長引くコロナ禍の影響でライフスタイルも一変。リモートワークや家飲みなどで自宅にいる時間が長くなったこともあり、「家を買いたい」と考える女性が急増しています。人生最大のお高い買い物だからこそ事前の準備が必要不可欠! そこで『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著書であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、後悔も失敗もしないような「令和の持ち家の選び方」をお聞きしました。まずは、物件探しを始める前に準備しておくべきことや心構えについて。
その1. 「家を買うのは結婚してから」という思い込みは捨てる
ひと昔前よりは変わってきたものの、日本では今なお男性が女性を経済的にサポートし、女性が家庭を守るという価値観が浸透しています。家に関しても「結婚後に男性が買うもの」という意識や、女性が家を買うことに対して周囲からの目線が気になるという意見も根強くあるのが現状です。
ですが私は女性にこそ家を買ってほしいと思っています。なぜなら持ち家があることで選択肢が増え、自分で人生を選んでいけるからです。女性のお客様に「男性は裏切るかもしれないけれど、家は裏切りません」とお話することがあります。
その意味は、常に住む場所が確保できると安心感が得られ、老後の心配も減る。また同棲、結婚、出産などで家族が増えて手狭になったときは、貸し出して賃料収入を得ることができ、万が一、離婚などのアクシデントがあっても自分の戻る場所になってくれる、ということです。
人生は何が起こるか分かりません。想定していなかったことが起きた際に、家は自分をサポートしてくれる心強い存在になるのです。ですから「家を買うのは結婚してから」という思い込みは捨て、自分の幸せのために買うべきかどうか――。ぜひ自分軸で考えてみてほしいですね。
その2. 買う目的を明確にする
お客様に「家を買いたい理由はなんですか?」と聞くと、「毎月の家賃がもったいないから」という答えが返ってくることが一番多いです。ですが、そういった曖昧な理由だけで決めてしまってはいけません。長期的な視点から、「何のために家を買うのか」という目的をはっきりさせることが大切です。
たとえば、シングルの場合。長期的に考えることが難しいなら、何年住むか考えてみましょう。海外移住やUターンなどで他の場所に移り住む可能性があり、数年しか住まないのであれば、諸経費もかかるため買うメリットはあまりありません。
ただし、「20代のうちに住もうと決めていた理想の家がある。それは買わないと手に入らない」「早めに資産形成して将来は貸し出し、賃料収入を得たい」など、具体的な目的があるのであれば短期間しか住まない予定の人でも、その目的に合う物件を買ったほうがいいと思います。
カップルや夫婦なら、じっくり話し合う時間を持つことから始めてください。35年ローンで高額な家を買うという大きな決断をすることで、将来について現実的に考えるきっかけとなるはずです。結婚するのか、子どもは何人ほしいのか、お子さんが小さい場合は、小学校に上がる段階で教育面から転居する可能性があるかなど。それぞれの理想の暮らしや価値観をすり合わせ、本当に買うべきかどうか決めたうえで探し始めるのがベストです。
その3. 住みたい街を探す
家選びで重要となるポイントは物件だけではありません。「どんな街に住みたいか」という視点を持つことが大切です。お客様の中には漠然と「〇〇区」に住みたい、「〇〇駅」がいいと言う方もいますが、実際にその街を歩いて決めてほしいです。
駅を降りたときに落ち着いた雰囲気であること。街灯が多く、夜道を安全に歩けること。活気のある商店街があること。おいしいごはん屋さんがたくさんあることなど、自分の「住みたい街の条件」が満たされているかチェックしましょう。また、インターネットで犯罪率データを調べておくことも大切です。
その他、実家に帰りやすい場所かどうか、仕事を重視する人なら勤務先へのアクセスのよさ、子どもを産む予定のある方や子育て中の方なら、学区の教育レベルや保育園事情、行政サービスなども確認しておく必要があります。
その4. どんな暮らしがしたいのかイメージする
住みたい街が決まったら、次に家の中のことを考えてみましょう。どんな家に住みたいのか、そこでどんな暮らしがしたいのかを具体的に思い描くことが大切です。主なチェックポイントは6つ。
・間取りと広さ
・外観の美しさ
・リビングとキッチン
・バルコニー
・仕事と趣味
・寝室
夫婦2人であってもそれぞれリモートワークが多いので2LDKは必須とか、将来子どもが生まれたときのことを考えて広さを確保したい、趣味のピアノを置く部屋を作りたい、植物を育てたいのでバルコニーは必須など。
それらすべて叶えることは難しいので、チェックポイントの中で絶対に譲れないものを1つだけ決めておくとよいでしょう。迷ったときは、「起きている間、過ごす時間が多い場所」を優先してください。
その5. 予算を洗い出す
自分にはどれくらいの価格の家が買えるのか、予算を洗い出してみましょう。おすすめは、銀行の住宅ローンの仮審査を出すこと。最近ではWEB上でも簡単に申し込むことができ、年収や保有資産などを入力すると、いくらくらいの借入ができるか数日で回答を受け取ることができます。
まだ準備段階で仮審査を出すほどではないという方は、住宅ローンの審査基準を知っておくと心構えができると思います。主に人物面と物件面の2つの視点から審査されます。
【人物面】
・住宅ローンに申し込むときの年齢(20歳~70歳としている場合が多い)
・住宅ローンを支払い終えるときの年齢(75歳~80歳までとしている場合が多い)
・勤務先の規模
・雇用形態
・勤続年数
・年収
・預金などの資産状況
・借り入れ状況(クレジットカード、消費者金融でのキャッシング、自動車ローン、奨学金の返済状況などについて信用情報登録機関を通して審査する)
・社会保険の加入状況(退職後の返済能力確認のために行われる)
・健康状態(健康診断結果の提出が必要になることもある)
【物件面】
・家の使い方(住宅ローン=本人の居住用住宅であることが必要)
・建築基準法(現在の建築基準法に適しているか判断する)
・面積(狭すぎる家だと「投資用では?」と疑われる可能性もある)
・経過年数(築年数)
・土地の権利(所有権か借地かなどを審査する)
・価格(販売されている価格が相場と比べて妥当か審査する)
以上、物件を探し始める前に準備しておくことや心構えを教えてもらいました。「フラッと入った新築モデルルームで、気に入って買ってしまうという人もじつは多い。無計画な買い方は絶対にNGです」と石岡さん。高いお買い物だからこそ慎重に。「家は自分を支えてくれる生涯のパートナー」という視点で、しっかり準備して買いたいですね。