ブレることを恐れずに、上手に“しなる”ことを意識しているという俳優の風間俊介さん。その人生哲学に迫る。
できる限り人に合わせたい八方美人な自分が好きです
脚本家・足立紳さんの実体験を描いた小説を実写映画化した『劇場版 それでも俺は、妻としたい』。風間さんが演じるのは、浮気する勇気も風俗に行くお金もない、売れない脚本家の柳田豪太。妻のチカ(MEGUMI)から罵倒を浴びながらも、めげずにセックスをしたいとせがみ続ける。そんな、“したい”夫と“したくない”妻の夜の営みをめぐる攻防戦を、リアリティたっぷりに描いている。
「夫婦の日常をありのままに映し出し、起承転結もなければ、登場人物の成長も問題解決も描かれない。ドキュメンタリーのような構造が新鮮で、隣の家の夫婦ゲンカをのぞき見しているような刺激を味わっていただけるはず。僕が演じた豪太は……あまりに情けなくてドン引きしました(笑)。“実際は、こんなこと言ってないですよね?”と確認するたびに足立さんが気まずそうにしていたので、ほぼノンフィクションだと確信。“そんな馬鹿な!”と突っ込みながら、お楽しみください(笑)」
家計を支える妻に家事の愚痴を吐き、気が乗らない仕事は途中で放り出す。清々しいほどに正直に生きる豪太。風間さんは、正直でありたいと感じたことはあるのだろうか。
「僕は正直さを美徳と捉えていないんです。世の中のすべてはケースバイケースで、白黒つけられないことのほうが多いと思うから。考えや態度が“ブレない”ことを健やかな状態だとする意見もあるけれど、ブレないことを意識し続けると、いつか折れてしまう気がして。だから僕は、上手に“しなる”ことができる自分でいたい。その時々で、感情に委ねたり、感情を制したり、自分で調整しながら生きることに自由を感じます」
自分に正直に生きられないと悩んでいる人に向けて、「まずは自分を褒めてあげてほしい」と語る。
「人に合わせたり、人の目を気にしたりするのは、人を大切にしている証拠。自分を変えるのもいいけど……人に合わせるほうが楽なこともあるし、それも自分の正直な感情ですよね。僕も許容範囲であれば、できる限り相手に合わせるタイプ。自分に噓はついていないし、八方美人な自分を結構、気に入ってもいるんです」
昨年独立し、個人で活動する今も、「やりたいことよりも、託されたこと」を優先する。
「本当にやりたいことを突き詰めると仕事が偏ってしまうだろうから、それを避けるためにも、お仕事の取捨選択は人に委ねています。僕にとって役者とは、役を託される立場。作品や役柄は関係なく、僕に役を託したいと思っていただけた気持ちが何よりも嬉しい。託してくださった方の期待に全力でこたえようとする姿勢は、これからもずっと大切にしたいです」
©「それでも俺は、妻としたい」製作委員会
映画 『劇場版 それでも俺は、妻としたい』
出演/風間俊介、MEGUMIほか
原作・脚本・監督/足立紳
5月30日(金)全国公開
同名小説が原作の大ヒットドラマをベースに、未公開シーンを盛り込んだディレクターズカット版。売れない脚本家の夫・豪太(風間)と、そんなダメ夫を罵倒する妻・チカ(MEGUMI)の夫婦“性”活をリアリティたっぷりに描く。
撮影/井手野下貴弘 ヘア&メイク/清家いずみ スタイリスト/手塚陽介 取材・原文/中西彩乃 ※BAILA2025年7月号掲載