否応なしに人が人を魅了して離さない、“色気”という引力。色も形もないその姿を捉えることはできないけれど、今、私たちが無性に惹かれ、身につけたいと思うのは、ふわりと匂い立つような品のある色っぽさ。媚びず、押し付けず、ただ凛として艶やかに。そんな本物の色気のまとい方とは?
社会の変化とともに、色気のあり方にも変化が。
「ここ数年で、ジェンダーへの意識が一般的にも高まり浸透すると同時に、性や恋愛についての考え方も多様化。『色気』という言葉についても、“性的魅力”というもともとの意味で捉えるだけではあまりにも限定的なのでは、という社会的な流れがあります」
現代ならではの色気について、こう話す心理カウンセラーの塚越友子さん。ヘア&メイクアップアーティストの千吉良恵子さんも、
「今は、メイクで演出する“モテ”も、男性人気のみを意識しているとは限りません。性別問わず“この人、色っぽい”と思われ共感されることが、モデルとしての強みです」
と語る。つまり現代の色気とは、
「恋愛に限らず相手を惹きつける、“人としての魅力”とも言い換えられるのではないでしょうか。知性や品、成熟した内面というのもキーワードです」(塚越さん)
内側から匂い立つ、大人の雰囲気と引力。それが、今どきの“色っぽさ”のようだ。
今どきの色気が宿るのは、清潔感、ギャップ、包容力。
では現代の色気はどこに宿るのか? 写真家の下村一喜さん曰く、
「イメージをほのかに裏切られた瞬間。例えば普段きっちりしている人がふと居眠りをしている場面を見かけたとしたら…ドキッとしませんか? そのギャップが色気です」
「ロングヘアだった人が、潔く髪を切った途端に色気をまとうことがあります。自分の殻を破り勝負しようとする内面が、魅力として輝きだすのかもしれません」(千吉良さん)
ただし、そこには「清潔感」が不可欠と、お話を伺った3人が全員、口を揃える。
「清潔感=きちんと、そして凛と生きている人。自分をしっかり持って生きる姿に色気は宿ります」(千吉良さん)
丁寧な話し方や所作の美しさなどに色気を感じるのも、同じ理由。また、
「人が何より惹かれるのは、受け入れてもらえるという安心感。だから余裕や包容力がある女性は最高に色っぽいんです」(下村さん)
上質な色気をまとっている、ハンサムな女性たち。
では具体的に、今の時代に合った色気をまとっている人は誰だろう。
「深田恭子さん。甘い外見とは裏腹に、プロ意識のとても高い女性。性格もさっぱりしていてハンサム。だからこそ、ふとした瞬間に見せる、柔らかい仕草に余計に色気を感じますね」(下村さん)
「森星さんはバッサリと髪をショートにしてから、スタイルの良さが際立ち、私もドキドキするほど色気が増しました。小松菜奈さんは、顔立ちは完璧な美人というよりエキゾティックで、どこかゆらぎのある目元に驚くほどの色っぽさを感じます」(千吉良さん)
甘さと強さといった相反する要素や大胆なイメチェンなど、やはり“意外性”は色気の鍵のよう。また、
「知的で媚びのない石田ゆり子さんの人気が再燃したことこそ、“成熟”が魅力として捉えられるようになった証拠。上質感ある色気が好まれる傾向があります」(塚越さん)
色気とはセルフプロデュースできるもの。
でも色気って生まれつき備わっている人とそうでない人がいるんでしょ…と諦めている人に、「いいえ、実はすぐにセルフプロデュースできるものなんですよ」と下村さん。
「歌舞伎や宝塚の演者は、自分とは異なる性を見事に演じ、しかもとても色っぽいですよね。人間というものを俯瞰で観察し、分解し、組み立てているからこそなんです。つまりその過程を踏めば、誰もが意識的に自分の魅力を演出できます。もちろん、それには知性が必要ですけれど」(下村さん)
では、その知性はどのように磨けば?
「とにかくいいものを見る。映画でもアートでも。素敵だと感じた女優の仕草を真似することから始めてもいい。僕はそれを“目玉の経験”と呼んでいます」(下村さん)
「自己啓発本ではなく、好きな小説を何度も繰り返し読み、行間を味わってください。想像力が豊かになり、内面が成熟し、自分だけの色気が生まれるはずです」(塚越さん)
塚越友子さん 心理カウンセラー。東京中央カウンセリング代表。ペンネーム「水希」で『銀座No.1ホステスが教える 男の見極め方』(秀和システム)が発売されたばかり。
千吉良恵子さん ヘア&メイクアップアーティスト。透明感のあるメイクと肌作りが魅力。cheek one主宰。著書に『メイクのヒント 毎日可愛くなれる』(講談社の実用BOOK)。