穏やかな空気をまといながら、どこかつかみどころがなく、ひょうひょうとクールに見えるけど、実は情熱的な人。語り出したら止まらないほど、その魅力は無限大。松村北斗さんの“今”を、4つの数字からひもときます。
1. ひとり時間
「ひとりで過ごすのは、すごく好きな時間。“ひとりが好き”って言うと、家にこもったり、閉鎖的、孤独……といったネガティブな印象を持たれがちだけど、僕は外に出ていろんな経験をするのが好き。大人になるにつれ、昔は家族としかできなかったことを攻略してきましたが、ひとり焼き肉もひとりカラオケも序盤でクリアしました。最近では、ひとりテーマパークも攻略(笑)。もちろん“全然楽勝!”という気もしてなくて、正直、恥ずかしいとか寂しいと思う気持ちもあって。でも、いろんな感情をてんびんにかけたときに、“行きたい”とか“やってみたい”という気持ちが勝つんですよね。制約やマイナスが少なくなるのも、ひとり時間の気楽なところです」
「推しのアーティストのライブにひとり参戦したこともあります。地方公演だったので、そのまま一泊して観光したり。ひとり時間の原動力は、楽しいことや幸せなことが好きという思い。そのワクワク感と、自分の中にわずかに残る抵抗をてんびんにかけながら、これからもプライベートタイムを充実させたいですね。おひとり様って寂しく悲しいものじゃない。そこから得られる経験や幸せは、何にも代え難いものだと思うから」
2. ペア&アンサンブル
「恋人とペアアイテムを身につけたり、リンクコーデをすることに抵抗はないかな。昔は憧れたりもしたけど今は特別な感情もないです。とはいえ“全身おそろコーデ”って言われたら、ちょっと重めではある(笑)。それこそ、自分の中でてんびんにかけて"やってみたい"が勝てばありえるのかも! ? そのときになってみないと想像できないけど。やっぱり無理ってなってるかもしれない(笑)
「家族、親友、恋人……自分にとって近くて大切な存在との調和を保つには、でしゃばらないことが大事だと思う。冷たく聞こえるかもしれないけど、“たかが”という枕詞を忘れずに、近しい関係性だからといって、わがもの顔で踏み込んでいくようなことはしたくない。コントロールしたり制御できる存在だと自認しすぎると、消費的な関係になってしまいそうだから。親友だからこうじゃん、恋人だからいいじゃん、と安易に踏み込むのではなく“たかが俺なんてさ”って、頭のどこかで思っておかないと危ういと思うんだよね。今の年代だからこそ、特にそう思うのかもしれないけど。最近は、十数年ともに過ごしているSix TONESのメンバーに対してもそう感じます。越えちゃいけない一線や、親しい仲だからこそ、大切にしなきゃいけない礼儀や配慮ってあると思う。学生時代からずっと一緒で、今はメンバーという枠を超えて、親友であり戦友。かけがえのない存在だからこそ、大切にしなきゃいけないものがあるなと実感。思考をアップデートしながら、よりよい関係性を築いていきたいですね」
3. 三種の神器
「今の生活に欠かせない三種の神器といえば、お風呂、推し活、漢方! もともとお風呂好きですが、疲れている日は面倒なことも……。一度スイッチを入れてお風呂に入ったはいいけど、髪の毛を乾かし終わるまでが面倒で、“うわ、入らなきゃよかったよ……”と思うことも(笑)。でも、すべてが終われば、入ったことに後悔はない!と思えるほど、至福の時間に変わります。中からおもちゃが出てくる、子どもだましのバスボムが大好き♡
次に欠かせないのは、推し活。まず、推しを愛でる精神状態でいられることが幸せ。一時期、もう何も推せる状況じゃないほど精神的に追い込まれたことがあって。その経験があるからこそ、推しの存在に癒され、元気をもらえることに、より幸せを感じています。バンド、お笑い……強度はその時々で変化しますが、常にたくさんの推しに支えられています。
3つめは漢方。体調管理の一環として、胃の不快感と頭痛に効く漢方を飲むようになりました。気が緩みがちな休みの日に“今日はがっつり揚げ物いっちゃおうかな”ということもあって、そんなときの調整役にもなってくれる。体調が悪くなったときになってはじめて内服薬に頼るのではなく、日頃から気をつけるようにしています」
「心のよりどころになる推しのパワーや体調管理のための健康的なルーティン今の生活に欠かせない3つの要素が日々の活力につながっています」
4. 松村さんの素顔
2025年、30歳に。素顔で語る「今」
―― 今年30歳を迎えますが、想像していた30歳と比べてどうですか?
「小さい頃、30歳以上の男性が“30歳からが人生本番だから!”と口をそろえて話しているのを聞いて、正直、“20代になんとかなっていないんだったら、なんともなんねーよ!”って思っていたんです。でも、今思うと本当にそのとおりで! 最近も、同じ言葉を何回も言っている自分に気づき、“何を言ってるんだ、このおじさん”と思っていた過去の自分を反省しました(笑)」
―― ひとりの男性として、大人になったなと思う部分はありますか?
「ドラマで演じた役の影響もあって、不自由なく、戸惑うことなく、子どもと接することができるようになったことがなによりの成長! 親友とディズニーランドに行ったときも、アトラクションに並びながら、前の子どもとどんどん仲よくなっちゃって。保育園でバイト経験ありの親友と2時間遊び倒しました(笑)。思いがけず、大人と子どもに分けられた瞬間を感じ、僕ももう大人にカテゴライズされるのかなと感じた出来事でしたね」
―― 俳優としても目覚ましい活躍の松村さん。俳優デビューは17歳。10年以上のキャリアを重ねて、向き合い方に変化はありますか?
「俳優活動を始めた頃は、アイドル活動の延長線上という考えが強くて。作品に寄り添うというより、自分の知名度、人気に直結することしか考えていなかった気がします。そのうち、自分のやっていることが違うと感じて、作品をより理解しようと努力したり、関わる人を興味深く追うようになって、やっと面白さに目覚めました。“今まで全然お芝居してなかったな。ちゃんとやってみたいな”と気づけたのは、20代前半でしたね。中途半端だった僕をぐっと正してくれた監督さんや、今の噓みたいに奇跡的なキャリアへと引っ張ってくれた作品、キャストの方との出会いも、とても大きな存在です」
―― 役に真摯に向き合うストイックさを持ちながら、とても自然体で等身大の演技も魅力です。俳優として、今、大切にしていることはなんですか?
「“しんどいな”と思うことも多いけど、その“しんどい”がないと何も起こらない。何も変わらない、何も成長できてない……としんどさを繰り返し、もがく中で、突然評価が返ってきたりするので、そこまでどれだけ耐え忍ぶかが勝負。しんどさだけを受け取っていたら、到底もたない職業ですから。“しんどい”が“辞めたい”につながらないようにコントロールしながら、今は逃げずに芝居に向き合うことができています」
―― しんどさとうまくつきあいながら、オンとオフはどんな風に切り替えていますか? ゼロに戻る瞬間は?
「今、仕事が終わったらやると決めているゲームがあって、そのログインボーナスを受け取ると“あ、終わったな”と素の自分に戻れます。ちょっと小難しい操作もあるので、いったん、頭から仕事のことが抜ける時間に。仕事のことを引っ張りたくないので、次の日の台本は帰りの車できっちり読みこんでから、ログイン! 台本とゲームのログインがオンとオフのスイッチですね」
―― 映画『ファーストキス 1ST KISS』では、松村さんも敬愛する脚本家・坂元裕二さん、塚原あゆ子監督との初作品となります。現場で受けた学びや刺激はありますか?
「この撮影の前に、アフレコをしてきたところですが、坂元さんらしい表現、文脈、言葉選び……すべてに感銘を受けました。僕自身エッセイを書いたりもするので、“うわー、ここでこの表現か!”とイチファンとして楽しんでしまったほど。テスト読みの段階で、監督とプロデューサーが感動して泣くという、初めての体験も(笑)。それほどに素晴らしい作品に出会えて役者冥利につきます。バイラオム読者の、大人のみなさんにこそ刺さる作品になっていると思います」
©2025「ファーストキス 1ST KISS」製作委員会
映画『ファーストキス 1ST KISS』
出演/松たか子、松村北斗ほか
2025年2月7日(金)公開 配給/東宝
坂元裕二脚本×塚原あゆ子監督が贈るオリジナルラブストーリー。結婚15年目に事故で夫を亡くし、夫と出会う直前の日にタイムトラベルをする主人公・硯(すずり)カンナを松たか子さんが、夫・硯駈(かける)を松村さんが演じる。
ニット¥20800/アントラー(USED) カーディガン¥46200・マフラー¥35200・スヌード¥26400・パンツ¥34100・シューズ ¥55000/ラッド ミュージシャン 原宿 (ラッド ミュージシャン)
撮影/SAKAI DE JUN ヘア&メイク/浅津陽介 スタイリスト/壽村太一 取材・原文/松井美雪 ※BAILAhomme vol.4掲載