一級建築士が絶対に選ばない! 「1人暮らしの賃貸物件」基本のき
最後は、誰もが気になる「音」の問題について。音漏れする部屋の基本的な見分け方をお伝えします。
キーとなるのは遮音(音を遮る)、吸音(音を吸収する)という防音性が高いかどうか。隙間の有無などを指す気密性、壁や床材の密度、防音材が使われているかなどで変わってきます。
窓やドア、壁などに隙間がなく(=気密性が高い)、壁や床そのものの密度が高いと、話し声やテレビなど空気によって伝わる音は防ぐことができます。ですが、人の足音や椅子を引く音など床や壁を振動させて伝わる音に対しては、壁の厚みくらいで防ぎにくいんです。これはもう致し方ないとご理解をしていただいて話を進めますね。
まず、賃貸向け集合住宅の建物構造はおもに、木造、鉄骨造、RC造(鉄筋コンクリート造)の3種類。コンクリートは遮音性が高く、RC造は柱梁床がRC、壁もRCで造られていることがほとんど。つまり、RC造を選べば音漏れしにくい可能性が高い、ということですね。ただ、なかには、木造や鉄骨造と同じように壁がRCで仕切られていないRC造の物件もあるので絶対とは言えず、注意が必要です。
木造と鉄骨造の比較ですが、違いがでやすいのは床です。鉄骨造はコンクリートスラブで造られている物件もあります。その場合は木造よりも防音性が高いと言えます。
簡単に見分ける方法もあります。まずやっていただきたいのが、何か所も壁と床を叩くこと。密度の高い壁や床ですと、叩いてみると音が振動せず詰まった感じで短く終わります。逆に中が空洞でスカスカだったりすると、軽くて音が少し響く感じがするんですよ。文字にするとイマイチピンとこないかもしれませんが、実際に何か所か叩くと、その違いがはっきりとわかると思います。
壁を叩くのに加えてやっていただきたいことが、その建物の住人の方々が在宅していることが多い時間帯に内見しに行くことです。部屋に入ったら生活音が聞こえるか、大きな音を立てる人はいないかじっと耳を澄ませましょう。
また、平日と休日とでは、周囲の環境に変化がある場合もありますから、音が気になる方は、日にちや時間帯を変えて複数回の内見をしてみましょう。また、不動産屋さんに騒音についての苦情の有無も確認したほうがいいですね。
住んでみてからでは遅いのです。内見や事前調査に時間を割いて、防音に対する仕上げ方を必ず確認しましょう。
以上、選んではいけない「1人暮らしの間取り、物件」と注意点をお伝えしました。みなさんが満足のいくひとり暮らしを始められますように。入念な準備が功を奏しますよ。
教えてくれた人
リクドウさん 一級建築士。設計事務所の管理建築士。普段の仕事は、公共、商業施設の設計がメイン。住まいに対するモットーは「自分らしくいられる、憩いの空間であるべき」。
©Lesia_G/Getty Images
※2022年3月13日配信。