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「実家には1泊まで」 「駅で会う」「決定事項しか話さない」 帰省でストレスをためないコツを聞いてみた

ライフスタイル

親や親戚のことが嫌いなわけじゃない。家族が健在で帰る場所があるのは恵まれているのかも。でも、なぜだか疲れてしまうんですーー。実家との関係についてOTEMOTOが実施したアンケートには、年末年始の帰省をめぐって複雑な心境を明かす声が多く寄せられました。

関西地方に住んでいるAさん(37歳、女性)には、離れて暮らす親との関係で、気をつけていることがあります。

距離を近くしすぎない
重要なことは頼まない
頼ってもいいが甘えない
Aさんがこのマイルールを考えたのは、出産直後に実家に帰ったときの出来事がきっかけでした。

ギャン泣きと怒号

新生児の世話は、両親にとっても一大事だったようでした。激しくギャン泣きする赤ちゃんを前に両親がパニックになり、ああすればいい!こうするのがいい! と怒号が飛び交いました。

母親からは、母乳育児を推奨する記事を印刷したものまで渡されました。Aさんが抱っこしても泣きやまないと「抱き方が悪い!」と赤ちゃんを奪われました。

「よかれと思ってやってくれているんだろうけど、キツイな...」

Aさんは1カ月ほど実家に滞在する予定でしたが、わずか2日で切り上げて自宅に戻りました。

「親はいつまでも私を子どもとみなし、『知識や経験の備わった一人の大人』として扱ってくれません。何もできないはずだから助けてやらなきゃという前提で接し、支配下に置こうとしてきます。それも純粋に善意のつもりなんです」

Adobe Stock /  坂本弘幸
Adobe Stock / 坂本弘幸

Aさんはこの出来事をきっかけに、子どもの頃に親から言われて嫌だったことを思い出すようになりました。

小学生のとき、母親が「うちの子は肥えてるから」と笑いながら親戚や近所の人に話しているのを見かけたこと。女の子っぽい服を選ぶと「ええ〜、かわいらしいな、どしたん?」と茶化され、着られなくなったこと。大学生のときにうまく化粧ができずにいたら「すっぴんはみっともない」と言われたこと。

母親からはチクチクした棘のある言葉を日常的にかけられてきました。父親は「女は事務職で結婚したら寿退社し、子ども産んでこそ一人前」といったいわゆる昭和の価値観で接してきました。

こうした言動はAさんが大人になってからも続きましたが、親と別に暮らすようになり、たまに会って食事や外出など楽しいことだけしているぶんには言われにくい、ということが次第にわかってきました。

「つまり、子どもとしてではなく友達感覚で付き合うといいのだとわかりました。家の中で密接に関係していると親子モードになりやすいので、物理的にも距離をとるようになりました」

父親を「接待」

帰省は気が重い。実家は居心地が悪い。気疲れするーー。

OTEMOTOが実施したアンケートには、実家との関係や年末年始の帰省についての複雑な心境が寄せられました。

多くの人があげていたのは、実家の親や義理の親、親戚との価値観のズレ。ふだん離れて暮らしているからこそ、久しぶりに話をするとズレが際立ってしまうようです。

「小学校の同級生など、はるか昔の知り合いの近況をひたすら聞かされるのがつらい。その時とはもうコミュニティが違うので...と思う」(20代女性)

「実家にいたころは当たり前だと思って我慢していたことが、世の中では当たり前ではなかったということが多く、ズレを感じて気疲れする。父親は『男はバカな生き物だから仕方ない』と生活を改めようとせず、父親の周りの男性も同様だったが、地元を出たらまったくそんなことはなかった」

「数年に一度、接待として父に会うことがある。仕事や生活に対する価値観がまったく異なり、否定的な反応をすると機嫌を損ねるため、とにかく相槌を打つことに専念している。会う前から気が重く、会った後は1週間くらい気力が湧かない」(20代女性)

いつまでも子ども扱い

恋愛や結婚、出産、育児などプライベートな近況に踏み込まれ、ズレた価値観を押し付けられることに抵抗があるという声も目立ちました。

「いつも婚活の進捗について聞かれるのがつらい。親が思う通りの報告がないと、長時間説教される」(30代女性)

「近況を根掘り葉掘り聞いてくる祖母に辟易している」(20代男性)

「帰省するたび、孫の学業成績にチェックを入れてくる義両親に脅えている。実の両親も以前は『結婚の気配がない息子』『2人目を産む気配がない娘夫婦』にやきもきして、隣のおばあちゃんまで口出ししてきた」(40代女性)

Adobe Stock / beeboys
Adobe Stock / beeboys

また、親から子ども扱いされるのが煩わしいという意見も寄せられました。

「いつまでも子ども扱いされ、心配される。もっと自分を信じてほしい」(30代女性)

「親族で唯一、女で大学に進学したので、都会で悪い人に会って詐欺に遭わないかとやたら心配される」(20代女性)

「父は私に実家の近くで結婚して子どもを産んでほしいといまだに考えていることが、会話の端々に透けて見える。それが私の幸せだと思い込んでいるのでとても疲れる。何度言っても私の考えや価値観を理解しない父にこれ以上傷つけられるのが嫌になってしまった。父にとって私の意見や考えはすべて子どもの反抗でしかなく、一人の人間として尊重されることがない」(30代女性)

「大学進学を機に隣県に住まいを変えたが、就職後は地元に戻る前提で話をされる。正直、地元に戻りたくないが、一人っ子のため親の介護が必要になったときに大丈夫かなと思い悩む」(20代女性)

こうした価値観のズレや介入は、なぜ起きてしまうのでしょう。世代や住んでいる地域が違うことだけでなく、普段の生活で目にするものや情報源が異なることが影響しているのではという意見がありました。

「親の基本的な情報源は内容の薄いバラエティ番組やワイドショーなので、パラレルワールドを生きているのかと思うくらい世間の認知が異なります」(30代女性)

「30代で子育て中の私はテレビを見ない生活だが、60〜70代の親世代はNHKやBSが大好き。母は父の身の回りのことを何でも世話して『男を立てる』ことを正義だと思っているので、子どもを連れて行くと悪い見本になってしまう。昭和みたいなドラマではなく、価値観をリバイスするものを放送してほしい」(30代女性)

駅で集合・解散

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が価値観のズレを可視化してしまった面もあります。

「感染者の多い東京から帰省すると周囲からやたらと警戒される」(30代女性)

「反ワクチンを主張していてげんなりします」

「家から出るのは決まった曜日、スーパーに行くのも週に何回と決めているようで、電車に乗るのも映画に行くのもやめたらしい。私たちも同じように毎日家に閉じこもって暮らしていると思っているようで、話していると別世界のよう」(30代女性)

半面、コロナによって帰省のしがらみがリセットされてラクになったという声もありました。

「コロナであまり会わなくて済むのでホッとしている。コロナが終わってからもこの調子で会わなければちょうどいいかもと考えている」(50代女性)

「コロナを機に祖父母の家に行くのをやめた。祖母に新幹線の駅まで来てもらって、現地集合・現地解散する」(20代女性)

贈り物で気遣いを示す

博報堂生活総合研究所の「生活定点」調査によると、2022年の調査から1年以内に帰省をしたという人は24.8%。2020年の前回調査からは約5ポイント下がったものの、1992年から30年間ではほぼ横ばいで、帰省という慣行そのものに大きな変化はないようです。

出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査
出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査

ただ、SNSやテレビ電話の浸透によって、実家とのコミュニケーションの方法は多様化しました。日ごろから連絡を密にすることで、帰省の回数を減らしたという人もいました。

「LINEグループのアルバムを活用して、初孫の写真を実家、義実家に同時にシェアしている」(20代女性)

「テレビ電話を頻繁にしていて『〇時に××が終わるからテレビ電話しよう』『〇時に寝るからテレビ電話は△時まで』など生活リズムを何度も伝えておく」(30代女性)

「季節の挨拶や贈り物をきちんとして、こちらはちゃんと気遣っていますということを物品で示しつつも、連絡や直接会うことはできる限り避ける」(30代女性)

「実家にお歳暮やお中元を贈り、そのときに電話で挨拶する。まったく連絡しないと向こうの都合で連絡がくるので」(30代女性)

Adobe Stock / 藤井貴彦
Adobe Stock / 藤井貴彦

妻実家が夫実家に遠慮

帰省にこだわらなくても実家とのコミュニケーションはできると割り切る人もいれば、気が重くても帰省はしなければいけないものだという義務感に苦しむ人もいます。

「夫婦それぞれの実家に戻り、配偶者の実家には訪問しないまま10年以上になるが、私の実家が夫の実家を慮って非難する。夫の実家もそれを快適に思っているのだと説明してもわかってもらえない。嫁が夫の実家に挨拶に行かないことは常識の範囲外のようです。夫が妻の実家に挨拶に来ないことは問題ないらしいのに」(40代女性)

「長期間帰省しろと頻繁に言われるが、帰省すると母親からあれこれ小言を聞かされるのでとても居心地が悪い。実家を出て数年かけてようやく生まれて初めて自己肯定感を獲得したばかりなのに、実家に戻ると一気にこき下ろされ、母親はむしろ私のためにしてやっているという意識でいるためどうにもならない。家族といえど時代の価値観や個人の価値観は異なるため適度な距離感が必要。近すぎると嫌な面ばかりが目立つし、家族だからと無理やり親密な距離感を保ち続けるのもストレス」(20代女性)

「母が亡くなり、昔からあまり会話のなかった父とどう話せばいいかわからず、実家が遠くなった。帰る場所ではなくなった感じ。姉や妹は気配りや気遣いができるのに自分だけできていない気がしていたたまれなくなることがある。家族といるのは大好きなのに、家族といると自分が嫌いになる」(40代女性)

コミュニケーションのストレスを減らす工夫としては「聞き流す」や「あえて情報共有しない」など、スルーする覚悟やスキルが必要だという意見が集まりました。相手の気持ちに配慮しながらバランスをとる方法でもあります。

「伝える情報をコントロールする。例えば夫が仕事を辞めたことなど私の親が知る必要もなく、ただ心配させるだけなので伏せる」(40代女性)

「こちらの情報の流出を最低限にし、すべてをあきらめて聞き流す。何かを発言するときはまず相手の言葉を繰り返し、敵意がないことを示してから自分の言葉につなげる」

「よほどのことがない限り何かの進捗は話さない。決定事項だけを話す」(20代女性)

「子どもが帰省した際にしてはいけない会話の例を親世代に知っておいてほしい。わかっていても無意識に話す親世代が多いので難しいとは思うけれど…」(30代女性)

帰省するほうも迎えるほうもお互いに快適に過ごすため、具体的なルールを決めている人もいました。

「夫婦それぞれがそれぞれの実家の世話をする。夫の地元は「嫁は婚家に尽くすべし」的な考えがあるため関わりを減らしている」(40代女性)

「2泊以上は疲れてしまうので、1泊までと決めている。帰省の連絡は直前の3日前くらいにして、あまり大袈裟な準備ができないようにしている」(20代女性)

「泊まりは先方の負担になると考えて、ホテルを取るようになった」(40代女性)

「泊まるのを夫1人で妻は日帰りにするなど負担を減らしている」(40代男性)

「親はまだ現役で仕事をしているので、帰省したら実家で暮らしていたとき以上に家事をしている」(女性)

OTEMOTOでは、帰省や実家との快適な付き合い方について引き続き考えていきます。親世代の意見や専門家のアドバイスを紹介する記事を後日公開する予定です。

(アンケートの回答は一部編集しています。回答者の属性は記入があった方のみ記載しています)

著者:
小林明子
OTEMOTO創刊編集長 / 元BuzzFeed Japan編集長。新聞、週刊誌の記者を経て、BuzzFeedでダイバーシティやサステナビリティの特集を実施。社会課題とビジネスの接点に関心をもち、2022年4月ハリズリー入社。子育て、教育、ジェンダーを主に取材。

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