臨床心理士・公認心理師のyukoです。出産年齢の高齢化や家族形態の変化により、介護と育児の両方が一時期に集中する「ダブルケア」が年々増えてきています。「もしかしたら?」と想定はしていても、実際問題が起きてから対処せざるをえない人が多く、やむなき離職を迫られる方も。事前にしておきたい準備について考えてみます。
「ダブルケア」の負担、6割以上は女性。辛さはどこにある?
「人生100年時代」といわれるほどの超高齢化社会。一方で、結婚や出産をする年齢も幅が広がってきましたよね。
そんな社会の中で、課題となるのが育児と介護を同時期に担う「ダブルケア」。
少子化により兄弟姉妹が少なかったり、核家族化により親戚兄弟が遠方に離れていたり、誰か一人に負担がかかりやすくなってきます。
介護と子育てによる時間の制約や体力の消耗だけでなく、ダブルケアの波紋はいろんな方面に広がっていくんです。
例えば……
「40代のAさん。第二子を妊娠中、実母が脳梗塞を発症し、右半身に麻痺が残り一人暮らしが難しくなり同居を開始。
週に数日はヘルパーさんが来てくれるものの、入浴や食事、夜間の排泄介助などが必要に。
育休明けに復帰する予定だったAさんは、3歳の長男と0歳の次男、85歳の母をケアするために辞職する。
毎日の介護と育児に追われるばかりでなく、社会との繋がりが薄くなってしまい、相談相手がおらず寂しさを感じている。
要求に応えるばかりの日々で、同世代で自由に働いているママへの羨ましさ、多忙で手伝ってくれない夫への不満を長男にぶつけてしまい、申し訳ない……」
このように、ダブルケアは体力的な辛さだけでなく、社会からの孤立感・子どもへの申し訳なさ・就労を諦める辛さなどが重なってきます。
できるうちに始めておく、事前準備と話し合いが大切なんです。
「ダブルケア」の前に準備しておきたい3つのこと
親・兄弟との話し合い
「まだまだ元気なので話す必要はない」「介護について面と向かって話しにくい」
面と向かって将来のネガティブな話をするのは、たしかに勇気がいるものです。
話ができる時期だからこそ、介護や看取りの話題をタブーとせずに現実的な話し合いをしておくのが大切。
現在の健康状態や、周りにいる同世代の話など、話しやすいところから話題にしていくとよいでしょう。
今の家から離れたくないと考える方は多いと思いますが、仮に介護が必要になったら、どこで生活していくかなど、場所を考えておく必要があります。
少しずつ話ができるようになっていけば、実家の整理方法やお金の問題などに触れていき、兄弟姉妹ともプランを共有しておけるとよいかと思います。
使える資源の確認
現時点では、まだ認知度が十分でないのがダブルケアの現実。
ですが、自治体によっては、ダブルケアサポーターの養成講座を開いて認知度を高めたり、ダブルケア相談窓口を設けているところもあるようです。
また、当事者同士が悩みや対策を相談し合えるダブルケアカフェは全国に広まってきています。
地域ごとに情報が異なるので、事前に調べておくと安心です。
また、会社の休暇取得制度や給付金についても情報を集めておけるとよいでしょう。
適用条件や取得可能な日数、申請方法を確認しておくのがおすすめです。
パートナーとの話し合い
何パターンか想定し、フローチャートのようにライフプランを組み立てておくのが役立ちます。
それでも想定外の出来事が起こってしまうときはありますが、話し合う時間そのものが心構えに。
また、片方が不在となったとき、家事や育児をまんべんなく行えるようにスキルを身に着けておくのも大切です。
どちらがワンオペになったとしても大丈夫なくらいにスキルが上がれば、日々の負担も自然と楽になっていきます。
サポーターに必要なのは心身の健康
ダブルケアの中で、どうしても手薄になりがちなのは、「サポーターのサポート」です。
1人で抱えこまずにケアしていくためには、事前準備と周囲との連携が重要になっていきます。
杞憂になったとしても、「備えあれば憂いなし」と考え、リスクヘッジしておくのがおすすめです。
▼参考資料
男女共同参画局 育児と介護のダブルケアの実体に関する調査報告書
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/wcare_research.html