新年度になり、仕事や家事、学業に追われ、ストレスフルな生活を送っている人が多いかもしれません。中医学士で漢方薬剤師の大久保愛先生が、ストレス&疲労対策を教えてくれます!
最近、ストレスが溜まっていませんか?
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 209
4月も後半に差し掛かり、あっという間にGW目前となりましたね。そろそろ日ごろの人間関係や終わらないタスクにストレスを強く感じる人も増えているのではないでしょうか。ピリピリとした空気を醸し出してしまう人や他人の何気ない発言にひどく傷つき落ち込んでしまう精神状態と戦うこともあるかもしれません。
今月は、毎日を楽しむというよりも毎日をこなすように生活し、みんなの心とカラダに余裕がなくなってしまいやすい時期でもあります。大変な時期だから仕方のないことではありますが、とげのある発言やちょっと悪意のある行動などは、人の記憶から消去されるまでなかなか時間がかかるものです。今の時期は、他人に寛大に自分に優しく過ごすようにしていきたいですね。ということで、今週はストレスフルな中、心穏やかに過ごすための食薬習慣を紹介していきます。
今週は、穏やかな毎日を取り戻すための食薬習慣
突然ですが、その場で大きく息を吸い込み、背筋を伸ばし、その2倍の時間をかけて息を吐ききってみましょう。どうでしょうか。今まで猫背で呼吸が浅くなっていたことに気がつきませんか?
忙しくストレスが多い時には、姿勢までもが前のめりになり、首への負担がかかり、背中が丸まり、座りっぱなしで骨盤周辺の血流も低下していることが予想されます。忙しい時ほど、日常の中で、姿勢や呼吸といった部分の質を高めるよう意識して、カラダに良いことがゼロにならないように気をつけましょうね。
漢方医学ですぐに傷つく繊細な人、もしくはすぐにイライラしてしまう人を「肝気鬱結」や「肝血虚」などと考えます。そして、これを加速させるのが、胃腸へ負担のかかる食事や寝不足の蓄積によって作られる『脾腎陽虚』というタイプです。
みなさん、こんな経験ないでしょうか。イライラしてしまった日の深夜に一息ついてアイスを食べながら動画を観て夜更かしといった、リラックスタイム。こんな時ほど、睡眠の質を高めることを意識して、冷たい物や血糖値が急上昇しやすいものを寝る前に採り睡眠不足に追い打ちをかけるような行動で疲労を増してしまうようなことは控えたいものです。
ということで、今週食べるとよい食材は、『肝血』を補い『肝気』の巡りを促す【青梗菜とササミのバンバンジー】です。逆にNG行動は『脾腎』にダメージを与える【寝る前のアイス】です。
食薬ごはん【今週食べるとよい食材:青梗菜とササミのバンバンジー】
春は「肝血虚」になり心が繊細になりがちなシーズンです。チンゲン菜には、鉄と鉄の吸収を高めるビタミンCが豊富なため『肝血』を補うために役立ちます。また、食物繊維や肝臓の働きを支えるイソチオシアネートなども同時に摂取できるので『肝気』の巡りを促すために役立ちます。
また、高たんぱくなササミをバンバンジーにすることで、整腸作用のある味噌とオリゴ糖と胡麻、胃酸の分泌を促したり、血糖値の急上昇を抑えるお酢で味付けることができるので、心とカラダが整うスペシャルな一品となります。5分くらいで完成するので、生活リズムが乱れた慌ただしい日の副菜にピッタリ。
レシピはこちらです。
<材料>
ささみ 3本
すり胡麻 大さじ2
味噌・みりん・酢 大さじ1
醤油・オリゴ糖 小さじ1
青梗菜 1/2株
ブロッコリースプラウト お好みで
<作り方>
1. ササミの筋をとり、ポリ袋に入れレンジで5分温め、ほぐす。
2. 青梗菜をレンジで2分温め皿に盛り付ける。
1に調味料を加えよくなじませ、2にのせたら完成。ブロッコリースプラウトはお好みで。
NG行動【寝る前のアイス】
今日も一日お疲れ! という気分で、ほっと一息ついて寝る前にアイスを食べるという日もあるかもしれません。ですが、寝る前にお腹を冷やしたり、血糖が急上昇してしまうことは、疲労回復には逆効果。こういった夜のリラックスタイムは日中のストレスに対する感受性を高めてしまう可能性もあるので、なるべく睡眠の質を落とさないように、お風呂にアロマを入れたり、軽くストレッチしたり、穏やかな音楽を聴くことでストレス対策をして、睡眠の向上を目指すことをお勧めします。
今の時期、忙しかったり、ストレスが多かったりするのは、みんな同じです。自分だけがつらいわけではなく、強く当たってくる人も、実はつらいのかもしれません。ストレスフルな状況を変えるために頼る先として、他人でも気合いでもなく、食事の内容というように視点を切り替えてみてはいかがでしょうか。ちょっと気分が軽くなるかもしれません。
ほかにも心とカラダを強くするレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。
※食薬とは…
『食薬』は、『漢方×腸活×栄養学×遺伝子』という古代と近代の予防医学が融合して出来た古くて新しい理論。経験則から成り立つ漢方医学は、現代の大きく変わる環境や学術レベルの向上など現代の経験も融合し進化し続ける必要があります。
近年急成長する予防医学の分野は漢方医学と非常に親和性が高く、漢方医学の発展に大きく寄与します。漢方医学の良いところは、効果的だけどエビデンスに欠ける部分の可能性も完全否定せずに受け継がれているところです。
ですが、古代とは違い現代ではさまざまな研究が進み明らかになっていることが増えています。『点』としてわかってきていることを『線』とするのが漢方医学だと考えることができます。そうすることで、より具体的な健康管理のためのアドバイスができるようになります。とくに日々選択肢が生じる食事としてアウトプットすることに特化したのが『食薬』です。
Information
大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田で薬草を採りながら育ち、漢方や薬膳に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・美容を学び、日本人初の国際中医美容師を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、未病を治す専門家として活躍。年間2000人以上の漢方相談に応えてきた実績をもとにAIを活用したオンライン漢方・食薬相談システム『クラウドサロン®』の開発運営や『食薬アドバイザー®』資格養成、食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち®」シリーズの展開などを行う。著書『心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破のベストセラーに。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『食薬事典(KADOKAWA)』、「食薬ごはん便利帖(世界文化社)」、「組み合わせ食薬(WAVE出版)」、「食薬スープ(PHP)」など著書多数。
公式LINEアカウント@aika