教えてくれたのは…
産婦人科医 高尾美穂先生
イーク表参道副院長。月のサイクルや年齢によって変化する体についてより多くの人に理解してもらうために、音声配信アプリ・stand.fmで「高尾美穂からのリアルボイス」を配信中。近著に「心が揺れがちな時代に『私は私』で生きるには」(日経BP)、「生理周期に合わせてやせる! 超効率的フェムテックダイエット」(池田書店)などがある。
ホルモンバランスの影響で、月の半分以上が不安定になる女性の体と心。日々頑張る私たちが少しでもポジティブに自分と向き合うために、知っておくべきことや普段から気をつけるべきポイントをご紹介。
女性を悩ませるホルモンゆらぎ症状とは
女性が女性であるがゆえに感じる不調は、実にさまざま。読者から寄せられた3つの症状について、産婦人科医・高尾美穂先生にその原因を教えてもらいました。
「まず、生理に大きく関わるふたつのホルモンについて知ってほしい。生理開始1週間後から排卵に向け、卵子を成熟させるために分泌されるエストロゲンと、排卵後から生理前にかけて、受精卵の受け入れ体制を整えるために分泌されるプロゲステロン。これらのホルモンの変動が、女性の体のサイクルを作っているんです」。
PMS
「生理がきて初めて、『あ、あの不調は生理前だったからか』と気づくことがあると思いますが、その生理前のイマイチさこそがPMSです。PMSは4人に3人が経験していると言われる非常にポピュラーな症状。エストロゲンとプロゲステロンの分泌が低下する頃に強く症状が出る人が多いのですが、その症状はむくみや便秘、膨満感から肌の不調、頭痛など多岐にわたります。それは排卵期以降、妊娠に備えて子宮も体も溜め込み傾向になるからなんです」
生理痛
「妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜が剥がれ落ちて血液とともに排出される。これが生理です。子宮内膜は子宮の収縮によって押し出されるのですが、その収縮で感じる痛みを生理痛と呼んでいます。人によって痛みは異なりますが、若い世代を中心に『機能性月経困難症』と呼ばれる重い生理痛に悩む人が増えています。生理は病気ではありませんが、生理痛は立派な病気。痛み止めやピルを活用して、少しでも快適に過ごせるように工夫を。また、痛みの影に子宮内膜症や子宮筋腫など、生理痛の原因となる病気が隠れている可能性もあるので、婦人科を受診するのがおすすめです」
生理不順
「みなさん、生理が少し遅れたら『生理不順かも?』と思われるんですが、周期が25日〜38日で、前回の生理からのずれが6日以内であれば、心配する必要はありません。このサイクルを外れた場合が生理不順になります。3ヶ月経っても生理が来ない無月経という状態になったら婦人科への相談が必要です。エストロゲンの分泌がピークを迎えると排卵が起こりますが、妊娠が成立しないと排卵から2週間程度で出血して生理になります。エストロゲンがピークに達するタイミングが安定していないと、生理の周期も不安定になり、生理不順を引き起こすわけです。エストロゲンの分泌は脳内の視床下部がコントロールしているので、視床下部が大きすぎるストレスをキャッチしないように、日々受けるストレスを緩和することが大切です」。
自分の体を知ることが、不調打破への第一歩
「前述の通り、女性の体はふたつのホルモンの分泌量によって大きく左右されます。そのため、不調に備えるにはホルモンサイクルを知ることが大切。人によって生理前や生理中など、不調が出るタイミングも異なるので、まずは自分の生理周期と、落ち込みやすいタイミングを把握しましょう。そして、不調期に予定を詰め込まないこと。できるだけゆったりリラックスして過ごすだけで、だいぶ楽になりますよ。休息の質を高めることもホルモンバランスを整える大切な要素です」
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女性の選択肢を大きく広げたフェムテック
「フェムテックが示す『女性の健康を支援する』という取り組みは素晴らしいと思います。生理周期や睡眠の質を管理するアプリもそうですし、あとは最近増えている吸水ショーツや月経カップなどの生理用品など、選択肢がとても増えたなって思うんです。これまではほぼナプキン一択で、肌に合わない人や生活スタイルに合わないという人もいたかもしれないけど、長時間使えるものや肌あたりのいいものも増えている。それによって、不快な生理期が少しでも快適になるといいですよね」
取材・文/野崎千衣子 イラスト/itabamoe 構成/佐藤 陽(MAQUIA ONLINE)
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