「小説は、現実逃避でもありながら日常を照らしてくれるものがいい」と話すベストセラー作家の三宅香帆さんが、ママにオススメしたい新刊3冊を厳選。
三宅香帆さんが選書
力をもらえる一冊、教えてください
「VERYママ書店」
❝うっすらとでも未来に備えられたり、 日常を照らしてくれる一冊で心を灯して❞
文芸評論家
三宅香帆
さん
『ナチュラルボーンチキン』
。の独り身で起伏のない生活を大切にしている40代の主人公は一見、VERY読者の方からしたら自分とは違う世界の人と思えるかもしれません。その彼女がまったく違うタイプの20代の女の子と関わっていくお話。全然異なるタイプに見えても同じ時代・国に生きている者同士、同じようなことに悩んでいるんだなと思えるラストが特に良くて。女性が歳を重ねることについても、悩んでみたり受け入れてみたり、奇抜に描かれながら普遍性を感じるところに惹かれます。あと金原ひとみ作品はオーディブルで楽しむのも最高です! まるで一人芝居を見ているようでもあり、変な女友達のPodcastを聴いているみたいでもあり(笑)。金原・綿矢りさ世代が今さらにおもしろく、昔読んだきりという方もぜひ出会い直してほしいです。小説は、現実逃避でもありながら日常を照らしてくれるものがいいなと思うのですが、そういう意味でもすごく良い一作。
『義父母の介護』
はドンピシャ世代ではなくても不安だけはある「介護」についてのエッセイ。何が起きるかの予習として使えるだけでなく、読み物としてまず絶品。「夫はなぜ介護をしないのか」とキレたりもしつつ最後には夫を巻き込み、夫婦関係の話としても読めます。
『アメリカ革命』
はアメリカの大統領選挙に際して、ニュースをより理解したいと思って読んだ一冊。少し頭に入っているだけでも話の入ってき方が違うものだと実感。アメリカでことさらに「チェンジ」「変化しよう」と言われている理由がよくわかりました。大統領選挙は終わりましたが、これは今年の当たり新書としてイチオシします!
三宅香帆さん選書3選
『ナチュラルボーンチキン』
金原ひとみ 著(河出書房新社/¥1,760)
ルーティンを愛する45歳の事務職×ホストクラブ狂いの20代パリピ編集者。忘れかけていた本当の私に出会う物語。
『義父母の介護』
村井理子 著(新潮新書/¥924)
仕事と家事を抱えながらの、認知症の義母&90歳の義父の介護。綺麗事ゼロ、本音で語り尽くす介護奮闘記。
『アメリカ革命 独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで』
上村 剛 著(中公新書/¥990)
植民地時代から独立戦争、憲法制定、党派の始まり、南北戦争。先住民や黒人奴隷の視点も踏まえた70年の歴史。
1994年生まれ、高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。著作に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)など。
撮影/西原秀岳〈TENT〉(静物)、小石謙太 取材・文/有馬美穂 編集/中台麻理恵
*VERY2024年12月号「力をもらえる一冊、教えてください『VERYママ書店』」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。