ダイエットを継続しやすくするためには、たんぱく質の摂取量を増やすのが効果的です。しかし東京医療保健大学教授の御堂直樹さんによると、ただやみくもに摂取量を増やせばいいというわけではなく、“摂り方”がポイントになるのだそう。そこで今回は「ダイエットに効果的なたんぱく質の摂り方」について、お話を伺いました。
教えてくれたのは……御堂直樹(みどうなおき)さん
東京医療保健大学教授。1965年生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業。東北大学博士 (農学)、CSCS(アメリカに本部を置く国際的な教育団体であるNSCAが認定するアスリート指導に特化した資格)。専門分野は、食品学、食品加工学、食品機能学。競技として、アメリカンフットボール、ボディビルディングを経験。ボディビルディングでは、2002年日本社会人大会優勝した経歴をもつ。
ダイエットの継続は「たんぱく質の摂取量」がポイント
前回の記事では、ダイエットを継続しやすくするためには「たんぱく質の摂取量を増やすことがポイントになる」と、ご紹介しました。
たんぱく質の摂取量を増やすと、食事制限によるボディラインの崩れを小さくする、空腹感を弱める、体脂肪として蓄積されにくいといった3つのメリットが得られるのです。
まずは、1日にどのくらいのたんぱく質を摂るとよいのかを把握してみましょう!
1日にどのくらいの「たんぱく質」を摂るべき?
御堂さん「食事制限でエネルギー摂取量を減らした時のたんぱく質は、1日あたり1.2~1.6g×体重(kg)を摂るのが理想的です。この数値は、過去の複数の研究結果から導かれたもので、ダイエット時の筋肉量の減少をある程度抑制できるとされています(1)。
国民健康・栄養調査(令和元年)によると、20歳以上の女性のたんぱく質摂取量の平均値は、1日あたり66.4gでした(2)。これを体重で換算すると、約1.2 g/kg体重/日となり、平均的な食事を摂っている人であれば、目標の最小値を満たしていることになります。
目標の最大値の1.6g×体重(kg)/日は、体重で換算すると1日あたり85.8gのたんぱく質になります。これは、通常の食事に加えて約20gのたんぱく質を追加すれば達成できる量です。
そのため、1.2~1.6g/kgという量は、普段食べている量よりもやや多めのたんぱく質を摂れば達成できる現実的な量だと考えられます。」
1日に摂取したいたんぱく質量がわかったところで、ゆっくり食事をとりやすい夕食にまとめて食べるようにしよう! と思う方もいるかもしれませんが、じつはそれは不正解。
御堂さんによると、摂取量を増やそうとして、「一食でまとめてたんぱく質を摂る」という方法は効果的ではないのだそうです。
では、どのように摂取していくのがダイエットに効果的なのでしょうか?
朝・昼・夕の食事で、バランスよく「たんぱく質」を摂取するのがベスト
御堂さん「たんぱく質は、朝・昼・夕の食事で均等に摂ることがダイエットに効果的だと考えられます。その理由は、下記の2つです。」
・筋たんぱく質の合成を指標に調べた研究(3、4)から、一度で効率的に体内に吸収できるたんぱく質の量は20~30g程度(※体重によります)と言われているため。
・たんぱく質はほかの栄養素に比べて満腹感を高める効果が高いことから(5)、食間の空腹感を和らげる効果があるため。
たとえば朝食なら、トーストを食べるときには、そのままではなくチーズやツナをプラスする、おにぎりなら具なしではなく鮭入りにしてみるなど、できそうなことから工夫するだけでも、朝食時のたんぱく質の摂取量を増やせるかもしれませんね。
しかし食材や調理法のことを考えながら、3回の食事でたんぱく質を摂るのは、結構大変だと感じる方も多いと思います。
「たんぱく質」を手軽に摂取できる食品も上手に取り入れよう
御堂さん「そんなときに便利なのが、サプリメントのプロテインです。1日のたんぱく質の必要量を満たすには、食間に摂取するほうがよい場合もあるので、サプリメントでの摂取が効率的だと考えられます。プロテインには炭水化物を含むものもあるので、ダイエット時にはできる限り炭水化物が少なく、たんぱく質含量の多いものを選ぶとよいでしょう。
最近では、たんぱく質を強化した多くの加工食品も販売されているので、そういった食品を利用してもよいと思います。その際は栄養表示を確認し、エネルギー摂取量を増やさないように注意することも意識しましょう。
とはいえ、肉類、魚介類などの食品には、代謝を助ける栄養素や健康に寄与する成分も含まれています。理想としては、精製されたプロテインではなく、このような通常の食品を食べたほうがよいと考えています。」
ダイエットの成功のコツは、“たんぱく質の摂り方”にあることがわかりました。3回の食事でバランスよく摂りながら、サプリメントや加工食品を上手に取り入れられるといいですね!
参考文献:
(1) Leidy HJ et al., Am J Clin Nutr, 101, 1320S-1329S, 2015.
(2) 厚生労働省, 国民健康・栄養調査(令和元年)
(3) Moore DR et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 70, 57-62, 2015.
(4) Mamerow MM et al., J Nutr, 144, 876-880, 2014.
(5) Abete I et al., Nutrition Reviews, 68, 214-231, 2010.