頑張るのではなく、睡眠をしっかり確保して心や体が整っていると、心身ともに健康になります。次第に自分の気持ちが整ってくると笑顔が増えていきます。親御さんが笑顔でいれば、それはまぎれもなく、子どもの幸せにもつながるということを覚えておいてほしいです。
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どうしてもわが子のために「先回り」してしまいがちですが、子どものためにも自分を優先することが大事だということがわかりました。最初は「自分のため」を習慣化させるのは難しいかもしれませんが、そうやって自分を整えていくことは「自分のためでありながら、子どものためでもある」ということが理解できたので、これから意識していきたいと感じました。