枠に収まらずにしなやかに前進し続ける姿はとても強く見えるけれど、内面はもっと複雑で、もっと繊細。11月に35歳になる、田中みな実の現在地。
田中みな実さんに教わる30代を生き抜くヒント
人生の責任を取るのは誰でもない、私自身
主演映画で演じたまみは、恋人との結婚を目前に控えて揺れる36歳の独身ライター。観る側はつい田中さんとの共通点を探してしまうけれど、「30代半ばで独身ということ以外、脚本上のまみと私に類似点はない」と明言する。
「結婚に理想を抱く20代後半の女性が映画を観たら、共感できることも多いと思うんです。でも30代半ばともなれば、そういう次元で物事をとらえ、考える人は実際少ないと感じます。現に私も今は結婚への焦りで気持ちがゆらぐことはありませんし」
劇中ではまみが「女子が一人で生きていくのは寂しいよ」と男性から言われる強烈なシーンが。田中さんなら一体、どう対処するのだろう?
「番組などでは歯向かってみせることはありますが、実生活においてはあらがいません。なんだかいい意味であきらめがついたというか。価値観の違いは埋めようのないものだから、男性が女性に対して抱くイメージに対して、あーだこーだ言っても仕方がないですもんね。むしろ、まったく違う価値観に触れることで多角的に物事をとらえ、視野を広げることができる。そう思うことにしています。近くにいる人は別ですよ! 結婚することがあるとすれば、価値観が近しい人と一緒になりたい。永遠にすり合わせの作業を続けるのは疲れちゃう」
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“仕事をするなら自分と違う価値観を持つ人。結婚するなら自分と価値観の近い人”
田中さんの目下の悩みは、今まで着ていた服がだんだん似合わなくなってきたことや、将来に関する不安。仕事で留守にするときにお母さまに来てもらうこともあるそうで、料理の作りおきがあると「いまだに母に甘えているのはみっともないな」と複雑な気持ちになる瞬間もあるという。また、ときに心にチクリと針を刺すのが、周囲の雑音。
「『バリバリ仕事して一人で立派に暮らしてるなんてスゴイ』などと感心されると、結婚しないと決めた人みたいで……違うのに。結婚していない現状を全肯定されるのも居心地が悪いです。仕事の性質上、結婚しても独身でいてもあらゆる意見にさらされるのは必然だと認識しています。でも、誰も、私の人生の責任を取ってくれるわけじゃないですもの。ならば、周囲の雑音は適度に受け流しながら納得のいく道を突き進んでいきたいです」
『ずっと独身でいるつもり?』
11月19日公開
監督/ふくだももこ 出演/田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えりほか
10年前に執筆したエッセイで一躍有名ライターとなったものの、次のヒット作を書けずに迷走中の本田まみ(田中みな実)。年下の彼とは結婚に向けてつきあいを続けているものの、価値観の違いから次第に不安と怒りを募らせていくことに……。年齢と葛藤しながらパパ活をする港区女子・美穂役で松村沙友理が出演。
撮影/伊藤彰紀〈aosora〉 ヘア&メイク/AYA〈LA DONNA〉 スタイリスト/西野メンコ 取材・原文/松山 梢 ※BAILA2021年12月号掲載