便秘改善への道は、便秘についてよく知ることから始まる。便秘と一言で言っても、原因やタイプは様々。しっかりと押さえておこう。
便秘の基礎知識
便秘の定義は、3日以上排便がないor残便感。
そもそも便秘とはどのような状態なのか、消化器内科医の中島淳さんに定義を教えてもらった。
「便秘は、病名ではなく症状を表す言葉で、『慢性便秘症診療ガイドライン2017』では、“本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態”と書かれています。具体的には、3日以上排便がない『排便回数減少タイプ』と、毎日排便があっても残便感がある『排便困難タイプ』に分類されます。みなさん何日も便が出ないのだけが便秘だと思っていますが、毎日お通じがあっても、便が硬くて出しにくく、1回の排便ですべて出し切れない場合も同様。実際、後者の症状で医療機関を訪れる患者が多くいます」
便秘の原因は様々あり、人それぞれ。いくつかの原因が複雑に絡み合って起こることもある。
「便秘を放置していると、悪玉菌が繁殖して病気を引き起こすだけでなく、肌荒れや体臭を招くことも。原因を突き止めて、慢性化しないように対処しましょう」
代表的な2つの便秘タイプ
【排便回数減少タイプ】排便の回数が少なく、便が腸の中にとどまる。
大腸の動きが低下し、腸のぜん動運動が十分行われなくなることで、便がうまく肛門まで送られない。その結果、排便回数や便の量が減少し、大腸に便がとどまってしまうタイプ。腸内に便が長時間滞留していると、便の水分がどんどん腸に吸収され、便がカチカチに硬くなり、さらに出しにくくなる。悪化するとお腹の張り、腹痛を招く場合も。過度なダイエット、食物繊維不足、水分不足などが主な原因。
【排便困難タイプ】分割排便になったり、出してもすっきりしない。
直腸のセンサーの働きが低下して便意を感じられなかったり、便意があっても直腸を十分に収縮できないことで、排便の回数や量は十分なのにすっきりとした排便ができないタイプ。便が硬くて、いきんでも迅速に排出できず、コロコロ便になる。それに伴い、残便感が残り、一日に何回も排便する分割排便に悩まされることも。ストレス、日常的な便意の我慢、運動不足などが主な原因。
便秘を引き起こす主な原因
ストレス
胃腸が活発に動くのは、副交感神経が優位なリラックスした状態。しかし、過度なストレスがかかり、緊張状態が続くと交感神経が優位な状態に。直腸の動きが鈍くなり、便が作られにくくなる。
食物繊維不足
食物繊維は、便の量を増やしたり、大腸内の腸内細菌のエサになるため、便秘改善に欠かせない栄養素。食物繊維が不足すると、便が作られにくくなるのはもちろん、便が硬くなり排出されにくくなる。
日常的な便意の我慢
直腸に便が入ると脳へ信号が送られ、便意が起こるが、多忙な生活でトイレに行くのを我慢し続けると、便意が失われ、排便困難に。便意を感じたら速やかにトイレに行くようにすることが大切。
過度なダイエット
減量のために食事制限をすると、食べる量が大幅に減り、便を作る材料が不足する。そもそも材料がなければ、便は作られないし、必要な栄養素が十分に摂れなくなるので、過度なダイエットは禁物。
運動不足
運動後は副交感神経が優位になり腸の動きが活発になる。一方、体を動かす機会が少ないと自律神経のスイッチ自体鈍くなってしまう。また筋力が低下すると、便を肛門へ送り込む力も弱まる。
水分不足
便の70~80%は水分なので、水を飲む量が少ないと便が硬く出にくくなる。人により必要な水分量は異なるが、一度に大量の水分を補給すると尿として排出されてしまうので、少量こまめ飲みが大切。
中島 淳さん 消化器内科医。横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授。便秘に対する正しい知識や情報を提供するポータルサイト「イーベンnavi」の監修も務める。
※『anan』2023年7月12日号より。イラスト・德丸ゆう 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)