報道からバラエティ、YouTubeまで、新たな論客として引っぱりだこのイェール大学助教授・成田悠輔さん。今回は、子どもの英語教育や海外脱出について、VERY読者の疑問・悩みをバッサリ斬っていただきました!
※掲載中の情報はVERY2022年12月号掲載時のものです。
Q. 日本は本当に 終わってるんでしょうか?
海外に住む成田さんから見て、政治経済・教育などの面で日本は本当に終わってると思いますか? 子どもには日本脱出を最優先に考えて道を選ばせるべきなのでしょうか?(34歳/4歳・2歳男の子)
A. 実はそんなに 終わってないと思ってます。
日本もふつうの衰弱先進国になったというくらいの話だと思います。「日本が終わっている」と言うとき、バブル期の日本や、アメリカや中国、勢いのあるシンガポールやドバイと比べてるんだと思います。
でも、たとえばイタリアやイギリスのようなヨーロッパの先進国を見れば日本と似たり寄ったりで、かつては栄光を極めたけど最近は新しい産業も生み出せずどうしようもない、若者の失業率も高く、イタリアでは極右政権が誕生、イギリスも混乱の末EUから離脱している。そう考えると、ほとんどの先進国は終わっています。たぶんだんだん貧しくなって辛いっちゃ辛いけど、生活が苦しくなる辛さであって、生存が脅かされたり地の底まで落ちていくような終わりではないかなと。
唯一の懸念は地震ですかね。首都直下型地震がここ数十年の間に高確率で来ると言われていて、東京圏の経済活動が数カ月単位で終わると数百兆単位でダメージが来る可能性があります。コロナの比じゃない打撃が来るかもしれない。それが引き金で生活が終わってしまう人が大量に出て、暴動が起きたり、治安や衛生という今の日本人がごく普通に享受できているものが壊れていくというシナリオがなくはない。
ただ、その点を除くと、老いていく先進国が若くて勢いのあるアジアやアフリカ諸国に追い抜かれていくという、欧米で起きていることが日本にも起きているだけなのかなと思います。
Q. 英語教育、どのくらい真剣に やるべきですか?
これからはとにかく英語は必須スキルと言われますが、英語に全振りする勇気もなく、我が子にどの程度の環境を用意すればいいかわかりません。(32歳/2歳女の子)
A. 世界でガチで闘うか、日本でゆるく 生きるかの2択。どちらを選ぶか はっきりさせるのが大事かなぁと。
英語教育や海外留学に関しては2択かなと思ってます。一つは、ちゃんと英語ができて、いざとなれば日本の外に出て稼げるグローバル人材(笑)を目指す生き方。もう一つは、日本ってなんだかんだ安全で綺麗で、お風呂やサウナでも入って公園でピクニックか缶チューハイとコンビニ飯で家族で乾杯すればそこそこ整える社会じゃないですか。だから、日本の中でゆるゆると、豊かではないけど楽しい生活をするおじさんおばさんとして生きていくこと。その両方をうまく達成している人ってほとんどいない印象なんですよね。
経済的に余裕のある意識高めの家庭は、英語をやって留学して帰国子女にという選択肢をとりがちで、上手くいくと私が教えているイェール大学や世界のトップ大卒になったりする。ただ、その人たちがその後大活躍しているかというとそうでもないんですよね。
本当に世界のトップで闘うとなると、起業でも研究でもサラリーマンでもスポーツ選手でもそれはそれは厳しい世界で、宝くじを引くみたいなものです。それ以前に、そもそも有名海外大を出てもビザの関係で卒業後は日本に帰国する人がほとんどです。学歴は立派だけど、専門領域で本当にグローバルな競争力があるというわけでもない。その割に海外経験が長いので日本社会ではちょっと浮く。世界でも日本でも中途半端になる人が多い印象なんですよね。
要は、ガチで世界で生きるか、ゆるく日本の中で生きていくか、どちらかはっきりしていた方がいいかもという気がします。それが英語教育や留学の話とも関係していて、英語をやるのは日本の外で活躍するためなのか、それとも日本人の中では相対的にできますということなのか。後者だとするとあまり意味がないのかなと。
もし本気でやるなら、日本にいようと海外にいようと、インプットもアウトプットもすべて英語でやらなきゃいけない英語没入環境を作ること。やるなら徹底的にやる、そうじゃないならあまり考えてもしょうがないんじゃないでしょうか。いざとなれば外国で生存できる英語くらいすぐに身につきますし。私も24歳くらいまでは英語で話しかけられただけでフリーズする感じでしたが(笑)、ギリギリどうにかなってます。
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【Proflie】 経済学者・データ科学者・ イェール大学助教授・半熟仮想(株)代表。 成田悠輔さん
不登校気味の麻布中学高校を経て、東京大学経済学部卒業後(最優秀卒業論文賞受賞)、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。専門は、データ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと公共政策(特に教育)の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、ソニー、ヤフー、ZOZOなど多くの企業や自治体と共同研究・事業を行う。現在はアメリカと日本を行き来する生活を送り、本業の傍ら、報道・討論・バラエティ・お笑いなど多様なテレビ・YouTube番組でも活躍中。