仕事やプライベートなど、どんな場面でも良好な人間関係を築いていきたいもの。そこでぜひ身につけてほしいのが、人の機嫌を窺ったり、ゴマをするのではない、相手を理解したい思いが詰まった“愛嬌力”。心の距離を縮める愛嬌力について学ぼう!
人との距離感がグッと縮まる、“愛嬌力”を身につけよう!
誰からも好かれる愛されキャラ。どうしてその人たちは、みんなから愛されるのか…。キャリアコンサルタントのリョウさんが、自身の経験や周りの人を観察してたどり着いたのが、“愛嬌力”。
「僕は、新卒で金融機関に入社し、9年間営業の仕事をして、多くのお客様と接してきました。しかし、どれだけ数字を並べて、論理的に説明しても、相手の心をつかむことはできないと感じたんです。そこで相手の懐にすっと入り込み、心を動かすにはどうしたらよいか。それを考えながら人間観察をしていたら、周りに自然と人が集まってくる人たちには“愛嬌力”が備わっていることに気づいたんです。僕が考えるこの愛嬌力とは、相手のことを理解し、心の距離を縮め、信頼関係を築きたいという感情の強さにあると思っています。結局のところ、人の心は、感情でしか動きません。感情があるから、人間味を感じ、魅力や個性が溢れ出して、周りの人から好かれ愛されるのです。だから僕もその純粋な思いを持って人と接するようにしたら、相手も自分を受け入れてくれるようになり、人間関係を劇的に好転させることができたんです。高い愛嬌力を身につけたおかげで、お客さんだけでなく、社内はもちろん、プライベートでも心地よい関係性を築きやすくなりました」
愛嬌力を身につけるというと、ゴマをすったり、へつらったりと、相手の機嫌をとりながら接することのように誤解されそうだが、決してそうではない。
「そんなふうに周りから見られたくないから、うまく自分を出せずに、人との距離を縮められずにいる人が多くいます。でもそれってすごくもったいない! 見返りを求めたり、周りの反応を気にしすぎず、信念をしっかりと持って接することができれば、自分の個性や持ち味を生かしながら、関係性を深めることができるんです」
愛嬌力には様々な要素があり、人によってすでに備わっている部分と足りていない部分がある。
「自分に愛嬌なんてないと思っている方もいるかもしれませんが、個性そのものが愛嬌。その中にはすでに愛嬌力の要素を備えているものも。なので、自分に足りない部分を明確にして、日ごろの言動でそこを意識して習慣づけていけば、個性をより輝かせられるようになり、自分だけの最強の武器にすることができます。愛嬌力はいくつになっても身につけられます。むしろ後天的に身につけたほうが、今までとのギャップが生まれて、人との距離感をグッと縮めることができます。愛嬌力で、心地よい人間関係を築きましょう!」
誰からも好かれる人は、みんな持っている。愛嬌力の9つの要素。
「愛嬌力には主に9つの要素があります」とリョウさん。これらをたくさん兼ね備えている人ほど、愛されやすい。このうち、今の自分にはいくつの要素が備わっているか、できるだけ客観視しながら、照らし合わせてみよう。
1、感情表現や表情が豊か。特に笑顔!
人に好印象を持ってもらうのに、笑顔は最も重要な要素。「『あなたのことを思い出して』と言われた人に、笑顔を思い出してもらえるかどうかがすごく大切です。もし無表情な顔が思い浮かぶようだったら、周りに持たれている印象は良くないってこと」。笑顔だけでなく喜怒哀楽の感情表現が豊かであることもポイント。人の話を表情豊かに聞いてあげると距離が縮まる。
2、何事もまずは“自分事”として考えられる。
「不測の事態が起きた時も、ひとまず自分事として捉えることができる人のことです。その時に自分に足りなかった部分やできることがなかったかを冷静に考えられるかどうか。ただし、自分のせいにばかりすると心が疲弊するので、自分を追い詰めすぎないことも大事です」。逆に何かあった時にすぐに人のせいにしたり、他人を否定する人は、周りが離れてしまう可能性が高いので注意が必要。
3、自分と異なる意見も尊重できる。
異なる価値観の人と接する時も、高圧的な態度をとったりしない。「『こうあるべきじゃない?』など自分にとっての普通論を並べて、マウントをとってくるような人は論外です。自分と異なる意見でも、まずは『なるほど』と受容できる感覚を持っていると、この人はわかってくれる、と思われます」。言い争いを生むような火種を自分で作らないのも愛嬌力の一つ。
4、問題があってもポジティブな発想ができる。
問題提起するだけで解決策を提案できない人は、何も生み出すことはできない。どんな時も問題に対して柔軟に対応できる人こそ、一目置かれる存在に。「『それは難しいのでは?』と否定から入ることは百歩譲ってOKとして、それだけで終わらせないこと。その後に『こうしてみればどうでしょう』と提案して、前向きな発想に転換できるかどうかが大切なポイントです」
5、謙虚さも素直さも持っている。
年齢や立場に関係なく、誰に対しても謙虚で素直に学ぶ姿勢を持てる人は、慕われやすい。「人は歳を重ねていくほどに経験値が高まるので、上から目線で物を言ったりしがち。しかしそんなことをしていると、どんどん人は離れていってしまいます。わからないことがあれば、年下や後輩であろうが教えを請うこと。自分を大きく見せることなく、謙虚で素直な姿勢で向き合える人は、好かれます」
6、自分の意見や信念を持っている。
人当たりの良い一面とは裏腹に、曲げられない信念を持っていることが、こびない愛嬌力につながる。「何でもかんでも人の言うことを聞いていたら、それはこびていると思われても仕方がない。相手の考えを受け止めたうえで、自分の意見を率直に述べることができる人ほど、心地よい関係を築きやすくなります」。お互いが歩み寄って、納得のいく結論に導いていける人を目指そう。
7、努力や成果を自分からひけらかさない。
実績や過去の栄光をついついひけらかしたくなるが、自らアピールするのは控える。「自分はこれだけやってきたという自負があるのは、すごく素晴らしいこと。誰しも自分を重要な人だと思われたい欲があるので、語りたくなる気持ちもわかります。でも、それを自慢した瞬間から評価は下がります。人に聞かれた時にだけ話すことで、真面目な一面を印象づけるきっかけになります」
8、信頼できると思わせる、安心感がある。
「これは、礼儀正しくて人に安心感を与えられる人、ともいえます。挨拶やお礼がしっかりできたり、ハキハキと返事ができると、この人になら任せられる、何でも話せると信頼感を得られます。どうすれば相手に気持ちよく思ってもらえるか、矢印をいつも相手の心に向けられる人は安心されやすいですね」。仕事関係だけでなく、仲のいい友人との間でも、礼儀正しさを大事に。
9、周りを楽しませるため、弱みも見せられる。
最後に、愛嬌力を養ううえで絶対に欠かせないのが、人間味あふれる遊び心とユーモア。「人間なので、弱い部分は必ずあります。そういった完璧じゃない部分を他人に見せられると、心理的安全性を生むことができ、いい意味でギャップもあって、魅力的な人だと思われやすくなります」。すると一気に心のハードルが下がり、とっつきやすい、話しかけやすい人になり、親しみが生まれる。
リョウさん キャリアコンサルタント。金融機関の営業を経て、大手メーカーに転職。人材・組織開発の責任者をしながら、キャリア支援やキャリア戦略の発信を行っている。著書に『仕事ができる人は知っているこびない愛嬌力』(KADOKAWA)。Twitterは@Ryoot13