働く30代が抱える日々のもやもやを、一見冴えない(!?)アンガールズの田中卓志先輩にぶつける連載【隣の部署の田中先輩】第36回! 今回は「後輩に指導しなければいけないけれど、圧を与えたくない」というお悩みに田中先輩が的確アドバイス!
《今月のお悩み》後輩に指導しなければいけないけれど、圧を与えたくない(34歳・公務員)
チームリーダーとして部下や後輩をまとめる立場になりましたが、“圧のある怖い先輩”になってしまうのではと不安です。ただ、何度言っても締め切りを守らない後輩や、自分を棚に上げて愚痴ばかりの部下に、立場上注意をしなければならず……。「業務上の指導はきちんとしつつも、話しかけやすい先輩」でいることってできますか?
田中先輩の答え…とにかく「後輩のため」を思い、伝えることをあきらめない!!
助言が難しい令和時代、先輩同士の連携を強めて
後輩に嫌われたくないけど、先輩として指導もしなくちゃいけない、そのつらさは僕も理解できます。芸人をやっていると「そんなの関係ないでしょ」と思われがちですが、芸人も笑いが“仕事”になれば立派な社会人。礼儀や常識はもちろん必要で。それを教えてくれるのが先輩だったりするんですよね。
僕自身、若手時代は先輩からよく怒られました。中でも、目をかけてくれていたのがスパローズの森田さん。普段はすごくふざけているんですけど、裏ではしっかり叱ってくれる先輩で。最初はちょっと怖かったんだけど、うまくしゃべることができない僕たちをとにかくイジって笑いをつくってくれたりして。「すごいな」と思うようになっていったんだよね。若手の頃に注意してくれた先輩やその言葉は今でもちゃんと覚えているし、「言ってもらってよかったな」と思っています。周りを見ていても感じるけど、先輩の忠告を聞かない人って、必ずと言っていいほど、どこかで一度はヤラかすというか。若手の頃って、先輩の言葉が古臭く聞こえたりするんだけど、それはちゃんと意味のあることで。あとからそのありがたさに気づいたりするんだよね。
自分自身、そんな経験があるからこそ、やっぱり後輩への助言はあきらめたくないなって思う。ただ、僕は後輩からナメられているからか、言うことを聞いてもらえないことがとても多い(笑)。まあ、ほどよくナメられるのも大事なのかも。そのほうがコミュニケーションもとりやすくなると思うしね。ただ、あまりにもナメてくる後輩は問題外。若手時代、ライブ会場の準備中にいきなり後輩に頰をビンタされたことがあって。彼は「面白い」と思ってやったみたいなんだけど、観客もいないし、芸人仲間もほとんど見てなかったし、そもそも、全然面白くないし。あのときは注意すらせず、マネージャーに言いつけてやりましたからね。「怖い人がいる」って。
どうでもいい後輩には何も言わない。助言や忠告は大切に思っている後輩だからこそ。でも、受け取る側の気持ちまでを操作するのは難しくて。自分にできることといったら、言葉に「後輩のため」の思いを込めること、そして、横の連携を大事にすることくらいなんじゃないかな。たとえば、後輩が「○○さんにこんなこと言われたんです」と泣きついてきたとき、「それは○○さんが正しいと思うよ」とほかの先輩がサポートする。一人の意見でなく、二人の意見になったほうが後輩も受け入れやすいと思うし、みんなで後輩を育てていける環境をつくれたらいいよね。
誰か一人が矢面に立つのではなく、先輩同士でフォローしあえる関係を築くのもきっと大切なこと。森田さんもね、一人で頑張りすぎちゃって。ライブの出演者全員が集まるエンディングを一人で盛り上げていたら、会社の人から「おまえだけ前に出すぎ」って言われちゃって、そのままクビみたいになっちゃって。もちろん、お世話になっている僕たちは「森田さんはいい先輩なんです‼」って、「降ろさないでください‼」って……言えなかったんですよねぇ。心の中では思っていたんですけど、若手すぎてその言葉を飲み込んじゃったんですねぇ。いつかまた、森田さんに会えたら感謝の気持ちと一緒に伝えたいと思います。「あのときはごめんなさい」って(笑)。