大西洋とカリブ海の間に浮かぶリゾートアイランドの別荘に集う女たちを描いた密室劇『フローズン・ビーチ』。’98年に初演され、岸田國士戯曲賞を受賞したケラリーノ・サンドロヴィッチさんの傑作、KERA CROSS 第一弾『フローズン・ビーチ』で、初舞台を踏むブルゾンちえみさん。
友情と愛情と憎しみが絡み合う女たちの16年間の結末とは。
「まだ稽古段階で本番も始まっていないのに、終わっちゃう時のことを考えると寂しくて仕方ないんです」
それほどにいま充実している模様。
「毎日がトライ&エラーの連続で、昨日できなかったことが今日できるようになっていたり、何かしらの経験値が上がっていたりする。私は性格的に、自分が止まっているんじゃないか、何も成長できていないんじゃないかって思うと、モゾモゾと焦ってしまうタイプなので、いまの自己肯定感を持てる環境が、すごく健全というか、ありがたいです」
じつは演劇経験者のブルゾンさん。芸人を目指す前、大学中退直後、地元岡山の劇団に所属していたことが。
「小中高大ずっとベーシックなレールの上を走ってきたのが、突然、エンターテインメントの世界に携わりたいと思って、最初に始めたのが演劇でした。その後に歌とダンス、そして芸人の勉強をして、いま再び演劇に出合えている。いろんなことに挑戦し続けてきたここまで、全部無駄じゃなかったのかなと思います」
本作で演じるのは、鈴木杏さん演じる千津に崇拝に近い感情を抱く、エキセントリックな性格の市子。
「最初は全然理解できなくて、冒頭からマックスなテンションの市子に自分をどう持っていくかすごく悩んだんです。でも、(演出の鈴木)裕美さんと話していたら、奇想天外だと思っていた行動が、千津を思うあまりのことなんだと腑に落ちて、市子を好意的に見られるようになりました。演出家ってすごいなって感動したりして」
16年にわたる女たちの物語は、サスペンス的要素も加えながら複雑に絡み合い、予想外に展開していく。
「性格的に嫌な部分がある人たちだけど、それが憎めない愛嬌になっていたりもするんです。この作品を観終わった後、コンプレックスがあったり、嫌な部分を持った自分を愛せるようになっている気がします」
ブルゾンちえみ 1990年8月3日生まれ。岡山県出身。2017年頃から、キャリアウーマンネタなどで数々の番組に出演し、人気を博す。近年はドラマ出演を果たすなど女優としても活動中。
KERA CROSS 第一弾『フローズン・ビーチ』 双子ながら、姉の萌(花乃)を疎ましく思っていた愛(花乃・二役)。ある日、愛の旧友の千津(鈴木)を崇拝する市子(ブルゾン)が、はずみで愛をベランダから突き落とし…。7月31日(水)~8月11日(日) 日比谷・シアタークリエ 作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 演出/鈴木裕美 出演/鈴木杏、ブルゾンちえみ、花乃まりあ、シルビア・グラブ 全席指定9000円(税込み)ほか 東宝テレザーブ TEL:03・3201・7777(9:30~17:30) 7/25に新潟、7/28に福島公演あり。東京公演後、大阪、静岡、愛知、高知、高松公演も。 https://www.keracross.com
※『anan』2019年7月24日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)