「もっとうまく伝えられれば…」「どう答えればよかったの?」同じ場面でも、きちんと伝わる話し方で好印象を与える人とうまく伝えられない人がいる。その差って何だろう? 仕事のプレゼンや日常のコミュニケーションで使える、ちょっとした話し方のコツを身につければ、もう後悔しない!
仕事で経験しがちな、3個の具体的な後悔エピソードから、伝わる話し方の秘訣を学んでいこう。教えてくれたのは、元NHKアナウンサーの合田敏行さんと、プレゼンでの話し方を提案して話題の本『1分で話せ』の著者・伊藤羊一さんです。
後悔1 上司への進捗報告が苦手です。いつも私だけ「で? それは? なの?」などと突っ込まれてしまいます。
問題点:要点が一向に伝わらない。
解決法:何はなくとも真っ先に結論を。自信を持って話すのも大切。
突っ込まれるのは、相手の知りたいことに答えていないからでは?
「この人は、自分が経験した順番、あるいは考えた順番どおりに、だらだらと話す傾向があるのかもしれません。それでは核心になかなかたどり着かない。まず最初に、要点を短く話すことです。例えば、『前回の提案でいけそうです』『先方から再提案を求められました』など、上司が知りたいであろう、現時点での結論を先に言います」(合田さん)
ポイントは、相手の気持ちを汲むことと、短く伝えること。これは話し方の基礎テクニックといえそう。
また、苦手意識そのものに原因がある可能性も。態度がおどおどしていると、それだけで相手をイラッとさせてしまう。「自信なさそうに話す人ほど突っ込まれやすい。自信を持って、明確に『~です!』と言い切ることを心がけて」(伊藤さん)
後悔2 会議で「あなたはどう思う?」と急に聞かれて、頭が真っ白に。とっさに意見を言うことができなかった。
問題点:正しいことを言おうとする。
解決法:完璧でなくてもいいので、直感で答えてみる!
「ここでは、答えが正しいかどうかは重要ではないんです。あなたの意思表示をきっかけに議論が活発になればいいのだから、わからなくても直感で『○○だと思います』と答えてしまいましょう」と伊藤さん。
とはいえ、言いっ放しでは無責任。なぜそう思うのか、理由を聞かれる可能性もあるだろう。
「答えたあとで、多少こじつけでもいいので理由を3つ挙げるようにします。1つだけだと否定されやすいので。日頃から、何かを選ぶときなどに、選んだ理由を3つ考える練習をしてみてください」(伊藤さん)
同じく議論のきっかけを作る意図で、質問をするという方法も。
「とっさに思いつかなければ『申し訳ありません。私の意見はまとまっていません』と正直に言ったうえで、議論を進めるのに役立つ質問をしてみては。中身のない話で時間を使うより有意義です」(合田さん)
後悔3 後輩に仕事を振ったけれど、全然進んでいなかった! それどころか頼んだこと自体がきちんと伝わっていなかった。私の話し方のせい?
問題点:相手に委ねる言い方は無責任。
解決法:「やってくれますか」ではなく「やってください」と言おう。
自分は間違いなく伝えた覚えがあるのだから、悪いのは後輩のほうだと思ってしまう。でも、本当に明確に指示できていただろうか?
「ちゃんと伝わっていないのだとしたら、100%自分の伝え方が悪かったと思うべき。コミュニケーションは受け手が解釈するものなのだから、どんな場合にも、責任を負うのは伝える側なのです」(伊藤さん)
人に何かを頼むときなどは、ついつい「やってくれませんか?」などといった、日本人特有の婉曲表現で要望を伝えがち。
「そうした婉曲表現は、外部の人にお願いするときには効果を発揮しますが、社内の部下や後輩に対して使うと思わぬ誤解を生むことがあります。この場合、部下が、やってもやらなくてもいいのだろうと受け流してしまった可能性も。指示をするときには『○日までに、~してください』のように、命令口調ではなく、毅然と丁寧に話すことが大切です」(合田さん)
合田敏行さん NHK放送研修センター・日本語センター部長。NHKにアナウンサーとして入局、長崎放送局長などを経て現職。著書に『敬語の使い方が面白いほど身につく本』(あさ出版)が。
伊藤羊一さん ヤフー コーポレートエバンジェリスト、Yahoo!アカデミア学長として、プレゼンテーションの指導をはじめ、次世代リーダーの育成を行う。「話すことは仕事の基本です」
※『anan』2019年2月13日号より。イラスト・小迎裕美子 取材、文・黒澤 彩
(by anan編集部)