目に見えず、どこにいるのかわからない新型コロナウイルス。感染を防いで安全に暮らすにはどうすればよいのか。衛生に詳しいナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんに聞いてみた。
「一番大切なのは、正しい情報を手に入れること。情報が溢れる現代社会では、デマが拡散することもあります。本当はどうなのか、厚生労働省などが発信する情報でチェックしましょう」
さらに、必要以上に恐れないことも大切、と本橋さん。
「極度に感染を恐れるあまり一切外出せず、人とまったく会わずにいると、QOL(生活の質)が低下。最悪、運動不足やストレスが原因で別の病気になってしまうかもしれません。新型コロナウイルスは、触れたら即感染するようなものではありません。きちんと対策をすれば、感染リスクは下げられます。こんな状況下だからこそ、正しい感染予防をすることで、少しでも楽しく快適に暮らせるよう努めたいですね」
新型コロナウイルスに関する基礎知識。
感染を防ぐために知っておきたい、新型コロナウイルスの基本情報をレクチャー。混同しやすい菌との違い、感染を防ぐための基本行動って?
ウイルスとは細胞構造を持たない不思議なモノ。
ウイルスはよく、“生物と無生物の中間”といわれる。細胞を持っておらず、自分の力で増殖できないので、生物とはいえないのだそう。「ウイルスは、別の生物の体に入り込み、その細胞分裂を利用して増殖します。例えば食べ物にウイルスがついても、そこでは増殖しません。体内に取り込まれ細胞に入り込むことで増殖し、感染症を引き起こします」
ウイルスと菌の違いは増え方と大きさ。
ウイルスは菌とよく混同されるけれど、そこには様々な違いが。「ウイルスは自力では増えないと説明しましたが、菌は適温下で栄養と水分があれば自己増殖します。パンにカビが生えるのは、カビ菌が増えた結果です。さらに大きさも違います。ウイルスは菌よりはるかに小さい。菌は防菌マスクを通れませんが、ウイルスはマスクを通過します」
新型コロナウイルスの感染を防ぐには、消毒・うがい・手洗いが有効。
今のところ明らかになっている新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫と接触の2つ。「飛沫感染とは、ウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、おしゃべりをすることで口から唾液が飛び、そこに含まれるウイルスが別の人の体に入って感染すること。接触感染とは、ウイルスがついているモノに触れ、そのウイルスが体に入って感染することを指します。新型コロナウイルスの場合、ウイルスのついた手で無意識に目や口、鼻などを触って感染するケースが多いといわれています。空気中を漂うウイルスによる空気感染の可能性も指摘されていますが、今のところ定かではありません。いずれにせよ感染を防ぐには、消毒、うがい、手洗いで体に入るウイルスの量を減らすことが大切。それぞれ正しいやり方を身につけて、感染を防ぎましょう」
【手の消毒】
何かを触ったあと、食事をする前、トイレへ行ったあとは、手をアルコールで消毒してウイルスを減らそう。手を洗ったあとに消毒をする場合は、しっかり乾かしてから。水分があるとアルコールの濃度が薄まり、消毒力が落ちてしまう。
【うがい】
うがいをすると、喉についたウイルスが洗い流され、体に入る量を減らすことができる。ただし、うがいをする前に、必ず手を洗うこと。ウイルスのついた手でコップや口元を触ると、かえって感染のリスクが上がる恐れが。
【手洗い】
洗う場所は、手のひらと手の甲と指。それに指と指の間、爪と指の間、手首も忘れずに。石けんやハンドソープをきちんと泡立てて15秒から30秒しっかり洗い、それから洗い流す。手を洗う前には、指輪などのアクセサリーをはずすこと。
本橋ひろえさん ナチュラルクリーニング講師。化学系企業で合成洗剤の製造などを担当。掃除を楽にするアイデアやアイテムを紹介する著書が好評。
※『anan』2020年9月2日号より。イラスト・松元まり子 取材、文・風間裕美子
(by anan編集部)