人が感じる “痛み” というものを意識して演出しているところはありますか?
監督 私はリアルさというものを追求していくしかないと思っているんだけど、これまでのアクションや痛みを表現している作品ではSFXなどのエフェクトに頼っていたり、大掛かりな暴力シーンを多用したりしているわよね。
でも、この作品ではそれを逆にどこまで取り除いていけるかということを大切にしていたの。私自身も、自分に痛みが刺さる作品が好きなんだけど、自分が実現できているかは正直わからないわ。
そんな監督は役を理解するために、現場では役者と一緒に水風呂に入ってみたり、凶器であるハンマーを持ち上げたり、銃を手にしたりしていたという。
その珍しい演出方法にホアキンも驚いたそうですが、監督が映画作りで大切にしていることを教えてください。
監督 私は小さい頃から絵を描くときも、映画を観るときも、その世界のなかに没頭してしまって周りのことが見えなくなってしまうタイプ。以前、別の作品を撮ったときに、メイキング映像をあとで見てみたら、私がモニターのところで主人公がしているのと同じ動きをしていたことがあったの(笑)。でも、それを見るまで気がつかないくらい、自覚がないのよね。
とはいえ、それは「キャラクターの世界に飛び込みたい!」という衝動からきているんだと思うの。役者がカメラの前に立つときには、自分のもろい部分をさらけださないといけないし、暴かれるような心理状態でもあると思うから、私もそれをちゃんと理解したいという気持ちがあるのよ。
だから今回も、ホアキンにやって欲しいとお願いしたときに「これは全然意味ないよ」といわれたら、自分でやってみて、「確かに成立してないね」と感じることもしょっちゅうあったの。そうやってキャラクターのことを理解したり、共感したりしようすることは映画作家にとってはすごく重要なことだと私は思っているわ。
痛みと美しさに身もだえる!
監督の映画への情熱とホアキンの役者魂とがぶつかりあって生まれた傑作。研ぎ澄まされた美しい映像と音楽、そして心をえぐるようなストーリーには、ハンマーで殴られるかのような衝撃が残るはず。唯一無二の映画体験を求めているのなら必見です。
狂気が漂う予告編はこちら!
作品情報
『ビューティフル・デイ』
6月1日(金)新宿バルト 9 ほか全国ロードショー
配給:クロックワークス
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