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「説教くさいのかなと」…『君たちはどう生きるか』漫画家が本作語る

自分に突きつけたくなる人生哲学。吉野源三郎さんによる歴史的名著『君たちはどう生きるか』が、羽賀翔一さんによっていまマンガで蘇る。

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「原作を読む前は、タイトルのイメージから勝手に『説教くさい本なのかな』と思っていました。ところが、読み始めてみるとすぐに、コペル君や浦川君など悩める登場人物に感情移入できた。これは教養だけの本ではない、純粋に物語として面白いと夢中になりました」

現在、発行部数95万部と快進撃を続けているマンガ版の『君たちはどう生きるか』。それを手がけたのが羽賀翔一さんだ。本書のベースになっているのは、児童文学者で編集者としても辣腕を振るった故・吉野源三郎さんによる同名の名著。慕っている叔父さんから〈コペル君〉というあだ名を付けられた中学2年生の少年が、その叔父さんとの対話を通して、友情やいじめ、貧困、勇気などさまざまな人生テーマに向き合い、成長していくストーリー。

「僕のデビュー作『ケシゴムライフ』というマンガも、日常のワンシーンの向こうに、小さな思いがつながり、記憶に刻まれるドラマが生まれる、そんなときの感情を描いているんですね。ちょっとおこがましいですが、吉野さんと僕の感性はもしかすると近いのではないかと感じオファーされたマンガ化にぜひ、挑戦したいと思いました」

こだわったのは、原作の持ち味は壊さず、同時に、マンガとしての魅力も加味することだ。

「たとえば、コペル君が浦川君の家の貧しい境遇を知って、それによって浦川君の人間の大きさに気づく場面があります。コペル君が叔父さんにその話をすると、叔父さんも〈じっとしていられなくなってきた〉と言い、連れだって歩くのです。ひとまわり成長したコペル君に刺激されて、叔父さんもまた変化したことを表現したのですが、それは原作にないのだと説明すると、結構驚かれるんですね。実際、このあたりのネームを担当さんに見せたときに、『コペル君と叔父さんの関係性がよくわかります。羽賀さんなりのキャラクターがつかめましたね』と言われて。叔父さんはコペル君のメンター(助言者)であり、バディでもあるという描き方にすると決めました」

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また、本書のキモでもあるコペル君宛ての手紙〈おじさんのNOTE〉は、その構成を踏襲。叔父さんの手紙はあえてマンガ化せず、文章のまま、載せた。

「文章のパートでは、“ノートを持っているコペル君の指”を絵にしているんですが、指の描き方は幾通りも変えました。『この部分を読むときは、コペル君も力が入ったんじゃないかな』と思ったら、ぎゅっと力が入った感じの指にしてみたり」

そうしたディテールにもぜひ注目。

読み返すたびに気づきがある、いまいちばん読みたいマンガなのだ。

友達を裏切ってしまったという深い後悔に苛まれるコペル君に、叔父さんが差し出してくれたノート。自分で考え、踏み出すことの大切さを学ぶ。マガジンハウス 1300円(C)羽賀翔一/マガジンハウス

はが・しょういち マンガ家。2010年、MANGA OPEN奨励賞受賞。’11年に「ケシゴムライフ」を集中連載の形で発表、’14 年に単行本化。他の著作に『昼間のパパは光ってる』。
※『anan』2018年1月17日号より。写真・土佐麻理子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)

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