古今東西、誰かのリアルな人生から出てきた言葉は、やっぱりドラマチックで感動する。話題のブログをのぞくような気軽な感覚で、エッセイ本を開いて心を潤そう! 数々のヒット本の宣伝を担当してきた書籍PRがテーマ別に厳選した5冊をご紹介。
1.【大人】
大事なことなんで何度でも言いますけれど、「四十代になれば仕事も落ち着く」なんてのは幻想です。
『ひとまず上出来』
ジェーン・スー著
文藝春秋 1595円
ラジオや雑誌で活躍中のコラムニストが、50代を目前にし日々のことに考察を重ねた一冊。「中年には中年の楽しみ方がある。若い頃とは変わってくる心や体を楽しむのもアリと、バイラ世代も背中を押してもらえるコラムが満載です」
2.【家族】
「アホちゃうか」
父のくちぐせだった。それだけで、賞賛も、憤怒も、悲哀も、ありとあらゆる感情が表せるといっていた。ミツカンのめんつゆに匹敵する万能さである。
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』
岸田奈美著
小学館 1430円
急逝した父、車いすユーザーの母、ダウン症で知的障害のある弟。30代前半の著者と家族の結びつきを書いた作品。「岸田さんの道のりは、ラクだったとは言い難いです。その現実を見据えながら明るさが漂う視点が素晴らしい」
3.【喜び】
でも、これで堂々と胸を張って言える。「あなたの人生の意味はなんですか」と問われたら、「創作物を読んだり見たり、形式上、購入を迷ってみせたりすることです!」と。やったー、悔いなし!
『のっけから失礼します』
三浦しをん著
集英社 1760円
バイラで連載中のエッセイをまとめた一冊。「ありふれた日常も、三浦さんの手にかかると大笑いできてしまう。久しぶりに会った友人との近況報告のような親しみやすさも感じつつ、本を読むことの楽しさを再確認させてくれます」
4.【人生】
人間は、決して、勝ちません。ただ、負けないのだ。
『不良少年とキリスト』
坂口安吾著
新潮文庫 539円
昭和の無頼派作家・坂口安吾が、親友だった太宰治が亡くなった際に、執筆した随筆。太宰の作品へのオマージュもちりばめられている。「夢も希望も捨てて逃げ出してしまいたいときに読むと、達観できるお守りのような一編です」
5.【仕事】
世の中の通訳者は、圧倒的多数の場合において「不実な美女」か「貞淑な醜女」をしているのである。では「不実な美女」と「貞淑な醜女」とどちらがいいかというと、(中略)時と場合によるというのが正確な答えだろう。
『不実な美女か 貞淑な醜女(ブス)か』
米原万里著
新潮文庫 737円
1980年~90年代にかけて、同時通訳者として活躍した著者の作品。「お仕事ものですが、話すことも書くことも、きれいにまとまっているのが正解、というわけではないと教えてくれます。“伝える”について再考できるエッセイ」
取材・原文/石井絵里 ※BAILA2022年11月号掲載