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子どもの作品、どうしてますか? リサイクル工作を捨てられない親たちの苦悩

子どもたちが毎年、頭を悩ませている夏休みの自由研究。最近は、ペットボトルなど身近な廃材を活用した工作も人気です。気づいたら、家の中が子どもの作品であふれて返ってしまうことも......。

気づくと家のあちこちに子どもの作品が...... Akiko Kobayashi / OTEMOTO
気づくと家のあちこちに子どもの作品が...... Akiko Kobayashi / OTEMOTO

ペットボトル、牛乳パック、段ボール、割り箸、ストロー、新聞紙、紙コップ......。

幼児や小学生がいる家には、身近な材料でつくられた「作品」が多かれ少なかれあります。子どもの成長の記録だと思うとなかなか捨てにくいのですが、家の中で場所をとるのも悩ましいものです。

「最近はリメイクがちょっとしたブームになっており、廃材を使って工作をすることを、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の教育の一環としている学校もみられます」

そう話すのは、家庭ごみや環境教育をテーマに研究している、京都大学地球環境学堂准教授の浅利美鈴さんです。

ごみが再びごみに

環境省の2021年度の調査によると、家庭ごみに含まれる容器包装の廃棄物は、容積比で66.0%。そのうちプラスチック類は50.4%を占めており、パック、カップ、弁当容器や、商品の包装袋が多くみられました。飲料用ペットボトルは、ごみ全体の6.0%でした。

家庭ごみの中に、工作に使えそうな材料がたくさんあることがわかります。

提供写真
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しかし、こうしたごみの中には、そのままリユースやリサイクルできるものとそうでないものが混在しています。浅利さんはこう話します。

「廃材工作は、目にみえてわかりやすく、取り組みやすい環境教育の一つです。おもしろい取り組みであることは評価しつつも、工作を楽しんだ後に再びごみにならないかという心配もあります」

「特にペットボトルは、ペットボトルとしてそのままリサイクルしたほうが、環境のためにはよいという側面もあります」

ペットボトルは、色を塗ったり他の素材をくっつけたりすると、リサイクルできなくなることがある Akiko Kobayashi / OTEMOTO
ペットボトルは、色を塗ったり他の素材をくっつけたりすると、リサイクルできなくなることがある Akiko Kobayashi / OTEMOTO

PETボトルリサイクル推進協議会によると、リサイクルできるペットボトルには「PET」という識別表示マークがついています。ラベルやキャップはそれぞれ異なる樹脂でできていることが多く、「プラ」と表示されています。ラベルやキャップをはずしてからペットボトルをリサイクルに回すよう求めている自治体がほとんどです。

「異素材が混入した状態でペットボトルをリサイクルに回すと、再生プラスチックの純度が下がってしまいます」と浅利さん。つまり、工作でペットボトルに色を塗ったり、他の素材をくっつけたりすると、そのままではリサイクルに回せなくなってしまうというのです。

ペットボトルは手に入りやすく、学校としても家庭から持ってくるよう呼びかけやすい材料のひとつですが、リサイクルのルートが確立しているという点では、工作をしないほうがリサイクルできる素材でもあるのです。

持ち物はケチャップの空き容器

一方、学校からリサイクル工作のために持ってくるよう言われる材料の中には、家庭によっては「わざわざ買って準備しなければならない」ものもあります。

「新聞を購読していないので、わざわざメルカリで新聞紙を買った」(小学2年生の母親)

「牛乳パックを持っていかなければならないことを前日の夜に知り、慌てて牛乳を買って家族全員でなんとか飲み切った」(小学4年生の父親)

「ケチャップの空き容器やラップの芯は、図工の時間に使う1カ月前に言われたとしても、使い切るタイミングが難しい」(小学1年生の母親)

など、保護者からは廃材を集めるための苦労話が聞こえてきます。

「自宅にないものを工作のためにあえて買うとなると、もともとのサスティナブルな取り組みの趣旨に反してしまうこともあります。工作のためだけでなく、工作の前と後にも資源を循環について考えることが、本当の意味で環境への負荷を下げることにつながります」

浅利さんはそう説明します。

ごみを価値あるものに

学校が一律に材料を指定するのであれば難しいですが、夏休みの自由研究は、どんな材料を使ってどんなものをつくるかを、子どもが主体的に考えるきっかけになります。

浅利さんは「どの材料なら『アップサイクル』につながるか、子どもと一緒に考えてみてはどうでしょうか」と提案します。

「アップサイクル」とは、捨てられるはずだった廃棄物に、デザインやアイデアによって新たな価値をもたせる取り組みのこと。

浅利さんが、産学公が連携した「京都超SDGsコンソーシアム」で実践しているのは、古着をリメイクして再び着られるようにしたり、卵パック、納豆パック、乳飲料の容器などのプラスチックを活用してミニ水力発電機をつくるワークショップだったり、「タンスの肥やし」になっている着物をバッグや小物につくり変えたりする取り組みです。

京都超SDGsコンソーシアムでのファッションショーの様子 提供写真
京都超SDGsコンソーシアムでのファッションショーの様子 提供写真

「アップサイクルとは、価値がないとされるものに価値をつくっていくことです。身の回りにあるもので、工夫すれば価値を上げられるものはなんだろう、と『お宝さがし』をしたり、この素材はこんなふうに使えるのでは、とアイデアを膨らませながら選んだりすることにも、おもしろさがあるのではないでしょうか」

ほかにも、子どもと一緒に家庭で出すごみの量を測ってみる、買い物のときにプラスチック製の容器包装などを減らす視点で商品を選んでみる、など「まずは家庭のごみの量を認識することからはじめてみては」と浅利さん。

「子どもたちの工作は、ものづくりの第一歩です。すぐに捨ててしまわないか、よりごみを増やさないかという視点でものづくりに取り組むことが、循環型社会を目指すためのレッスンになります」

著者:
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。

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