1日の寒暖差が大きい今の時期は、自律神経や女性ホルモンの分泌が乱れ、生理不順やPMSなどさまざまな不調を感じる人が多いよう。そこで、漢方薬剤師の大久保愛先生が、体調を整える簡単習慣をお伝えします!
【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 85
PMS悪化していませんか?
12月になりましたね。本格的な冬の寒さを感じるまで、あとわずかとなりました。最近すごく寒いなと思ったら、東京では今週末は気温が上がる予報がでていますね。昼夜の気温差、日による気温差が大きくなることが特徴な時期です。雲が少なく天高く感じられるので、空がお昼も夕日も星空もきれいで、カラッとした空気が心地よく、木々が色づき日本の良さをしみじみと感じる季節だと思います。
ただ、雲が少ないことで地表に熱をキープできないため昼夜の寒暖差が大きいともいえます。どの季節も一長一短ですよね。洋服の調整がしづらかったり、朝の冷えをきつく感じたりして自律神経を乱すことで、生理周期が乱れたり、情緒不安定になったり、眠れなくなったり、風邪を引きやすくなったりと不調を感じるかたも多いかもしれません。
そこで今週は、女性ホルモンの乱れによる生理不順やPMSのための食薬習慣を紹介します。
今週は、女性ホルモンの乱れによる生理不順やPMSのための食薬習慣
関東地方には、本格的な寒さの前触れとも言える安定しない空模様、山茶花梅雨が訪れています。雨の日はなんだかちょっと気分も下がりますよね。お天気の変化は、6月の梅雨と同様に大きな気圧の変化をもたらし、気分をどんよりとさせてしまいます。そして、梅雨の時と違うのは、寒暖差が加わり、日に日に月末の冬至に向けて日照時間が短くなっていくということ。
気圧の変化と寒暖差は体を一定に保とうとする自律神経が乱れやすくなり、日照時間が短くなることは気分の安定に役立つセロトニンの減少につながるということです。そのため、気分が落ち込んだり感情的になったり、動悸がしたり眠れなくなったり、女性の場合にはPMSを強く感じたり、生理不順になったりとさまざまなことが次々と起こる可能性があります。
お天気は私たちに季節の移ろいを楽しませてくれるだけでなく、体調を崩す原因を与えることもあります。ここ最近の雨や寒い、暑いなどの気候の変動によってダメージを食らってしまう人は、食薬を食べて体の中から対抗する力を養うことをおすすめします。とくに、女性の場合、毎月ホルモンの変動があるため山茶花梅雨を感じる今のような時期は気を付けなければなりません。
漢方では、ホルモンのバランスを整えることを『補腎』といいます。さらに『腎』がもっとも弱る季節を『冬』と考えます。なので、とくに冬は女性ホルモンの変動による生理前や生理のリズム、更年期などによる不調に起こりやすくなっています。そこで今週は、『腎』を補う食薬習慣を紹介します。食べると良いのは、【山芋の味噌汁】です。
食薬ごはん【今週食べるとよい食材:山芋の味噌汁】
味噌汁をとる習慣をつけることは免疫強化、便秘解消、冷えの改善、睡眠の質の改善などさまざまな悩みの解消につながります。さらに、味噌汁を食べることで食事の内容がハンバーガー、サンドイッチ、ラーメン、パスタなど単品メニューになることを避けることができ、食事の内容もごはんに副菜、メインと栄養バランスがとりやすくなります。
体調が乱れやすいときに味噌汁を意識してとることは味噌汁の栄養素だけではなく、栄養バランスをとりやすくなることというメリットも含んでいます。
食薬レシピ
お味噌汁:適量
山芋:適量
作り方は、いつものお味噌汁に山芋を入れるだけです。食べやすい大きさに刻んでも、すりおろしても、フリーズドライを使っても、お好きなタイプでお召し上がり下さい。
食べるとよい食材:山芋
漢方では、『山薬』とよばれ『腎』の働きの強化に役立つ漢方薬に配合されています。さらに、これからしてしまうであろう年末年始の食べ過ぎによる胃腸の疲れに対しても、サポートしてくれます。そして、性ホルモンやストレス時に増えるコルチゾールの原料となる「DHEA」という物質を増やす作用も持っています。『腎』の働きを助け女性ホルモンのバランスを整えるために役立つ食材と言えます。
食べると良い食材:味噌汁
お味噌に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た働きをすることで知られていますよね。そして、大豆を発酵させて作る味噌は腸内環境を整えるためにも役立ちます。さらに味噌に多く含まれるトリプトファンは、日照時間が減少すると体の中で減少しがちなセロトニンの原料となり心の安定や睡眠の質の向上にも役立ちます。
冬にPMS、生理不順、不眠、風邪などとにかく不調がどんどん増えてしまいがちな人は、味噌汁マストな食事を心がけてみてくださいね。その具材として女性におすすめなのが山芋です。別々で食べても良いですが、豚汁などにして一緒に混ぜてもおいしそうですよね。いろいろアレンジして試してみてくださいね。
今回紹介した味噌汁活用レシピは『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方がぜひご覧ください。
※食薬とは…
漢方医学で人は自然の一部であり、自然の変化は体調に影響を与えると考えられています。気温や湿度、気圧の変化だけではなく、太陽や月の動きまでもが体に影響を与えています。学生の頃、太陽暦や太陰暦を学んだことを覚えていませんか? 1か月の日数や季節などは太陽や月の動きから決められていたことはご存知のかたは多いと思います。
月や太陽は、地球との位置により引力が変わり、地球では潮の満ち引きが起こります。地球の約七割が水分と言われていますが、同様に人の体も約七割が水分と言われています。そう考えると、人間も月や太陽の影響を受けることは想像しやすいことだと思います。中国最古の医学書である皇帝内経(こうていだいけい)にも、月が体調に影響を与えることは記されています。
つまり、気温、湿度、気圧、太陽、月の変化とさまざまなものを指標にすることにより、より正確に体調管理をすることができます。この体調管理に食事内容を役立てることを『食薬』と呼びます。
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大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典(KADOKAWA)』、近著に「不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖(世界文化社)」がある。
公式LINEアカウント@aika